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相手が出ていって別居になっているけれど、現在住んでいる家の名義は相手のものなので、「出て行け」と言われたら、出ていかないといけないのでしょうか?
結論としては、原則として出て行く必要はありません。
もっとも、具体的事情によっては出て行かざるを得な場合もあります。
以下具体的に検討しましょう。
民法752条には、夫婦扶助義務が定められています。
夫婦はお互いに協力し、助け合いなさいという規定です。
これは、夫婦が険悪な関係になった場合でも同じで、原則として離婚が成立するまで扶助義務が発生します。
そうすると、相手を家から追い出すという行為は、この夫婦扶助義務に反するので、相手に出て行けと言われても出て行く必要はありません。
このようなケースで、相手から、「自宅を売る」と言われるケースがあります。
確かに、実際に第三者に売られてしまった場合には、購入した第三者には夫婦の問題など関係ないことですから、明け渡しの義務を負います。
しかし、普通は住人が出て行かないと言っている家を買う人はいません。
いるとすれば、立ち退かせるための手間と費用を差し引いた、相場よりはるかに安い金額で、かつ、そんなトラブルを何とも思わないような人たちです。
あなたの配偶者が、そこまでするような人であれば明け渡しも検討せざるを得ませんが、通常は考えなくていいでしょう。
そのような特殊なケース以外で問題になるとすれば、自宅が相手の特有財産(相続や独身時に購入したものなど)で、かつ、相手を暴力で追い出した、あるいは、出て行かざるを得なくしたような場合です。
このような場合には、家に残った方の夫婦として自宅を利用できるという主張は権利の濫用(民法1条3項)として認められない可能性があります。
自宅が賃貸の場合、夫婦間の問題と貸主との関係で分けて考える必要があります。
賃貸借契約書に名前を書いている方が、「俺が契約者だから出ていけ」と言っても、夫婦扶助義務があるので追い出すことはできません。
しかし、賃貸借契約を解除してしまうと、貸主は、住んでいる人に、「勝手に家を使うな。出ていけ」と言えるので、出て行かざるを得ません。
というのは、理論上の話で、現実には住んでいる人間を強制的に出て行かせるのは大変な手間と時間と費用がかかります。
また、保証人や保証会社がついている場合、貸主が保証人に賃料相当の損害金を請求し、保証人が賃貸借契約上の借主に請求し、結局は追い出そうとした方が損害金を負担しなければならないという結果にもなりかねません。
ですから、賃貸借の場合でも、相手を追い出すのは困難ということになります。
相手の親が建てた家に無償で住まわせてもらっているという場合がありますが、そのような場合で、相手の親に退去を命じられた場合はどうでしょうか?
このような場合は、残念ながら出て行く必要があります。
なぜなら、この場合は、相手の親は、自身の子供のために家を無償提供しているのであって、夫婦関係が険悪になって自身の子供が家を出るに至っているような場合にまで、子供の配偶者に無料で家を貸す義務はないからです。
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