住宅ローンを支払っているときの婚姻費用

2015-03-15

離婚前に別居になり婚姻費用を請求することになったけれど、支払義務者が住宅ローンを支払っている場合、婚姻費用に影響はあるのでしょうか?

 

1 支払義務者が請求権者の住む家の住宅ローンを支払っているとき

婚姻費用を支払う側が、請求する側の住む家の住宅ローンを支払っている場合には、支払義務者は、請求権者の住居費を負担しているので、ある程度の減額が認められます。

 

もっとも、住宅ローンの支払は、家の実質的価値(家の市場価値-住宅ローン)を増やす効果があり、離婚の際の財産分与においては、住宅ローンの支払により価値が上がった家を分けることになるので、住宅ローンの支払は、支払義務者の利益にもなります。

 

そこで、請求権者の住む家の住宅ローンを支払っていることが、どの程度考慮されるかが問題となりますが、裁判例は統一されておらず、大きく次の2つの考え方に別れています。

 

①住宅ローンの支払額を特別経費として控除する方法
この方法は、たとえば、年収600万円で、住宅ローンが年間120万円払っている場合、120万円を経費として差引き、収入を480万円と考えて、婚姻費用算定表に当てはめる方法です。
この方法で、夫婦2人のみ、請求権者の収入がゼロの場合を婚姻費用算定表に当てはめると、婚姻費用は月6~8万円の8万円に近い方となります。
年収600万円をそのまま婚姻費用算定表に当てはめると、月8~10万円の中央からやや上となるので、月1~2万円の差が出てきます。

 

なお、上記方法は、理論的には差引きすぎとなるため、住宅ローンの支払額に修正を加えた額を差引く考え方もあります。

では、どのように修正を加えるのかというと、裁判官が諸事情を考慮してということになり、明確な基準はありません。

 

②婚姻費用算定表により得られた金額から一定金額を控除する方法
この方法は、まずは、年収をそのまま婚姻費用分担表に当てはめて、月々の婚姻費用を算出した上で、そこから一定額を差引くという考え方です。

 

この「一定額」はいくらなのかについて、さらに考え方が別れており、家計調査年報などの政府の統計資料をもとに請求権者の住居関係費費相当額を差引く方法や、裁判官が様々な事情を総合考慮して「住宅ローン月額の●割である●●円を差引くのが相当」などとし、理論的根拠を明確にしないものがあります。

 

なお、婚姻費用算定表が作成された際に参考として使用された平成10~14年の収入別住居関係費は以下のとおりです。

収入(年収)200万円未満250万円未満300万円未満350万円未満400万円未満
住居関係費(月間)27,940円32,354円31,655円32,590円37,871円

 

2 支払義務者が自分の住む家の住宅ローンを支払っているとき

住宅ローンは、夫婦の収入から支払うことを想定していたため、一人で支払うのが大変なので婚姻費用算定に当って考慮して欲しいと主張されることがあります。

 

しかし、高額の住宅ローンであったとしても、支払った分だけローン残高が減る、つまり、家の実質的価値(家の市場価格-ローン残高)が増えることになるので、形式的にはお金が出ていくけれども、実質的には家の実質的価値として残っていると考えて、婚姻費用算定に当っては考慮されません。
その代わり、離婚の際の財産分与において、別居後に支払った住宅ローン相当額について、支払った者が家の価値の増加に貢献したとして考慮されます。

 

【関連コラム】
男女問題コラム目次

 

Copyright(c) なごみ法律事務所 All Rights Reserved.