有責配偶者からの婚姻費用請求が制限される場合
有責配偶者(離婚の原因を作った方)が、勝手に家を出て行きながら婚姻費用を支払うように請求してくる場合があります。
このような有責配偶者からの婚姻費用の支払い請求は認められるのでしょうか?
1 有責配偶者からの婚姻費用分担請求は原則として認められない
有責配偶者から婚姻費用分担請求がなされた場合、裁判所は、信義誠実の原則に違反する(民法1条2項)、または、権利の濫用(民法1条3項)として、原則として婚姻費用の請求を認めません。
ただし、婚姻費用は、請求者自身の生活費と請求者と一緒に生活をする子供の生活費(養育費)が含まれています。
ですから、有責配偶者が子供を連れて出て行ったような場合には、子供には何の責任もないので、養育費相当額の婚姻費用は認められることになります。
2 有責であることの証明は義務者が負う
有責配偶者の婚姻費用分担請求は原則として認められませんが、請求者が有責だと証明できるかどうかは別問題です。
請求されている側は、請求している側が有責配偶者なんだということを証明する必要があります。
しかも、婚姻費用は、日々の生活費ですから、早期に解決しないと生活ができないということになりかねません。
ですから、相手の有責性について微妙だから、証人尋問をして・・・などと、厳密に有責性を判断することは想定されていません。
あくまでも、生活費なので早期に解決する必要があるということが優先されるため、有責配偶者からの請求として婚姻費用を制限できるのは、有責性についての明確な証拠が提出された場合に限ります。
たとえば、相手がラブホテルに入っていく写真があり不貞行為が間違いないといえる場合や、相手自身が不貞行為を認めている場合、暴力が離婚原因で、当時、警察が介入し、診断書もあるような場合に限られます。
3 裁判例
《東京家庭裁判所平成20年7月31日審判》
「別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというべきところ、申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって、このような場合にあっては、申立人は、自身の生活費に当る分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず、ただ同居の未成年の子の実質的監護費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である」
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。