婚姻費用の計算|2019年12月改定対応

2015-05-13

離婚前に別居する場合、収入の多い方は、収入の少ない方の生活を援助する必要があります。
この生活の援助金を婚姻費用分担金といいます。
婚姻費用分担金は、お子さんがいる場合には、お子さんの養育費を含んだ金額となります。
婚姻費用の金額は、裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表、あるいは、そのもとにになっている標準算定式に基づいて計算します。

 

基本的には、婚姻費用算定表に双方の収入を当てはめれば算出できますが、より緻密に計算したい場合や婚姻費用算定表に当てはまらない場合は標準算定式を用いて計算します。

また、お子さんが私立学校に通っていたり、相手方が住宅ローンを支払う自宅に住んでいるなど、一般的な金額を修正する必要がある場合に、標準算定式を応用して算出する必要があります。

 

以下では、①婚姻費用算定表の使い方、②標準算定式での婚姻費用の計算、の順に詳しく説明します。

1 婚姻費用算定表の使い方

⑴ 基本的な使い方

婚姻費用は、婚姻費用の分担を請求をする権利者の収入と支払をする義務者の収入とが交わっている部分となります。
婚姻費用費算定表の金額は、事情によって多少調整できるように幅のある記載となっていますが、通常は、収まっている枠の上限近くなら上限近い金額、下限近くなら下限近い金額、真ん中当たりなら中間的金額と考えておいて良いでしょう。

 

ここでいう「収入」は、会社員や公務員などの給与所得者の場合、手取金額ではなく総支給額となります。
源泉徴収票だと「支払金額」、課税(所得)証明だと「給与収入」と書かれている金額です。

「総所得金額」ではないので注意してください。

 

自営業者の場合には、確定申告書の確認が必要となります。

確定申告書の左側真ん中あたりに「所得金額 合計⑤」と改定ある欄があるので、まずはこの金額を確認してください。

次に、そこから、「社会保険料控除⑥」欄に記載の金額を引きます。

さらに、51番の「青色申告特別控除」の金額をたします。

なお、50番の「専従者給与」が名目上で、実体がない場合は、その金額も足します。

上記の合計額を婚姻費用算定表に当てはめます。

 

⑵ 給与+自営の収入がある場合

会社員だけれども副業などによる収入がある場合や、自営業だけれどもアルバイトもしていると言った場合には、まずは、給与所得の部分を表の「給与」の金額に当てはめます。
次に、そのすぐ横に書いてある自営の場合の金額を見てください。
その金額が給与所得を自営だったと仮定した場合の金額となります。
その金額に、自営での収入を加えた金額が、「収入」となります。

 

例えば、義務者の給与収入500万円、自営所得200万円、、権利者が給与所得300万円、14歳以下の子供1人の場合、養育費算定表の表11を使います。
同表の、義務者の給与所得が500万円の右を見ると、自営の場合373万円に相当することになります。
これに自営所得200万円を加え、自営収入573万円と考えます。
権利者の給与収入が300万円ですから、両者の交差する14~16万円が適正金額となります。

婚費(給与+自営)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑶ 家庭内別居の場合

家庭内別居であっても婚姻費用分担金を請求できますが、婚姻費用算定表は、別居していることを前提としているので家庭内別居の場合は住居費分を差引くことになります。

 

具体的にどのように調整するのかについては裁判例によってまちまちで、担当した裁判官が、適切と考える額を婚姻費用算定表記載の金額から差引いた金額となります。

 

2 標準算定式での計算方法

婚姻費用算定表に当てはまらない場合は、標準算定式を使います。
標準算定式の考え方は、①双方の基礎収入を計算する、②世帯の基礎収入から権利者に配分されるべき額を計算する、③義務者が支払う額を計算する、の3段階に分けて計算すると分かりやすくなります。

 

