慰謝料を請求された場合に考えること
浮気がばれたなどの理由で慰謝料を請求される側のご相談を受けることもあります。
その場合、ある程度の金額なら支払った方が良いとアドバイスすることがありますが、この「ある程度の金額」は、裁判で想定される慰謝料額ではありません。
慰謝料を請求された場合には、以下事情を総合考慮して検討してください。
1 裁判で想定される慰謝料額
「裁判で想定される慰謝料額」が必ずしも和解の際の適切な金額ではありませんが、裁判で想定される慰謝料額が重要な要素であることに変わりはありません。
まずは、裁判になった場合にどうなるかを考えましょう。
2 裁判になった場合に相手の損害として認められる弁護士費用など
どういう事情で慰謝料を請求されたのかにもよりますが、多くの場合、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)の一内容として請求されているでしょう。
その場合、損害の1割程度の金額が弁護士費用として認められます。
例えば、慰謝料300万円の場合、30万円程度の弁護士費用が損害として認められます。
ですから、仮に上記1で想定した慰謝料額300万円でも、実際には330万円を支払う必要が出てきます。
また、場合によっては相手が使った探偵費用が損害として認められる場合もあります。
3 自分自身の弁護士費用
裁判になった場合、多くの方は弁護士を依頼すると思います。
そうすると、自分自身の弁護士を依頼する費用を考えないといけません。
弁護士費用は自由化されていますし、多くの場合は、得られた利益を基準としていますが、総額30万円以下で依頼を受ける弁護士は少ないのではないかと思います。
4 支払うことになる婚姻費用の総額
例えば、婚姻費用として相手に毎月5万円払わないといけない場合、離婚が1年先になるだけで60万円支払額が増えます。
協議離婚の話合い・調停・裁判で合計3年かかるとすると180万円です。
この分を予想される判決内容に上積みして支払う代わりに離婚に応じてもらえないかを考える必要があります。
5 時間の浪費や精神衛生上の問題
ご自身で対応される場合は、自分で法律知識を得て、相手にどう回答するか考えないといけません。
弁護士に依頼した場合でも、弁護士と打ち合わせをする時間が必要です。
また、裁判になれば本人尋問のために裁判所に1度は行く必要があるかもしれません。
さらに、裁判になった場合、判決まで平均1年かかりますから、1年間もやもやした気持ちでいなければなりません。
これらをすぐに解決できるなら、いくら支払うかということとも考える必要があります。
6 他の優先すべき利益の有無
問題が、純粋に金額だけの問題であれば良いのですが、場合によってはお金に換えられないものもあるはずです。
よくあるのが、浮気をした方から離婚を求める場合です。
浮気をした方を有責配偶者といいますが、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません(詳しくは「浮気した方から離婚請求」をご覧ください)。
そうすると、有責配偶者の方が離婚したい場合は、ある程度相手の言い値を支払わざるを得ないことになります。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。