死後認知の実情と相続、不貞慰謝料との関係

2019-05-15

1 死後認知請求の実情

死後認知請求訴訟をした場合、現在ではDNA鑑定が最重要視されます。

 

その際、亡くなった方のDNAが入手できればいいのですが、通常は手に入れることはできません。

 

そうすると、亡くなった方と確実に血縁関係がある方との間でDNA鑑定をするしかありません。

 

ここで、多くの場合は問題が生じます。

というのは、死後認知請求をするケースは、いわゆる不倫相手の子のケースが多く、他方でDNA鑑定に協力を求めたい相手方は、正妻の子であるケースが多いのです。

 

そうすると、正妻の子の心情としては、「お父さんに隠し子がいたなんて信じられない。DNA鑑定なんか協力したくない。」となるケースがほとんどです。

奥様がご存命の場合は、なおいっそう愛人の子の存在を否定する方向になります。

 

そうなると、民事(家事)裁判では、強制的にDNAを採取する手続きはないので、DNA鑑定ができない場合が出てきます。

 

もちろん、死後認知は、DNA鑑定のみで決まるものではなく、血液型や容姿が似ているか、養育費の振り込みの有無、自分の子であると認めるやりとりの有無、当事者の証言などを総合して決められるため、DNA鑑定なしで死後認知が認められる場合もあります(実際、そういう判決をもらったこともあります)。

 

なお、亡くなった方の髪の毛がありますとおっしゃる方もいるのですが、そもそも、その髪の毛が亡くなった方のものであると証明できないうえ、髪の毛はシャンプーやコンディショナーなどの化学薬品、ドライヤーの熱などで変質していることが多く、DNA鑑定の精度が落ちます。
また、へその緒から鑑定できないかというご質問をいただくこともありますが、これも正妻側の協力がないと入手できないうえに、鑑定精度は保存状態によってまちまちで、確実な方法とはいえません。

さらに、遺骨からDNA鑑定ができ仲というご相談もありますが、日本で火葬された場合、高温で骨のDNAが破損しており鑑定できないの通常です。

 

2 死後認知と相続に関する実務上の関係

ところで、仮に死後認知が認められると、遺産分割請求またはそれに代わる代償金請求という話になります。

 

理論的には、死後認知が初めて相続という問題が出てきますが、実際には死後認知訴訟を申立てると、相手方から死後認知請求と絡めて相続についての連絡があることが多いです。

 

というのは、上記のように、DNA鑑定ができない場合でも、その他の証拠で死後認知が認められる可能性があるため、相手方としては、DNA鑑定を拒否したにも関わらす死後認知が認められて相続争いになるより、DNA鑑定を交渉材料に相続額を少なくするという交渉をしたいという心理が働くからです。

 

他方で、死後認知を請求する側も、DNA鑑定なしでは、死後認知が認められる可能性が低くなるので、多少相続で譲歩してもDNA鑑定に協力してもらって、確実に死後認知を認めて欲しいという心理があります。

 

ですから、死後認知訴訟を進めつつ、並行して相続の交渉をすることが多くなります。

 

では、どの程度譲歩するのかというと、DNA鑑定なしで死後認知が認められるかどうかの見通し次第となります。
つまり、既存の証拠が少なければ、請求側は弱気にならざるを得ず、譲歩幅も大きくなります。

これに対し、DNA鑑定なしでも死後認知が認められる可能性が高いといえる場合には、譲歩幅は少なくなります。

 

3 死後認知と不貞慰謝料に関する実務上の関係

死後認知に関連して、相手方から不貞慰謝料を請求されるケースがあります。

 

死後認知請求において亡くなった方が既婚者であれば、死後認知請求をする=浮気をしていたということですから、不貞慰謝料が認められる可能性が非常に高いということになります。

 

もっとも、かなり高齢で亡くなったようなケースでは、時効(損害及び請求相手を知ってから3年)や除斥期間(行為のときから20年で権利消滅)によって請求できなくなるケースも多くあります。

 

また、請求が認められるケースでも、死後認知の当事者は子供たちであるのに対して、不貞慰謝料の請求の相手方は、その母親となるので、当事者が異なります。

 

このあたりは、母親と子供たちとの関係が良好な場合には、死後認知請求や相続とまとめて不貞慰謝料に関しても合意してしまうケースがあります。

 

 

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