私立医大に通う子が学費不足を理由に養育費増額請求をした事例

2018-12-01

私立医大に通う子供(23歳)から、非親権者であった父親に対して、学費が足りないことを理由として養育費の増額を求めたのに対し、大阪高等裁判所が、増額を認めた事例をご紹介します(大阪高等裁判所平成29年12月15日決定)。

 

1 本件申立に至る経緯

・1993年 父親と母親が結婚し、原告と長女を設けた

・2007年 父親の不貞行為が発覚した

・2009年 父親が医院を開業し、自宅を出て別居した

・2010年 父親が母親に離婚申し入れ

・2011年 父親が母親らの住居としてマンション(5000万円)を購入し、母親と子供たちは同マンションに居住

・2011年 父親が母親を相手方として離婚調停を申立て

・2012年 原告と長女の親権者を母親と決めて離婚

離婚にあたり、養育費は以下のように取り決めた。

子供1人につき500万円の一時金と、子供達が大学(医学を含む)を卒業するまで、一人当たり25万円を支払う。

ただし、子供が私立医学部に進学する場合は、子供が父親に希望を伝え、学費不足分については別途協議する。

・2013年 父親が再婚したのをきっかけに子供達と疎遠になった。

また、父親が養育費減額調停を申し立てたが成立せず、審判、抗告もするが減額は認められなかった。

なお、母親は、原告の進学にあたり奨学金を利用するために、原告を父親の扶養から外すよう要求したが、父親はこれを拒否

・2015年 原告は、二浪ののち私立医学部に進学した。

原告は、父親に学費の不足分について話をしようとしたが、父親は協議に応じなかった。

・2016年 原告は、父親を相手方として養育費増額調停を申立て(京都家裁福知山支部)。

・2017年 調停不成立となり、審判移行した。

京都家庭裁判所福知山支部は、追加費用の請求を認め、医学部在学期間である6年で407万円の支払を命じた。

これに対して、双方が不服申し立てを行ったのが本件である。

 

2 本決定の概要

上記の事案について大阪高等裁判所は、要旨以下のように判示しました。

 

父親が離婚時に子供が医学部へ進学することを想定しており、その際には養育費だけでは足りなくなることを想定し、追加費用を負担する意思があったことを認定し、追加費用支出義務を認めました。

 

金額については、離婚時の養育費が標準算定方式を下回っていないことから、実際の学費(学納金及会費)から標準算定式で織り込み済みの学費を引いた額を父親と母親で負担することとしました。

 

ただし、Xが2浪したことについては、父親が納得していたものではないとして、2浪していた期間に支払っていた養育費相当額を差し引いた残額を基準に負担額を決めるものとしました。

 

父親と母親の負担割合は、両者の収入、母親が、父親がローン全額を負担するマンションに無償で住んでいること、離婚時の養育費が養育費算定表より高額であることから、もともとある程度負担していると考えられること、などを考慮し、母親:父親につき、1:4の割合で負担することとしました。

最終的に、父親に6年間で880万円を学費納入時期の年3回にあわせて分割払いするよう命じました。

 

3 説明

⑴ 本件は、子供自身が別居している方の親に対して、扶養料(実質的には養育費ですが、子供が成人しているからでしょうか、扶養料という言葉を使っています)の追加請求をしている点も特徴的です。

この点、子から親に対し、直接養育費を請求することが認められることに争いはありません。

 

⑵ また、本件では、子供が2浪しているのも特徴的です。

2浪した場合の大学費用については、裁判上、認めているものと認めていないものがありますが、本件では、その点はとくに争いになっていないようです。

ただし、2浪した期間の養育費相当額(300万円)は、Yが納得していたわけではないことを考慮して、追加費用算出に当たって差し引いています。

 

⑶ 次に私立医学部の進学費用の負担が認められるかが問題となります。

この点について、父親(Y)が医者で、母親(A)が薬剤師、子供本人が従前から医学部進学を希望しており、離婚時にも医学部進学を想定し、さらに私立進学にも言及する規定があったことからすれば、追加費用支出を認めたのは適当でしょう。

 

ただし、本件のような関係だから認められたのであり、異なる家庭事情でも私立医学部進学時に追加費用の請求が認められるわけではないことは注意が必要です。

 

⑷ 本件では、金額も争いになっていますが、最終的な結論は、様々な事情を総合考慮して算出しており、厳密な計算式によっていません。

この点、Y名義のマンションに無償で住んでいることや、離婚時に取り決めた養育費が相場より高いことを考慮した追加費用を数式で算出することはできないので、総合考慮という形でやむを得ないでしょう。

 

 

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