長期間の別居を理由とする離婚
浮気や暴力など明確な離婚理由があれば、それを主張すればよいのですが、性格の不一致などの理由で別居に至った場合や浮気や暴力が原因だけれども証拠がないような場合は、長期間の別居を理由に離婚を請求することになります。
では、どの程度の期間別居をしていれば、離婚が認められるかですが、明確な基準はありません。
同居期間と別居期間との対比、別居に至る経緯などを総合して、婚姻関係が破綻(はたん)しているといえるほど長期の別居かどうか判断されます。
裁判例をみると、5年程度の別居期間から離婚を認めているものが多くなっていますが、婚姻期間が短いような場合に3年程度で離婚を認めているものもあります。
平成8年の民法改正案では、5年間の合理的理由のない別居が離婚理由となっていましたが、別居にいたる事情は様々であり、画一的に5年とするのは問題があるという理由で改正には至りませんでした。
しかし、民法改正案には多くの法律家が関わっていることから、多くの法律家は5年程度を一応の目安と考えているのではないかと思います。
また、先日、東京家庭裁判所の裁判官と話す機会がありましたが、その裁判官によれば、5年くらい別居していると一般的には長期間とえいるかな、別居期間が3年を超える場合は他の事情も考慮して離婚を認めることもあるかな、という感じだとおっしゃっていました。
以上は、どちらか一方に離婚原因となるような事情があるわけではないのに別居に至った場合ですので、たとえば浮気して出て行った方が長期間の別居を理由に離婚請求する場合には、5年程度の別居では離婚が認められないのが一般的です。
《2023.9加筆》
最近、5年より若干短めの別居で離婚が認められているように感じます(感覚的なものです)。
5年より短い期間での離婚を認める裁判例では、「関係修復のために何かした形跡がない」と判決文で指摘があったり、和解期日で同様の指摘を多く受けるようになりました。
今後は、離婚したくないという主張をする場合には、単に離婚理由がないという主張だけでは足りず、たとえ無駄だと分かっていても円満調停を申立てる等の目に見える形での関係修復の試みをしておくことが必要になりそうです。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。