①双方の基礎収入を計算する

基礎収入とは、収入から税金や、その収入を維持するために必要な経費などを差引いたものです。

具体的には、会社員の場合は、支払総額から、税金、職業費(通勤費用、被服費など)、特別経費(住居関係費、保健医療費、保険掛金など)を差引いたもの、自営業者の場合、所得から、税金、特別経費(住居関係費、保健医療費、保険掛金など)を差引いたものとなります。
これらを厳密に計算するのは大変なので、原則として、統計に基づいた以下の割合をかけて算出します。

 

会社員・公務員などの場合(総支給額に対し以下の割合)
0~75万円・・・・・・・・54%
75万~100万円・・・・・50%
100~125万円・・・・・46%
125~175万円・・・・・44%
175~275万円・・・・・43%
275~525万円・・・・・42%
525~725万円・・・・・41%
725~1325万円・・・・40%
1325~1475万円・・・39%

1475~2000万円・・・38%

2000万円~・・・・・・・具体的事情に応じて算出

 

自営業の場合(所得金額-社会保険料+青色申告(白色申告)特別控除+実際に支払っていない専従者給与、に対し以下の割合)
0~66万円・・・・・・・・61%
66~82万円・・・・・・・60%
82~98万円・・・・・・・59%
98~256万円・・・・・・58%
256~349万円・・・・・57%
349~392万円・・・・・56%

392~496万円・・・・・55%

496~563万円・・・・・54%

563~784万円・・・・・53%

784~942万円・・・・・52%

942~1046万円・・・・51%

1046~1179万円・・・50%

1179~1482万円・・・49%

1482~1567万円・・・48%

1567~・・・・・・・・・具体的事情に応じて算出

 

②権利者に配分されるべき額を計算する

次に、婚姻費用を請求する側と支払う義務者との間で、上記の基礎収入をどのように分けるかを考えます。

 

夫婦間においては、自分と同じレベルの生活を相手にも保証する必要があるので、基本的には双方の基礎収入を足して2で割ることになりますが、子供がいる場合には、子供の生活費を考慮する必要があります。

子供の生活費は、大人を100とした場合にどれくらいかが統計を基に決められています。

この、大人を100とすると、子供はどれくらいかを表したものが生活費指数です。

 

具体的には次の通り決まっています。

・14歳以下の子供の生活費指数:62

・15歳以上の子供の生活費指数:85

 

この生活費指数を用いて、①で計算した基礎収入を平等に割り付けると次のとおりとなります。

 

権利者に配分されるべき金額=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×(100+62×14歳以下の子供の人数+85×15歳以上の子供の人数)÷(100×2+62×14歳以下の子供の人数+85×15歳以上の子供の人数)

 

 

③義務者が支払う額を計算する

最後に、②で計算した金額は、世帯全体の基礎収入から権利者に配分されるべき金額を計算したものですから、権利者自身の収入は既に手元にあるので差し引きます。

 

義務者が支払う金額=②権利者に配分されるべき金額-権利者の基礎収入

 

ここで算出される婚姻費用は年間の婚姻費用ですので、月々の婚姻費用は12で割った金額となります。

 

〈計算例〉

実際に計算してみましょう。
義務者が会社員で収入は600万円、権利者も会社員で収入は200万円、子供は3歳児が1人とします。

 

①基礎収入

 

義務者の基礎収入=600万円×41%=246万円
権利者の基礎収入=200万円×43%=86万円

 

②権利者に配分されるべき金額

 

義務者に配分されるべき金額=(246万円+86万円)×(100+62)÷(100×2+62)≒205万2824万円

 

③義務者が支払う金額

 

義務者が支払う金額=205万2824円-86万円

=119万2824円

 

月額=119万2824円÷12≒9万9402円

 

裁判所が審判で決める場合は、キリの良い数字にするので、月10万円と認定されるでしょう。

 

念のため婚姻費用算定表で確認すると、8~10万円と10~12万円の境界あたりですので計算結果と一致します。

 

 

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