年金受給者の婚姻費用・養育費

2021-03-01

当事者が給与生活者や自営業者の場合の場合の婚姻費用や養育費については、裁判所が作成している婚姻費用算定表・養育費算定表で算出できます。

 

算定表よりも緻密に算出したい場合は、算定表の元になっている標準算定式を用いれば算出できます(くわしくは、「婚姻費用の計算」「養育費の計算」をご覧ください)。

 

では、当事者が年金生活者の場合はどうなるのでしょうか?

 

年金といっても、65歳から支給される年金と、障害がある場合に支給される障害年金とでは違いがあります。

 

まずは、よく議論の対象となる老齢年金について説明し、2番目に障害年金について説明します。

 

1 老齢年金を受給している場合の婚姻費用・養育費

① 基本的な考え方

婚姻費用・養育費の考え方は、総収入から、公租公課、職業費、特別経費を差し引いた金額を基礎収入と考え、その基礎収入を家族構成に応じて分けるものです。

 

総収入から引かれる公租公課は、税金のことです。

職業費は、仕事関係の服や靴、交通費など、仕事を続けるために最低限支出しなければならないと考えられる費用です。

特別経費は、住居関係の費用や医療費などの、生きていくための最低限の費用です。

 

給与所得者の場合は、上記3項目をすべて引いたあとの金額を基礎収入とし、その基礎収入を家族構成に応じて分けることになりますが、年金収入の場合は、上記のうち、職業費がかかりません。

ですから、総収入のうち、公租公課と特別経費のみ差し引きます。

 

というのが理屈ですが、婚姻費用・養育費算定表や、そのもとになっている標準算定式は、給与所得者を基準に作られているため、

給与所得者のものに職業費を加算して修正するのが一般的です。

 

以下、具体的に算出方法を説明します。

 

② 婚姻費用・養育費算定表を使って算出する

婚姻費用・養育費算定表には、給与所得者の欄がありますので、上記のとおり、年金収入に職業費分を加算して、もしそれが給与所得だったら●●円相当と考えて算定表に当てはめます。

 

では、いくら加算するかですが、職業費は、収入によって若干比率が変わりますが、おおよそ15%です(旧算定表だと20%)。

 

ですから、15%分割り戻してあげればよいということになります。

具体的には、以下の計算式になります。

 

年金収入÷0.85=給与相当額

 

面倒なので、表にすると以下のようになります。

 

年金収入(年額)給与収入相当額 年金収入(年額)給与収入相当額
21万円25万円276万円325万円
43万円50万円298万円350万円
64万円75万円319万円375万円
85万円100万円340万円400万円
106万円125万円361万円425万円
128万円150万円383万円450万円
149万円175万円404万円475万円
170万円200万円425万円500万円
191万円225万円446万円525万円
213万円250万円468万円550万円
234万円275万円489万円575万円
255万円300万円510万円600万円

 

この年金収入を給与収入相当額に修正した金額を婚姻費用・養育費算定表に当てはめれば、毎月の金額が算出できます。

 

③ 標準算定式を使って細かく計算する

婚姻費用の計算と、養育費の計算で説明した通り、算定表にはもとになっている計算式があります。

 

その最初のステップの基礎収入の割合を計算する際、職業費15%を考慮した割合にします。

 

具体的には、以下のとおりとなります。

 

0~75万円・・・・・・・・69%
75万~100万円・・・・・65%
100~125万円・・・・・61%
125~175万円・・・・・59%
175~275万円・・・・・58%
275~525万円・・・・・57%
525~725万円・・・・・56%
725~1325万円・・・・55%
1325~1475万円・・・54%

1475~2000万円・・・53%

2000万円~・・・・・・・具体的事情に応じて算出

 

厳密には、統計的には職業費は、年収250万円程度が一番比率が高く、それ以上になると、緩やかに下がっていきますが、それほど大きな違いはないので、15%で考えてよいでしょう。

 

あとは、同じ計算式ですので、詳しく知りたい方は、婚姻費用の計算と、養育費の計算のコラムをご覧ください。

 

2 障害年金を受給しているの場合の婚姻費用・養育費

 

老齢年金の場合は上記のとおりですが、障害年金については、あまり論じられておらず、私の知る限り裁判例も見当たりません。

 

学説上は、障害年金は、障害がある方のために、その障害に応じた最低限の生活をするための給付金なので、婚姻費用や養育費を請求できないとするものや、請求できるが障害に応じた考慮が必要とするものがあります。

 

また、障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があるので、上記のような、障害者の生活保障的側面から婚姻費用・養育費の請求を制限するとしても、障害厚生年金部分について配慮が必要なのかは議論があります。

 

さらに、上記の理屈からすれば、権利者のみが障害年金を受給している場合には、婚姻費用・養育費を請求して収入が増えることはあっても、減ることはないので、老齢年金と同様に考えてよいということになるはずです。

 

 

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