離婚調停を申立てたあとの流れ
離婚調停って、申立てたあとはどんな流れで進むのか知りたい。
そう思ってらっしゃる方のために、離婚調停申し立て後から当日の流れまでを説明します。
1 離婚調停申し立て後
離婚調停を申立てると、裁判所の混み具合にもよりますが、2~3週間ほどで裁判所から1回目の調停期日の調整の連絡があります。
その連絡で裁判所から候補日が伝えられるので、都合の良い日を選び裁判所に伝えます。
このとき、相手方の都合を考える必要はありませんが、離婚条件については合意できていないが、特段関係が悪いわけではないときは、相手方の日程ともすり合わせておいた方が、1回目の調停期日が空転せずに済みます。
調停期日は、申立から1か月半~2か月先になります。
2 調停当日、裁判所に着いたら
調停期日が決まったら、調停当日に裁判所に行きます。
服装を気にされる方もいらっしゃいますが、奇抜な服装でなければ何でも構いません。
どうしても気になる方は、本番前に一度裁判所の調停待合室に行ってみてください。
スーツ姿の方、作業着の方、Tシャツ・ジーンズの方など、色々な服装の方がいらっしゃいます。
さすがにあまりにも奇抜な格好だと調停委員に「この人大丈夫か?」と思われるかもしれませんし、洗濯していなくて匂う服は周りに迷惑なのでやめた方が良いですが、リクルートスーツのような恰好までは必要ありません。
持ち物は、メモと筆記具、スケジュール帳(携帯アプリなどでも可)、提出書類のコピーです。
なお、離婚調停では、弁護士に依頼しても原則として本人が出席する必要があります。
このとき、通常は、相手方も同じ時間に呼び出されているので、会いたくない場合は早めに行くようにしましょう。
どうしても顔を合わせたくない場合は、裁判所に対し、申立書を提出する際や、調停期日の調整の連絡の際に呼び出し時間をずらすなどの配慮を求めましょう。
ただし、ストーカー気質な相手の場合、呼び出し時間より早めに裁判所の入り口で待ち伏せをしていることがあります。
そのような相手の場合は、かなり早く裁判所に行くか、依頼した弁護士と待ち合わせをして弁護士と一緒に裁判所に向かいましょう。
裁判所に着いたあと、東京家庭裁判所では、「申立人(相手方)待合室」と書いてある部屋で待っていれば、担当の調停委員の方が呼びに来ます。
地方の裁判所では、まず家庭裁判所の受付で、離婚調停に出席するために来た旨を告げて、受付番号をもらってから待合室に行かないといけないところもあります。
よく分からなければ、とりあえず受付に行って、どうすれば良いか聞いてみましょう。
家庭裁判所の受付がどこか分からない場合、裁判所の1階に案内の係の方がいるので、その方に聞きましょう。
3 調停室でのやりとり
待合室で調停委員の方に呼ばれたら、調停室(4畳半もないくらいの小さな部屋のことが多い)に案内されるので、荷物を持ってついていきます。
調停は、基本的に男女2名の調停委員によって進められ、裁判官が出てくることは滅多にありません。
子供の親権や、面会交流が問題になっている場合には、調停委員2名に加え、裁判所調査官も同席することがあります。
調停は、原則として、申立人(30分)→相手方(30分)→申立人(30分)→相手方(30分)、の順で事情を聞かれ、申立人と相手方が顔を合わせることはありません。
なお、数年前に東京家裁が突然、両当事者立会で手続き説明と次回進行の確認をすると言い出し、トラブル続出で数年で両者立会はなくなりました。
トラブル続出なんて、容易に阻喪がつくと思うのですが・・・
1回目の調停では、まず、調停委員から手続きの説明があります。
具体的には、以下のような説明がされますが、弁護士がついている案件では省略されることもあります。
・調停は、裁判官と調停委員2名で構成する調停委員会が行うこと。
・裁判官は通常は調停の場には出てこないこと
・調停は非公開で行われ、調停委員には守秘義務があることから、話が外に漏れることはないこと
