浮気→別居→同居→浮気?で、婚姻費用が制限された事例
浮気→別居→同居→浮気?という事情で、婚姻費用分担請求が権利濫用とされた事例をご紹介します。
大阪高等裁判所平成28年3月17日決定は、上記のとおり、一度妻の浮気で別居し、その後関係修復を目指して同居し、再び妻が別の男性と浮気をうかがわせるSNSをしていた事例について、SNSの内容から不貞行為が推認されると認定し、婚姻費用のうち妻の生活費は信義則あるいは権利濫用の見地から支払い請求を認めず、妻と同居する子供達の養育費分のみ請求を認めました。
この決定の原審となる神戸家庭裁判所平成27年11月27日審判は、同じSNSについて、一定程度親近感をうかがわせる内容ではあるが、不貞とまでは認定できないとして、婚姻費用の請求を認めています。
【コメント】
夫婦が別居する場合には、収入の多い方が収入の少ない方に婚姻費用を支払う必要があります(子供がいる場合は、養育費の関係で必ずしもそうはならない)。
しかし、請求側に不貞行為が認められる場合には信義則違反または権利濫用として婚姻費用の請求が認められないとするのが多くの裁判例です。
では、婚姻費用の争いで、どこまで不貞行為の認定に踏み込むのかというと、婚姻費用が日々の生活費であり早期に支払われる必要があるが、別居理由の詳細な認定をしていたのでは婚姻費用の支払いが遅れてしまい生活に支障をきたすため、離婚裁判ほどは詳細な認定をしないというのが多数の裁判例です。
その観点でこの事例をみると、SNSに具体的にどのようなことが書かれていたのか上記決定からは分かりませんが、原審と控訴審で判断が分かれていることからすれば、「不貞があったように思えるけど、確実とまではいえない」という程度の証拠だったのでしょう。
そうすると、そのような微妙な証拠に基づいて生活費を止めてしまっていいのか疑問です。
もっとも、一度浮気をして、それを許されておきながら、再度別の男と浮気をうかがわせるやりとりをしている人物の生活費を、浮気をされた夫に支払うように命じるのは酷だというのは理解できますし、たぶん大阪高裁の裁判官もそのような心情になったのでしょうが・・・
なお、上記決定を見ると証拠はSNSだけのようですので、SNSでどういうやりとりがあれば、裁判官は不貞を認めるのか興味がありますが、今のところ、どのような内容かは分かりません。
【関連コラム】
・有責配偶者からの婚姻費用請求が制限される場合
・コラム目次ー男女問題を争点ごとに詳しく解説-
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。