私立学校に通う場合の養育費

2015-03-01

裁判所の公表している「養育費算定表」は、公立学校に通う場合を想定しているため、お子さんが私立小学校、私立中学校、私立高校などに通っている場合、養育費が増額されることがあります。

 

1 私立学校に通うことで養育費が増額される場合

私立学校に通っている場合、それを相手が納得している場合や、両親の学歴、職業、資産、収入(公立に通う類似世帯の平均収入以上)、居住地域の進学状況などを考慮して相当と認められれば、養育費算定表の金額が増額されます。

 

逆に、相手が私立学校への進学に反対していた場合や、資産、収入などから学費の増額分を相手に負担させるのが相当といえない場合は、たとえ実際に私立学校に進学していた場合でも、養育費は増額されません。

 

*養育費の増額を否定した裁判例
【神戸家庭裁判所平成元年11月14日審判】
娘が私立学校に通うことを理由に、養育費の増額を請求した母親に対し、裁判所は、①姉2人が公立高校を卒業していること、②父親の収入が低いことから、増額を認めると負担が大きいこと、③父親が当初から私立高校への進学を強く反対していたこと、を理由に養育費の増額を認めなかった。

 

2 私立学校に通う場合の養育費の計算

まず、私立学校の学費として考慮されるのは何かですが、裁判では、授業料および施設利用費などの学校納付金をいいます。
学用品費などは、公立でも私立でも大きな差はないと考えて考慮しない場合がほとんどです。

 

では、具体的にどのように計算するかですが、確立した裁判例はないものの、基本的には次の2つのいずれかの方法で計算しますが、義務者の負担額が年収に対して大きくなり過ぎる場合は修正されます。

 

①私立学校の学費から公立学校の教育費を差引いて、収入に応じて案分
②私立学校の学費から養育費算定表で考慮されている学費相当額を差引いて、収入に応じて案分

 

①について

①は、単純に私立と公立の差を、収入の比率で負担しようという考え方です。
厳密には、養育費算定表は、収入に応じて教育費も上がることを前提に作られているため、この方法は必ずしも適切な金額とはなりません。
ただし、収入が1000万円以下であれば、②の方法とほとんど違いはありません。
①を計算式にすると、次のようになります。

 

増加額=(私立学校の学費-公立学校の教育費)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12か月

 

ここで、養育費算定表は、14歳以下の子供の学校教育費を13万4217円、15歳以上の子供の学校教育費を年間33万3844円として作られています。
これは、養育費算定表作成当時の平成10年ころの統計によるものです。
また、基礎収入については、「養育費の計算」のところで説明したとおり、収入に応じて、会社員であれば総支給額の34%~42%、自営業者であれば課税所得の47%~52%とされます。

 

具体的に計算してみましょう。
私立高校に通う子供の学費が年間120万円、義務者が会社員で年収が700万円、権利者が会社員で収入が300万円とします。
増加額=(120万円-33万3844円)×700万円×36%÷(700万円×36%+300万円×39%)÷12か月
≒4万9000円
となります。

 

②について

②の考え方は、養育費算定表のうち、教育費が占める金額を考え、その金額を私立の学費から差引いて、収入の割合で負担しようという考え方です。
理論的には、こちらの方がより緻密な計算となりますが、年収1000万円までは①と大きな差はでません。
これを計算式にすると、

 

14歳以下の増加額=(私立学校の学費-養育費算定表の金額×13/55)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12か月

 

15歳以上の増加額=(私立学校の学費-養育費算定表の金額×32/90)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12か月

 

となります。

 

こちらも先ほどの例(私立高校に通う子供の学費が年間120万円、義務者が会社員で年収が700万円、権利者が会社員で収入が300万円)で計算してみます。
増加額={120万円-(7万円×12か月)×32/90}× 700万円×36%÷(700万円×36%+300万円×39%)÷12か月
≒4万9000円
となります。

 

3 塾代などの増額請求

塾などの習い事は、親権者が任意に行うものと考えられており、原則として養育費の増額理由にはなりません。
もっとも、相手が塾に通わせることを同意している場合などや、発達障害児の学習補助など学校以外の習い事が必要な場合には、増額が認められることがあります。

 

詳しくは、下記関連コラムをご覧ください。

 

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