再婚と養育費

2015-08-15

養育費は、取り決めをした時を基準とした金額を将来にわたって支払っていくことになるため、取り決めのときには想定していなかった事情がある場合には変更が認められます(民法880条)。
その一つが、親の再婚です。
もっとも、再婚すれば必ず養育費の変更が認められるわけではありません。
以下、養育費の支払義務者が再婚する場合と、養育費を請求する権利者が再婚する場合に分けて説明します。

 

1 支払義務者が再婚した場合

⑴ 基本的な考え方

養育費の支払義務者が再婚しても、それだけでは養育費に影響は与えません。
もっとも、支払義務者の扶養家族が増える場合には、支払義務者の収入は、その扶養家族のためにも使われるべきですから、相対的に養育費が減額されることになってしまいます。
扶養家族が増えたことを理由に養育費が減額される場合としては、再婚相手の連れ子と養子縁組をした場合や、再婚相手との間に子供ができた場合です。

 

⑵ 再婚相手が専業主婦などで収入がない場合

では、再婚相手が専業主婦だった場合は、再婚相手を扶養する必要があるとして養育費の減額が認められるでしょうか?
この場合、再婚相手が専業主婦であるというだけでは、当然には養育費は減額されません。
なぜなら、結婚相手も大人なのですから、健康上の問題がある等でなければ自分の生活費程度の収入を得ることはできるからです。
そこで、再婚相手が専業主婦になった事情などを考慮のうえで、再婚相手の生活費を支払義務者が負担する必要があるかどうかが判断されます。

 

⑶ 具体的な計算方法

*標準算定式を用いた養育費の計算方法を応用することになるので、あわせてコラム「養育費の計算」もご覧ください。

 

① 再婚相手に収入がなく扶養しなければならない場合

 

再婚相手に収入がなく、働くのが難しいといえる場合は、支払義務者は再婚相手を扶養する義務があります。
その場合、再婚相手は、0~14歳の子供と同様に扱うことになります。
具体的には、再婚相手の生活費指数を55と考えることになるので、
子供に支払われるべき金額=支払義務者の基礎収入×(55×0~14歳の子供の人数+90×14~19歳の子供の人数)÷(100+55+55×0~14歳の子供の人数+90×14~19歳の子供の人数)
となります。
養育費は権利者と支払義務者の収入割合で決まるので、
養育費=子供に支払われるべき金額×支払義務者の基礎収入÷(支払義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
となります。

 

具体的に計算してみましょう。
10歳の子供が一人で元妻が親権者で年収300万円、元夫の年収600万円、元夫の再婚相手が無職で働けない事情がある場合
子供に支払われるべき金額=(600万円×0.36)×55÷(100+55+55)≒57万円
養育費=57万円×(600万円×0.36)÷(600×0.36+300×0.38)≒37万円
1か月あたり=37万円÷12か月≒3万円
となります。

 

なお、権利者の収入が高額でない場合は、養育費算定表を利用して算出することができます。
上記の例ですと、再婚相手は0~14歳の子供と同じ扱いになるので、養育費算定表の子2人表(第1子及び第2子0~14歳)で、義務者年収600万円、権利者収入300万円の場合を見ます。
すると、養育費(月額)は6~8万円の下限付近になるので、月6万円と考えられます。
権利者が育てている子供は1人なので、月6万円の2分の1である月3万円となります。
この、養育費算定表を利用した方法では、権利者も再婚相手の生活費の一部を負担することになってしまうので、権利者の収入が多い場合には誤差が大きくなるため、養育費算定表を使うのは適切ではありません。

 

② 再婚相手に収入がある(十分な収入を得られる)場合

 

再婚相手に収入がある(十分な収入を得られる)場合は、再婚相手を扶養する必要はありませんが、再婚相手との子供を扶養しなければならない関係で、支払義務者の負担が増えるので調整する必要が出てきます。

 

もっとも、計算方法についての統一的な見解はないようです。
ここでは、法曹時報第66巻第6号という雑誌に裁判官が寄稿した解説の中で示されている算出方法を紹介します。

 

子供の生活費については、大人を100とした場合に子供の生活費がどれくらいかということを示した生活費指数という概念を使います。
この生活費指数を、再婚相手に十分な収入がある場合には修正します。
具体的には、通常の生活費指数(0~14歳は55、15歳~19歳は90)を、支払義務者と再婚相手の収入割合で案分します。
計算式は、
再婚相手との子の生活費指数=(55×0~14歳の人数+90×14~19歳の人数)×支払義務者の基礎収入÷(支払義務者の基礎収入+再婚相手の基礎収入)
となります。
あとは、複数の子を夫婦が別々に引き取った場合と同様です。
まず、子供の合計人数に応じた養育費を求め、その養育費を生活費指数で案分します。

 

具体的に計算してみましょう。
10歳の子供が一人で元妻が親権者で年収300万円、元夫の年収600万円、元夫と再婚相手との間に3歳の子がいて再婚相手の年収が200万円の場合、
再婚相手との子の生活費指数=55×600万円×0.36÷(600万円×0.36+200万円×0.39)=40.425
養育費算定表の子2人表(第1子及び第2子0~14歳)で、義務者年収600万円、権利者収入300万円の場合、養育費(月額)は6~8万円の下限付近になので、月6万円として、
養育費(月額)=6万円×55(権利者の子の生活費指数)÷(55(権利者の子の生活費指数)+40.425(再婚相手との子の生活費指数))≒3万4582円
となります。

 

③ 再婚相手との間に子供ができたが、再婚相手とも離婚した場合

 

このようなケースについて言及している文献等は見たことがありませんが、実際には生じる問題です。

 

私見ですが、このような場合には、支払義務者の収入のうち、子供に支払われるべき金額を計算し、これを各権利者の収入の比率と子供たちの生活費指数を勘案して分けるのが適切ではないかと思います。

 

2 請求権者が再婚した場合

養育費の請求権者が再婚した場合、子供と再婚相手との間で養子縁組をするかどうかで、養育費への影響が異なります。
再婚はしたけれども、再婚相手と子供は養子縁組をしていないという場合、これまで通り子供の生活に責任を負うのは元配偶者ですから、原則として養育費に影響を与えません。
しかし、再婚相手と子供とが養子縁組をした場合、再婚相手が子供に対して一次的義務を負い、それでも不十分な場合に元配偶者が二次的に義務を負うという関係になります。
ですから、元配偶者の養育費支払義務は、再婚相手の収入に応じて減額され、場合によってはゼロとなります。
この場合の具体的な計算式については統一的な見解はないようですので、具体的な事情に応じて裁判官が適切と考える金額ということになります。

 

もう一つ、再婚によって請求権者の収入が変わる場合があります。
再婚前はフルタイムで働いていたのが、再婚によって専業主婦(夫)となったような場合です。
養育費は、双方の収入を基礎に算定されますから、請求権者が専業主婦(夫)になって収入がゼロになった場合には、養育費は増額されるようにも思えます。
このような場合について解説した文献・裁判例を見つけることができませんでしたが、このような場合には、ほとんどの場合、再婚相手に十分な収入があるでしょうし、請求権者が働けるにもかかわらず自分の意思で働かないわけですから、原則として養育費は増額されないと考えるのが適切だと思います。

 

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