保険金の財産分与
相手が貯蓄型の保険に入っていた場合や、何らかの保険金が支払われた場合、それが財産分与の対象になるでしょうか?
いか、保険の内容に応じて説明します。
1 保険に入っていて満期前の場合
生命保険などで貯蓄性のある保険に入っている場合、解約返戻金(かいやくへんれいきん)というものが発生します。
「今解約すると●●円戻りますよ」というものです。
このような保険の場合、婚姻期間中に支払われた掛金は、夫婦のお金から支払われたと考えられるので、解約返戻金も婚姻期間に応じて分割されることになります。
例えば、保険加入15年、婚姻期間10年、解約返戻金600万円だとします。
すると、600万円×10年/15年=400万円が共有財産として財産分与の対象になります。
ですから、財産分与の割外が2分の1とすると、200万円の支払を求めることができることになります。
2 満期になって保険金が支払われた場合
離婚前に保険が満期になって支払われた場合も、上記1の解約返戻金の場合と同じように、支払われた保険金を婚姻期間に応じて分けることになります。
保険金が離婚直前に支払われれば問題は起きないのですが、保険金が支払われてから離婚まで期間があり、その間に使ってしまって減ったということがあります。
その場合は、使ってしまったお金は、もう無くなっているため、原則として減った金額を基準に分けることになります。
3 事故などで保険金が支払われた場合
結婚している間に交通事故などにあい、高額の保険金の受取りがあり、その後離婚という場合、受取った保険金が財産分与の対象になるかが問題にあることがあります。
そのようなケースについて、2つの異なる考え方の裁判例があります。
・慰謝料については財産分与の対象とならないが、逸失利益については財産分与の対象となるとした裁判例(大阪高等裁判所平成17年6月9日決定)
・自賠責保険について、全額を財産分与の対象とした裁判例(大阪地方裁判所昭和62年11月16日判決)。
慰謝料とは、そのケガを負ったことによる精神的な苦痛をお金にしたものですから、夫婦で協力して作った財産と同じようには考えられないのではないかと思います。
他方で、逸失利益とは、ケガをしなければ得られた(仕事で稼げた)であろうお金ですから、普通に働いて得たお金を貯金していたのと同様に考えて良いのではないかと思います。
ですから、前者の大阪高裁の決定の考え方が基本と考えておいて良いでしょう。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。