・調停は話し合いの場であり、両者の合意によって成立すること
・調停は、当事者から20~30分程度を目安に交互に話を聞いて進めていくこと
・合意ができた場合は、調停調書という書面をつくり、法的拘束力が発生すること
・合意ができない場合は、婚姻費用については自動的に審判に移行するが、離婚は別途訴訟を提起する必要があること
上記説明のあと、調停委員から申し立て内容について質問がされ、それに答える形で事情を説明していきます。
次に、相手方に交代し、申立人の主張に対してどう考えているかの聞き取りが行われます。
その後、再度申立人に交代し、相手方の考えが説明されて、申立人主張との食い違い部分や、相手方の回答を受けてどうするかなどについて話が聞かれます。
そして、再度相手方に交代し、両者の主張の相違点などを確認し、次回期日で話し合う点や提出するべき資料などの確認をし、次回の調停期日の日程調整を1回目の調停は終了となります。
2回目以降も原則として、申立人→相手方→申立人→相手方、の順で進んでいきますが、話し合いの内容によって臨機応変な対応となり、相手方からの聞き取りは先になったり、評議といって、調停委員と裁判官が調停の進め方を話し合ったり、裁判官から法的見解を聞いたり、裁判所が考える和解案を調整する時間が取られることもあります。
なお、評議が入る場合は、裁判官一人で複数の調停の対応をしている関係上、長時間待たされることもあります。
また、東京家庭裁判所では、子供に関する取り決めを内容とする調停では、初回の聞き取りのあと、裁判所作成のビデオを別室で見せられます。
そのビデオの視聴時間が来たという理由で、聞き取りが中途半端で打ち切られることがあります。
裁判所によっては、待合室でビデオが流しっぱなしになっており、待っている間に見てくださいという方式のこともあります。
4 離婚以外の争いも同時に申し立てられている時の優先順位
離婚調停では、婚姻費用分担請求調停や面会交流調停が同時に申し立てられていることが多く、それらは同じ期日で話し合いがなされます。
この場合、日々の生活費の問題である婚姻費用について最優先で話がされるのが一般的です。
次に優先されるのが、子供との面会交流です。
子供と親の交流が長期間断絶されるのはよくないという考えから、離婚より優先度が高くなります。
最後に離婚とその条件についての話し合いとなるため、1回目の調停期日では、ほとんど離婚の話し合いにならなかったということもあります。
婚姻費用や面会交流での対立が激しい場合には、2回目以降もそちらの話ばかりで、離婚の話はなされないということもあります。
5 調停を実のあるものにするために
上記の通り、調停は、調停委員からの質問に答える形で進んでいきますが、言いたいことがあるのに、調停委員が質問してくれないということがあります。
そのような場合は、自分から「●●の点も話し合いたい」などと言ってください。
なお、調停委員は、このとき話したことを相手方に一言一句伝える訳ではないため、どうしても伝えて欲しいことがあれば、「●●のことは必ず伝えて欲しい」と言いましょう。
また、調停委員がどうも正確に理解していないとか、勝手な解釈をしていると感じることがあります。
そのような場合は、主張内容を書面で提出するか、調停委員に、「このまま伝えてください。」と言い、そのまま書きとるように要望しましょう。
逆に、調停委員から、相手方の主張を聞いた時、「相手方が本当にそう言ったのか?」と思うことがあります。
そういう場合は、「それは相手方が●●と言ったんですか?」と聞いてみましょう。
ときどき、「はっきりとそういったわけではないけど、そういう趣旨です。」とか、「相手方の話を聞いてそう思いました。」などと、相手方ではなく、調停委員の意見だったりすることがあります。
ひどいときには、裁判官気取りの調停委員が、勝手に結論を決めてしまうことがあるので注意しましょう。
