離婚慰謝料や財産分与などの請求期限は?
離婚にあたって慰謝料を請求したい、財産分与を請求したい、でも、離婚を優先したいから、それらは後から解決しようとしたら事項になっていたというご相談があります。
離婚と同時に慰謝料や財産分与を請求する場合は心配ありませんが、先に離婚をして、その後に慰謝料や財産分与を請求する場合は、時効や除斥期間などの請求権の消滅に注意してください。
以下では、請求権ごとにいつ権利が消滅するのか解説します。
1 慰謝料の請求期限
離婚の原因が相手にあるという場合、相手に対して離婚慰謝料を請求することができます。
この慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)の一種です。
交通事故でケガをした場合に加害者に請求するのと同じと考えてください。
この不法行為に基づく損害賠償請求は、以下の事情により事項となるとされています。
民法724条
・損害及び加害者を知った時から三年間行使しないと。
・不法行為の時から二十年間行使しないとき
ですから、離婚から3年で元配偶者への慰謝料請求権は時効消滅します。
ただし、離婚原因が浮気で、浮気相手にも慰謝料を請求したいという場合は、「加害者を知ったときから3年」なので、浮気相手が誰なのか最近になって分かったという場合は、離婚から3年経過していても離婚から20年以内であれば、浮気相手に対しては慰謝料を請求可能です。
なお、時効は、援用しないと効果が生じません(民法145条)。
援用とは、「時効だから払わない」と言うことです。
ですから、援用されるまでは権利があるので、3年経過後に請求しても不当な手段でない限り恐喝罪等に該当することはありません。
また、時効には、中断(民法147条)と催告(153条)という制度があります。
中断とは、①請求、②差押え等、③承認、があった場合には、時効がリセットされ、もう一度時効期間が経過しないと時効が成立しないという制度です。
ここで、「請求」は、基本的には裁判をすることです(民法149条以下)。
相手に払えと言ったり、請求書を送ったりするだけでは、ここでいう「請求」には当たらないので注意してください。
「承認」とは、相手が支払義務があることを認めることです。
たとえば、あなたが請求したのに対して、相手が「払うけれども、ちょっと待って欲しい」と言ったりすることです。
「承認」は、どんな方法でもかまいませんが、裁判になったときに証拠がないと困るので、書面にしたり、メールを保存したり、会話を録音したりする必要があります。
「催告」は、時効期間内に請求をすると6か月だけ裁判などを申立てる猶予がもらえる制度です。
催告における請求は、権利者が相手方に支払いを求めることで、上記の中段事由としての「請求」とは異なります。
たとえば、平成27年3月31日が離婚から3年目だとします。
この場合、3月27日に時効が迫っていることに気づいて、相手に請求書を送り受取ると、3月31日を経過しても、請求してから6か月後である9月27日までに裁判を起こせば、時効が成立しなかったことになります。
2 財産分与の請求期限
財産分与も離婚後に請求することができます。
財産分与の請求期限は、離婚をしてから2年です(民法768条2項ただし書き)。
この期限は、除斥期間といい、時効のように当事者の行為によって延びたりすることはなく、2年で当然に請求権がなくなります。
ですから、離婚から2年を経過する前に話し合いで解決することができそうにない場合には、財産分与の調停を申立てる必要があります。
3 年金分割の請求期限
年金分割についての請求期限も離婚から2年です(厚生年金保険法78条の14)。
こちらも財産分与と同様に除斥期間で、延長されることはありません。
ですから、離婚から2年を経過する前に話し合いで解決することができそうにない場合には、年金分割の調停を申立てる必要があります。
4 養育費の請求期限
養育費については、「離婚から●年以内に請求しなければならない」という制限はありません。
養育費は、子供の日々の生活に必要なものですから、離婚から何年経っていても、必要なときに請求することができます。
もっとも、過去の養育費は、原則として請求することができません。
なぜなら、養育費は、子供の日々の生活費ですから、請求する前については、とりあえず生活できている以上、支払わないといけない養育費はないという考えられるからです。
なお、過去に取り決めた養育費の支払いがないので請求したいという場合は、取り決めた各支払日から5年で順に時効消滅していきます。
5 婚姻費用の請求期限
婚姻費用も日々の生活費ですので、離婚後に過去の婚姻費用だけを請求することはできません。
ただし、財産分与を決めるときの事情として、過去の婚姻費用が考慮されることがあるので、財産分与の請求の際に主張してください。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。