離婚調停を有利に進めるために大切なこと
1 離婚調停とは何か?
離婚調停を有利に進めるためには、離婚調停とは何かを知っておかなければなりません。
では、離婚調停とは何でしょうか?
離婚調停とは、裁判所で行う話し合いです。
離婚調停を申立てると、裁判所の指定する期日に裁判所に行き、原則として双方立ち会いで手続の説明がされます(東京家庭裁判所の場合)。
その後、申立人⇒相手方の順で、30分程度、調停委員に事情を話し、調停委員が相手に言い分を伝えて、両者の調整をしていくことになります。
調停委員は、両者の間を調整したり、説得しようとすることはありますが、調停委員によって勝手に離婚が決められることはありません。
もう一度言います。
離婚調停は、裁判所で行う話し合いです。
とりあえず、そのことを知っていただければ大丈夫ですが、調停の具体的な流れが知りたい方は、当サイトの「離婚調停の流れ」もご覧ください。
2 離婚調停を有利に進めるために最も大切なことは?
離婚調停を有利に進めるために最も大切なことは、調停が不成立になってもかまわないという覚悟です。
離婚調停を有利に進めるために最も大切なことは、調停委員を味方につけることだと書いてあるサイトがあります。
確かに、それも重要なことだと思います。
しかし、離婚調停は、裁判所で行う話し合いに過ぎないのです。
ですから、調停委員が、どんなに相手に肩入れしようが、あなたが「嫌です」と言えば、調停が成立することはありません。
逆に、調停委員が、あなた寄りの意見だとしても、相手が「嫌です」と言えば、あなたの主張が通ることはありません。
そのとき、あなたがどうしても調停を成立させたいと思っていたならば、相手に譲歩するしかないのです。
ですから、離婚調停で最も大切なことは、調停が不成立になってもかまわないという覚悟なのです。
3 調停の準備
⑴ 証拠の収集と弁護士への相談
離婚調停を有利に進めるために最も大切なことが、調停が不成立になってもかまわないという覚悟だとすれば、不成立になった場合はどうするかを考えておく必要があります。
相手の根負けをねらって調停を起こすような場合は別ですが、通常は、調停が不成立になると裁判(または審判)になります。
そうだとすれば、裁判になったときに勝てるだけの証拠を持っている必要があります。
ここで失敗しやすいのが、自分では確実と思っている証拠が、法的にはほとんど意味がないというケースです。
このような失敗を防ぐために、一度は弁護士に相談しておきましょう。
また、自分では認められないと思っていたものが、法的には認められる主張であったり、認められると思っていたのが、法的には認められないということもあるので、弁護士に相談する場合には、「無理かな?」と思っても、とりあえず質問しておきましょう。
⑵ 主張内容の優先度の決定
離婚調停は、裁判所で行う話し合いです。
話し合いとは、あなたの主張と相手の主張を調整し、よりよい解決を目指すことです。
ですから、あなたの主張だけが通ることは、ほとんどありません。
相手があなたの言いなりになるのなら、調停など起こす必要はないのですから。
そうだとすれば、あなたは、どうしても勝ち取りたいものは何か、場合によっては譲歩してもいいものは何かを決めておかなければなりません。
あなたにとって何が最も重要なことか、じっくりと考え、決断してください。
そして、決断したことは書き留めておいてください。
書き留めたものは、何度でも読み返してください。
調停での雰囲気に流されて、重大な決断で失敗しないために。
また、ここであなたが「絶対に譲れない」と決めたことについて、相手も譲歩しないならば、調停をやめて裁判にせざるを得ません。
そういう意味では、主張内容の優先度の整理は、調停の引き際を決めるという意味も持ちます。
⑶ 調停で主張する内容の整理
調停では、調停委員を通じて相手を説得することになります。
そのためには、30分のなかで、調停委員に事情を理解してもらわなくてはなりません。
しかし、自分のことを他人に説明するのは意外と難しいものです。
自分では丁寧に説明しているつもりでも、主語が抜けていて伝わらない、自分のなかで当然と思っていることが前提として付け足されていて、そのような前提を知らない相手には伝わらないということはよくあることです。
ですから、調停委員に理解してもらえるように、時系列に沿って、順序立てて事実を整理しておきましょう。
このとき、事実なのか、あなたの感情なのか区別するように意識してください。
感情は大切なものですが、感情だけ伝えられても何を言っているのか分かりません。
4 調停の当日
調停で最も大事なことは、調停が不成立になってもかまわないという覚悟だと書きましたが、調停であなたに有利に解決するならば、それに越したことはありません。
では、調停をあなたに有利に、少なくとも不利にならないようにするにはどうすればいいでしょうか?
