過去の婚姻費用の請求

2015-05-03

調停は、裁判所で行う話合いですから、過去の婚姻費用について、相手が納得するならば支払ってもらうことができます。
しかし、裁判所が審判によって決める場合には、調停・審判申立時点からの婚姻費用の支払が命じられ、それ以前の婚姻費用の支払が命じられることは、ほとんどありません。
例外的に、過去に内容証明郵便等で明確に婚姻費用の支払を請求していたような場合に、その日を基準に支払を命じたものがある程度です。
とりあえず内容証明郵便を送ろうという場合は、単に婚姻費用を請求するだけでなく、具体的な金額まで書いて請求することが必要という審判を受けたことがあるので、金額も明示しておいた方が良いでしょう。

 

では、それ以上前の婚姻費用は一切認められないのでしょうか?

 

そんなことはありません。
調停・審判申立前の未払い婚姻費用は、婚姻費用としては請求が認められませんが、離婚時の財産分与を決めるにあたって考慮することで、実質的には請求が認められます。

 

もっとも、どこまで遡って請求できるのかや、具体的な金額について明確な基準はなく、裁判所が、未払いになった事情や、支払義務者の資産や収入、権利者が実際に支出した生活費の金額、子供の養育状況などを総合考慮して、適正と思われる金額を判断します。

 

逆に、過去に適当と思われる金額を超える婚姻費用の支払を受けていた場合、その金額を返還する必要があるかですが、こちらについては、よほど高額でない限り返還の義務はないとした裁判例があります。

 

さらに、離婚が成立した後に過去の婚姻費用が請求できるのかという問題もあります。
この点については、一般に公開されている裁判例はないようですが、学説上は、財産分与は離婚後2年間できることから(民法768条2項ただし書き)、同条項を適用して離婚後2年間請求できるという説(婚姻費用が財産分与に転換された、または、財産分与ではないが同条項を類推適用する)や、離婚後にも通常の婚姻費用分担調停・審判によって請求できるとする説があります。
ただ、離婚後の婚姻費用分担請求は、あまり現実的なものとは思えないので、離婚時に解決しておいた方が良いでしょう。

 

〈最高裁判昭和53年11月14日判決〉
裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の精算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることが出来ると解するのが、相当である。

 

〈高松高等裁判所平成9年3月27日判決〉
夫婦が円満である間に当事者の一方が過当に負担した婚姻費用は、特段の事情がない限り、過当な部分については贈与の趣旨であって精算の必要はない。
夫婦関係が破綻に瀕したあとに当事者の一方が過当に負担した婚姻費用に限り精算を求めることが出来る。

 

〈大阪高等裁判所平成21年9月4日決定〉
当事者の一方が自発的または合意に基づいて、標準算定式に基づく金額以上の婚姻費用を支払っていても、それが当事者双方の収入や生活状況から著しく相当性を欠くものでない限り、標準算定式を上回る部分について財産分与の前渡しとして評価することは相当でない。

 

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