調停委員による調停の進め方がどうしても納得できないけれど、その場で反論できない場合には、とりあえず「検討します。」で押し切って調停を終わらせ、弁護士への依頼を検討した方が良いでしょう。
5 調停の成立・不成立など
⑴ 調停の成立
調停での話し合いがまとまると、原則として両者立ち会いの下で、裁判官が、合意内容に間違いがないか確認し、「調停調書」というものが作られます。
そして、調停成立の瞬間に、その合意内容は法的効力を持ちます。
調停調書は、判決と同じ効力があるので、慰謝料や養育費などの取り決めをしたのに相手が支払わないときは、強制執行(給料の差押えや、預貯金の差押えなど)ができます。
逆に、話し合いの過程で合意したはずのことでも、調停調書に書いていなければ、そんな合意はなかったことになってしまいます(調停外で任意に応じてくれることはあります)。
ですから、調停調書の読み上げの際には、その内容をよく聞き、意味が分からなかった場合は確認し、思っていたことと違う場合は必ずその場で訂正を求めてください。
なお、調停離婚の場合、上記の通り調停成立の瞬間に効力が発生するため、調停成立日が離婚日になりますが、自動的に戸籍が変わるわけではありません。
戸籍を書き換えるために調停成立から10日以内に市区町村役場に、調停で離婚したことを届け出る必要があるので注意してください。
万が一、申立人が市区町村役場への届出をすることになっていたはずなのに10日を過ぎても提出していないという場合は、相手方が届出をすることも可能です。
離婚の届出をする際には離婚届(署名欄は自分のところのみで大丈夫です)、調停調書の謄本(裁判所でもらえます)を本籍地の市区町村役場に提出します。
本籍地でない現住所の市区町村役場に提出する場合は、戸籍謄本も必要です。
また、調停で年金分割について取り決めた場合には、年金事務所にも届出をする必要があります。
この場合は、年金手帳、戸籍謄本、調停調書の謄本をが必要です。
東京家庭裁判所では、調停が終わると、その後の手続を説明した書面をもらうことができるので、手続を説明した書面が欲しいと伝えてください。
また、事前に、お近くの市区町村役場や年金事務所に聞いておくと安心です。
⑵ 調停の不成立・取り下げ
調停では合意ができなかった場合には、原則として両当事者立ち会いの下で、裁判官から、合意できないので調停は終わる旨が言い渡され、調停は終わります。
このとき、裁判離婚を考えている場合には、調停が不成立で終わったことを証明する必要があるため、裁判所書記官に不成立証明書が欲しいと伝えてください。
なお、離婚裁判を起こすのに期限はありませんが、調停終了から2週間以内に裁判を起こすと、調停申立て時点から裁判を起こしたとみなされ、調停の際に納付した収入印紙代が既に納付したものとみなされます。
逆に、調停が終了して、数年たってから離婚訴訟をする場合には、裁判官によっては、再度調停をするよう命じる場合があります。
また、事情によっては、不成立ではなく、調停申立てを取り下げて終わる場合もあります。
その場合でも、実質的に話し合いが行われたといえる事情があれば、離婚裁判を起こすことができます。
⑶ 審判離婚
基本的には、調停が成立しなかった場合、調停は不成立になり終了するのですが、まれに審判離婚となる場合があります。
審判は、裁判の簡易版のようなもので、調停での主張や提出された書面も引き継いだうえで、離婚を認めると裁判所が判断するものです。
審判離婚は、離婚に合意できているけれども、財産分与だけが合意できないといった場合に、とりあえず離婚だけ先に判断するものです。
しかし、通常は、離婚に付随する問題は、離婚理由と密接に関連するので、離婚と一緒に裁判で判断され、審判離婚となることはないと考えて良いでしょう。
裁判所の統計でも、審判離婚は、全国で年に1回あるかないかというレベルです。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。