認知調停におけるDNA鑑定の仕組み

2019-05-01

認知調停においてDNA鑑定をすることが多いのですが、相手方になる弁護士もよく理解していないことが多く、だれを検査するかで見解が食い違うことがあったりします。

そこで、認知調停に必要な範囲でDNA鑑定について説明します。

 

まず、DNA(デオキシリボ核酸)は、生命の設計図といわれるもので、デオキシリボース(五炭糖)とリン酸、塩基 から構成されています。

このうち、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4つの塩基配列で遺伝情報が決まります。

 

ようするに、遺伝情報とは、A、G、C、T、の並ぶ順番だということです。

 

DNA鑑定では、この4つの塩基の並ぶ順番が一致しているかどうかを調べるわけですが、全DNA(ゲノム)を調べるのは大変ですから、個人差が表れやすい部分を調べます。

この、調べる量によって、DNA鑑定の精度が変わり、また、精度が上がるほど調べる量が多くなる=料金が高くなるということになります。

 

では、認知調停で具体的にどのようなことをしているのかというと、子供の塩基配列から、母親の塩基配列と一致する部分を引き、残った部分が父親と一致するかを調べます。

 

具体的に考えてみましょう。

現実にはあり得ませんが、たとえば、子供のDNAの塩基配列が、

AAAAAAAAAAAA

だったとします。

そして、母親の塩基配列が、

AGAGAGAGAGAG

だったとします。

子供の塩基配列から、母親の塩基配列と一致する部分(〇で表します)を差し引くと

〇A〇A〇A〇A〇A〇A

が残ります。

そして、父親と思われる人物(疑父といいます)のDNAを調べると、

TATATATATATA

だったとすると、この結果と先ほどの子供の塩基配列から母親の塩基配列を差し引いたものを比べると、完全に一致します。

よって、疑父は、遺伝学上の父親である可能性が高い(検査精度により、父親であることと矛盾しないというレベルから、間違いないというレベルまであります)ということになります。

 

このように、父母が生きている場合は、比較的簡単に親子関係が分かりますが、死後認知など、相手の親族とのDNA鑑定しかできない場合は厄介です。

たとえば、先ほどの例で、鑑定相手が父親ではなく異母兄弟だとしましょう。

異母兄弟は、父親だけでなく母親からの遺伝情報も受け継ぎます。

たとえば、母親のDNAが、

CGATCACTCGTA

だったとしましょう。

異母兄弟は、父親と母親の組み合わせで、

TGAACATCTATA

になったとします。

この異母兄弟の塩基配列と、最初に挙げた子供の塩基配列は5か所一致しますが、異母兄弟の塩基配列が父親由来か母親由来か分からないと、果たしてその5か所一致が父親と一致する根拠となるのかどうかが分かりません。

つまり、異母兄弟の塩基配列から、その母親の塩基配列の一致部分を先に差し引いて、残りが子供と一致するかどうかを調べないと、父親との親子関係に関する鑑定精度は大幅に落ちることになります(父親が珍しい塩基配列をしていて、子供たちがそれを受け継いでいるような場合は、高精度の場合もあります)。

 

このように、死後認知請求などでは、父親遺族のなるべく多く、できれば異母兄弟とその母親の協力がある方が望ましいということになります。

 

では、このDNAが一致するのに親子でないということはあり得るのでしょうか?

これは検査精度に依存します。

適切に細胞を採取・管理し、非常に高精度な検査を受ければ、DNAが一致するのに親子でないということは、父親が一卵性双生児のもう一方の方であることくらいでしょう。

 

では、逆にDNAが一致しないのに親子ということはあり得るのでしょうか?

適切に細胞を採取・管理し、培養、検査方法も適切ならば、ほとんどありえませんが、極まれに例外があります。

親の生殖細胞がキメラのケースです。

つまり、親が何らかの要因(二卵性双生児の一方を妊娠初期に他方が吸収し一体化するなど)で、2つのDNAを持つというケースです。

 

なお、余談ですが、血液型が一致しないのに親子であるケースは、造血細胞がキメラのケースと、骨髄移植によって造血細胞が他人のものになった場合があります。

 

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弁護士 本 田 幸 則
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