離婚したくない場合に弁護士に依頼するべきか?
ときどき、「離婚を求められていますが、私は離婚したくありません」という相談を受けます。
この「離婚したくない」というのが、「夫婦関係を修復したい」という意味と、「法律上離婚にならなければいい」という意味とでは、弁護士に依頼すべきかどうかが変わってきます。
1 夫婦関係を修復したい場合
「離婚したくない」というのが、「夫婦関係を修復したい」という意味の時は、弁護士としては非常に困ってしまいます。
なぜなら、このような場合は、もっぱらお互いの気持ちの問題で、法律問題ではありません。
そして、弁護士は、法律のプロですが、夫婦のこじれた気持ちをほぐすプロではありません。
もちろん、多くの離婚問題を見てきてますから「そんなことをすると、余計こじれますよ」程度のことは言えると思いますが、私は、お金を払ってもらえるほどの有効なアドバイスをする自信はありません。
また、弁護士が入ったことで、かえって相手の態度がかたくなになってしまうこともあるので、基本的には弁護士に依頼することはお勧めしません。
もっとも、相手が全く話し合いに応じてくれないとか、一方的に出て行って居場所が分からないという場合には、弁護士に依頼することも検討して良いと思います。
このような場合は、弁護士であれば住民票を取ることが出来るので、居場所を探し出し、話合いをしたい旨の連絡をすることができます。
また、裁判所で夫婦関係調整調停(円満)という手続をすることもできます。
相手の住所地を管轄する家庭裁判所で、夫婦関係調整調停(円満)の申立をすると、裁判所から相手に調停の呼出状が届きます。
そして、決められた調停期日に裁判所で調停委員の方に間に入ってもらいながら話合いをします。
ただし、裁判所から呼出状が届くことは、弁護士から通知が届く以上にインパクトがあるので、この方法は最終手段と考えておいた方が良いでしょう。
2 相手からの離婚請求を拒絶出来れば良い場合
「離婚したくない」というのが、「法律上離婚にならなければいい」という意味であれば、弁護士に依頼することも検討してよいと思います。
なぜなら、話合いでも、調停でも離婚の合意ができなければ、裁判で離婚を認めるかどうか決めることになりますが、裁判上の離婚が認められる理由は、民法で決まっているからです。
ですから、このような相談であれば、「法律上の離婚理由がある」または「法律上の離婚理由はない」とうアドバイスができます(もちろん微妙なケースもありますが)。
そして、「法律上の離婚理由はない」といえる場合には、相手の主張に対する反論等をアドバイスします。
ここで難しいのが、どの程度相手に不利益なことを言うかです。
こちらとしては、法律上の離婚理由がないことさえいえれば良いので、あまり相手を非難するようなことは言わない方が良いと考えます。
裁判例でも「被告は、その本人尋問において、原告との婚姻の継続を希望する旨表明しているが、その理由は多分に打算的であり、本件訴訟において原告を激しく非難している事実に鑑みると、原告に対する信頼や愛情を窺うことはできないのであって、真に婚姻を継続させようとの意思があるとは思われない」として、相手を強く非難したことを理由の一つとして離婚を認められてしまったものがあります。
なお、残念ながら「法律上の離婚理由がある」と考えられる場合には、今後考えられる展開についてアドバイスします。
そのなかで、あなたが最も不利益が少ないと思う方法を選択してください。
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*男女問題コラム目次
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。