面会交流が制限される場合
現在では、面会交流(面接交渉)は、子供の健全な成長のために重要なものと考えられており、原則として実施されるのが好ましいと考えられています。
近年の家庭裁判所は、この原則を推し進めて、面会を拒否する側が、面会をすることが子供に取って不利益であるということを具体的に証明しなければならないという運用になってきています。
*最近(2022年時点)は、また運用が変わってきており、以前ほど面会を強要する感じではなくなってきています。
このため、面会を拒否する監護親を、裁判所が強引に説得しようとしてトラブルになることもあります。
実際に、私は、裁判官に、「面会を拒否すれば、親権が相手方になる可能性もありますよ」と言われたこともあります。
こんな強迫じみたことを言っても親子関係が上手くいくことなどないと思うのですが・・・
上記運用の是非はともかく、裁判所がそのような運用をする以上、面会を拒否したいならば、面会交流をすることが子供の健全な成長の観点から好ましくないということを主張・立証する必要があります。
過去に面会交流を制限すべきかが争われた場合の主な争点として、以下のようなものがあります。
1 子供を連れ去るおそれがある場合
子供の連れ去りは、子供を無理矢理、それまでの環境から引き離すこととなるため、子供の健全な成長には悪影響と考えられています。
したがって、過去に子供を連れ去ったことがあるなど、子供の連れ去りの可能性が高い場合には、面会交流が制限されます。
もっとも、連れ去りの危険性の程度に応じて、全面的に認めないものから、面会交流を支援しているNPOなどの第三者機関を関与させたうえでの面会交流、子供を育てている方の親も立ち会いのうえでの短時間の面会交流などの方法がとられることがあります。
2 子供を虐待するおそれがある場合
子供を虐待する行為が、子供の成長に良いはずがありませんから、過去に虐待歴があり、面会交流時にも虐待するおそれがある場合、あるいは、過去の虐待行為で子供が恐怖心を感じている場合には、面会交流は制限されます。
もっとも、面会交流を認めさせたくないがために、ありもしない虐待が主張されることがあるため、その判断は慎重になされます。
虐待を主張する側は、過去に警察や児童相談所が関与したことがあることを示す証拠、医師の診断書、ケガなどの写真を提出することが望ましいでしょう。
また、家庭裁判所の調査官が、子供に面会するなどの方法で調査をすることもあります。
なお、DV防止法では、直接の暴力以外の物を壊すなどの行為もDVにあたるとしていますが、子供との面会に関していえば、非監護親が過去に怒りにまかせて物を壊すなどの行為を行っていたことは重視されていないように感じます。
3 DVがあった場合
子供ではなく、配偶者に対して暴力があった場合でも、子供の面前での暴力行為が子供の健全な成長に不適切であること、子供の年齢によっては、面会交流に元配偶者の協力が必要な場合もあり、DV被害者にそのような協力を求めるのが酷であることから、面会交流が制限されることがあります。
こちらも虐待の場合と同様に、ありもしないDVが主張されることがあるため、主張する側は、しっかりと証拠を示すことが重要になります。
また、家庭裁判所調査官などによる調査が行われることもあります。
なお、子供に対する虐待の場合と違い、直接の被害者でない子供は、相手に会いたがることがあります。
そのような場合、子供を育てている方の親が拒否した場合でも、子供の年齢なども考慮し、両親が直接接触しないよう配慮したうえで、面会交流が認められることもあります。
*最近担当した事件で、裁判官が配偶者へのDVを全く考慮してくれないケースがありました。
4 子供の拒絶の意思が強い場合
子供がどうしても会いたくないといっている場合に、無理矢理会わせるのは好ましくないため、面会交流が制限されることがあります。
法律上は、子供が15歳以上の場合は、その意思を尊重しなければならないことになっていますが、実際には12歳くらいから子供の意向が尊重されます。
もっとも、子供が監護親に気をつかって「会いたい」と言い出せない場合や、子供を育てている方の親が、相手の悪口を言っている場合(無意識で言っているケースもあります)、極端な場合には、「裁判所の人に聞かれたら「会いたくない」と言いなさい」と教えているケースがあるため、家庭裁判所調査官による調査などで、子供の意思を慎重に判断したうえで決定されます。
なお、最近担当した事件で、調査官調査の内容が、事前に聞いていた子供の意思と違うので、調査結果についてたずねてみたら、調査官に誘導されたうえ、誘導部分を省略して報告書が書かれており、子供達の本意とかけ離れた報告書が作られたことがありました。
5 再婚は?
面会交流を拒否する理由としてよくあるのが、自分自身が再婚したから、あるいは、相手が再婚したからというものです。
しかし、親の再婚は原則として面会交流を制限する理由とはなりません。
再婚しても親子であるという関係は変わらないからです。
もっとも、親の再婚について子供が大きく影響を受けて動揺し、面会交流を望まなくなるなどといったことがあります。
このような場合には、子供の意思も調査したうえで、一定程度面会交流が制限されることもあります。
6 子供を育てている側の拒絶は?
意外と多いのが、「とにかく嫌だ」というものです。
このような理由で面会交流を制限するのは許されないのが原則です。
しかし、乳幼児の場合には、面会交流に面倒を見ている方の親の協力が必要なこと、無理矢理会わせた場合に、その後の親子関係に軋轢が生じること(極端な場合には虐待につながること)、などから、あまりにも拒否感が強い場合には、「当面の間は写真やビデオを送付することとする」などとされることが以前はありました。
最近の裁判所の傾向では、このような理由では面会拒否の理由にはならないと判断される可能性があります。
【関連コラム】
・面会交流について諸般の事情を総合考慮して判断するとした判決
・面会交流が父母の不仲を理由に制限された裁判例
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。