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離婚で兄弟姉妹を別々に引き取った場合の養育費・婚姻費用

離婚または別居にあたって夫婦で兄弟姉妹を別々に引き取った場合の養育費・婚姻費用はどうなるのでしょうか?

多くの裁判例では、以下の方法により計算されているので、以下の順に説明します。

1 子供を別々に引き取っている場合の養育費の計算方法
⑴ 養育費算定表を利用した計算方法
⑵ 標準算定式を応用した計算方法
2 子どもを別々に引き取っている場合の婚姻費用の計算方法
3 実は理論的には完全に解決していないという話

1 子供を別々に引き取っている場合の養育費の計算方法

⑴ 養育費算定表を利用した計算方法

厳密に計算するには不向きですが、養育費算定表に当てはまる家族構成(子供が3人以下、収入が2000万円(自営業の場合1576万円)以下)の場合、養育費算定表を利用し簡易に計算できます。

この方法の場合、まず、収入が多い方を義務者、少ない方を権利者と考えて、子供全員分の養育費を算出します。

次に、子供全員の養育費のうち、権利者が引き取った子供の生活費が何割かを、生活費指数を利用して計算します。

生活費指数とは、大人の生活費を100とした場合に子供の生活費がどれくらいかかるかの割合です。

現在の養育費算定表では、政府統計をもとに14歳以下が6215歳以上が85とされています。
*詳細は、養育費の計算をご覧ください。

具体的には、以下の通りとなります。

養育費=子供全員の養育費×(権利者が育てている子供の生活費指数)/(全ての子供の生活費指数の合計)

具体的に考えてみましょう。

夫が年収600万円、妻が年収300万円、子供が15歳1人(夫側)、12歳1人(妻側)という状況で離婚するとします。

この場合、妻が夫に対して請求できる養育費を計算するには、養育費算定表の「子2人表(第1子15~19歳、第2子0~14歳)」の該当年収のところを見ます。

すると、月8~10万円の枠の下ぎりぎりのところなので、月8万円程度が仮に子供全員を妻が引き取った場合の養育費です。

このうち、実際に妻が引き取る子供は下の子だけなので、上記の式に当てはめると以下のようになります。

養育費=80,000円×62/(62+85)=33,742円

これが、妻が夫に対し請求できる養育費の金額となります。

なお、裁判所が決める場合は、キリのいい数字にされるので、3万円か3万5000円でしょう。

⑵ 標準算定式を応用した計算方法

養育費算定表より緻密に計算したい場合や、算定表に当てはまらない場合は、標準算定式を応用して、以下の①~⑤のステップで計算します。

標準算定式について、をご覧ください。

まず、①父親の基礎収入②母親の基礎収入を算出します。

基礎収入の算出方法は、養育費の計算のページをご確認下さい。

次に、子供の生活費はいくらが適切かを計算します。

具体的には次のとおりです。

③子供全員の生活費=義務者の基礎収入×子供全員の生活費指数/(支払い義務者の生活費指数+子供全員の生活費指数)

生活費指数とは、上記養育費算定表のところでも説明した通り、大人の生活費を100とした場合に子供の生活費の割合で、14歳以下が62、15歳以上が85です。

上記は、子供の生活費を義務者が全て負担した場合を想定しているので、子供の生活費を権利者と義務者で案分する場合を計算します。

具体的には次の通りです。

④ ③のうち義務者が負担すべき金額=③×義務者の基礎収入/(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

この金額は子供全員分ですから、権利者が養育している子の分を算出します。

⑤ 権利者監護の子に対する養育費=④×権利者監護の子の生活費指数/子全員の生活費指数

この金額は年額のため、12で割ると1カ月当たりの金額となります。

 

具体的金額を、先ほどと同じ、夫が年収600万円、妻が年収300万円、子供が15歳1人(夫側)、12歳1人(妻側)という状況で離婚する場合について計算してみましょう。

① 父親の基礎収入=600万円×41%=246万円

② 母親の基礎収入=300万円×42%=126万円

③ 子供全員の生活費=246万円×(62+85)/(100+62+85)≒146万4049円

④ うち義務者が負担すべき金額=146万4049円×246万円/(246万円+126万円)≒96万8161円

⑤ 権利者監護の子に対する養育費=96万8161円×62/(62+85)=40万8340円

月額=40万8340円÷12=3万4028円

となり、上記⑴の計算方法とほぼ同じとなりました。

 

2 婚姻費用の計算方法

兄弟姉妹を夫婦で別々に監護する場合の婚姻費用については、夫あるいは妻の生活費指数が絡む関係上、婚姻費用算定表から算出するのが困難なので、標準算定式を応用して次の①~④のステップで計算します。

まず、①父親の基礎収入、②母親の基礎収入を算出します。

基礎収入については、婚姻費用の計算または養育費の計算のページご覧ください。

次に、権利者世帯に割り振られる婚姻費用を計算します。

具体的には以下の通りとなります。

③ 権利者世帯に割り振られる婚姻費用=(①+②)×請求者世帯の生活費指数/全員の生活費指数

生活費指数は、大人が100、15歳以上の子は85、14歳以下の子は62です。

この算出された権利者世帯の婚姻費用から請求者自身の基礎収入を差し引くと婚姻費用が算出できます。

具体的には以下の通りです。

④ 義務者が請求者に支払うべき婚姻費用=③-②

算出される金額は年額なので、1か月当たりの場合は12で割ります。

 

具体的に考えてみましょう。

先ほどと同じ、夫が年収600万円、妻が年収300万円、子供が15歳1人(夫側)、12歳1人(妻側)という状況で妻側が婚姻費用を請求したとします。

① 夫の基礎収入=246万円

② 妻の基礎収入=126万円

③ 妻に割り当てられる婚姻費用=(246万円+126万円)×(62+100)/(62+85+100×2)≒173万6715円

④ 婚姻費用=173万6715円-126万円=47万6715円

月額≒3万9726円

となります。

 

3 実は理論的には完全に解決していないという話

裁判例は上記のとおり計算していますが、よく考えると上記の方法は義務者の収入を子供たちにどう振り分けるかという考え方がベースになっていて、権利者の収入を振り分けることは考えられていません。

理論的には、上記と同じ計算を権利者の収入バージョンで計算し、義務者の収入振り分けバージョンの結果と相殺することになると思うのですが、そのような裁判例を私は見たことがありません。

書籍では、私と同じ疑問点を指摘しているものがありますが、少なくとも裁判実務としては一般的ではありません。

 

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