調停は、調停委員が主導していきます。
そして、調停委員は、建前上は公平・中立となっていますが、人間である以上、完全に公平中立というわけにはいきません。
なかには、偏見としか思えない考えを持った方もいれば、説得しやすそうな方を説得する方もいるのが現実です。
そうだとすれば、調停委員に、なるべく良い印象を持ってもらう必要があります。
では、どうすれば調停委員はあなたの味方になってくれるのでしょうか?
細かな交渉テクニックは、本が何冊もかけるくらいありますが、付け焼き刃のテクニックはかえって不自然なものとなってしまいます。
まずは、次の基本原則を守ってください。
① 見た目は大切!
人間は、見た目で相手がどんな人間が推測します。
ですから、なるべく誠実に見える格好をしましょう。
具体的には、ダークスーツで、装飾品は最低限度にしておけば間違いないでしょう
② 誠実に!
約束を守らない人間、嘘をつく人間が信用されないのは言うまでもありません。
ですから、たとえ相手が嘘をついても、証拠を隠しても、あなたは誠実に対応してください。
決して、相手に対抗して、あなたも嘘をついたりしてはいけません。
なお、嘘をついたり、証拠を隠滅したりしてはいけませんが、不利になりそうなものも最初から全部出せというわけではありませんから、その証拠を出す必要があるのかどうかはよく考えてください。
③ 感情的にならない!
ときどき、調停中に興奮して怒り出したり、泣き出したりする人がいます。
しかし、すぐに感情的になる人間は信用されません。
ただし、女性に限り、少々涙を見せるだけならばプラスになることがあるようです。
④ 感情に訴える!
人間は、感情により行動する動物です。
そして、感情的に結論を決め、その結論にあうような理由を考えるようにできています。
ですから、調停委員が共感できるような説明を心がけてください。
共感を得るのに法律は関係ありません。
あなたが、離婚原因となった相手の行動についてつらかったこと、子供に対する思いなどを伝えてください。
相手が嘘をついてきた場合には、そのことが残念であること、憤りを感じることは伝えてください。
ただし、上記の調停の準備でも書いたとおり、感情だけを伝えたのでは何のことか分かりませんから、事実を伝えた上で、そのことについてどう感じたかを伝えてください。
⑤ 権威づけをする!
調停委員は、法律の専門家ではありません。
ですから、あなたに有利な裁判例などを提出すれば、あなたの方が正しいと思ってくれやすいでしょう。
もちろん、弁護士が説明するのも効果的です。
⑥ その主張は本当に対立するのか考える!
調停で相手の主張が分かったら、相手を説得しようとしたり、あなたが譲歩しようとしたりする前に、一見対立してそうなお互いの主張について、本当に対立するのか考えてみましょう。
その主張の真の意味を考えれば、本当は対立していないこともあります。
例えば、お互いに子供の親権を主張しているとします。
一見双方の主張は対立しますが、父親の真の望みは「名前を継いでくれること」で、母親は「とにかく一緒にいたい」かもしれません。
そうであれば、父親が親権者となり、母親が監護権者となれば解決します。
また、あなたが離婚を求めているのに、相手が離婚を拒否しているとします。
これも一見対立します。
しかし、相手が離婚を拒否している理由が、あなたとやり直したいからではなく、今後の生活について経済的不安があるということであれば、お金で解決することができます。
⑦ 最初は小さな合意から!
一番大きな問題を最初に話しあっても、なかなか話は進みません。
とりあえず解決できそうな小さな問題について合意できないか検討しましょう。
いくつか小さな合意ができてくると、相手は、調停を不成立にすると、その合意まで反故になるため、なんとか調停を成立させたいと考えるようになりがちです。
相手が、「なんとしてでも調停を成立させたい」と思ってくれれば、調停の主導権はあなたが握ることになります。
⑧ 想定どおりにはならないと思っておく!
書店やネット上を探せば、交渉のためのテクニックが色々と書いてあります。
有効なテクニックはありますが、絶対に上手くいく方法などありません。
そんな方法があれば、各国の超一流の交渉人が行っている外交交渉において、交渉が決裂して戦争になったりすることはありません。
超一流の交渉人でさえ交渉に失敗することはあるのです。
ですから、事前に想定していたことと違うことが起こったからといって慌てないでください。
予想外のことが起こったら、「考えたいので時間をください」と言えばいいのです。
5 弁護士に依頼すべきか?
最後に、離婚調停を弁護士に依頼すべきかどうかという問題があります。
調停は話し合いですから、弁護士をつけなくてもできますし、弁護士をつけたからといって有利に解決できるとは限りません。
しかし、調停で決着がつかない場合は、離婚訴訟になりますが、その離婚訴訟で調停時に不用意に提出した書面が自分自身の不利な証拠として提出されることがあります。
そうであれば、少なくとも離婚調停が始まる前に離婚事件の経験が豊富な弁護士に相談しておくべきです。
そのうで、自分で出来そうか判断することをお勧めします。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。