面会交流について諸般の事情を総合考慮して判断するとした判決

2018-07-01

面会交流に関するコラムで記載した通り、ここ10年くらいは、面会交流は原則実施で、虐待などの事実がない限り認められてきました。

しかも、虐待などの事実は面会に反対する側が証明する必要がありました。

 

これについては、とくに弁護士の立場からの批判が多かったのですが、今回紹介する東京高裁平成29年11月24日決定は、子供の福祉の観点から、面会交流を実施するかどうか、実施する場合はその方法をどうするかを決めるべきだとしており、原則実施ではなくニュートラルな立場からどうすれば良いのか考えようとするもので、これまでの流れが変わるかもしれない裁判例です。

 

以下、詳しく説明します。

 

1 事案の概要

・2009年 結婚

・2010年 長男が生まれる

・2014年 二男が生まれる

・2015年 母親が子らを連れて家を出て別居

 

2 裁判所の判断

裁判所は、面会交流の判断基準として、「父母が別居し、一方の親が監護することになった場合においても、子にとっては他方の親(以下、「非監護親」という。)も親であることに変わりはなく、別居等にともなう非監護親との離別が否定的な感情体験となることからすると、子が非監護親からの愛情を感ずる機会となり、精神的な健康を保ち、心理的・社会的な適応の維持・改善を図り、持ってその健全な成長に資するものとして意義があるということができる。

他方、面会交流は、子の福祉の観点から考えられるべきものであり、父母が別居に至った経緯、子と非監護親との関係等の諸般の事情からみて、子と非監護親との面会交流を実施することが子の福祉に反する場合がある。

そうすると、面会交流を実施することがかえって子の福祉を害することがないよう、事案における諸般の事情に応じて面会交流を否定したり、その実施要領の策定に必要な配慮をしたりするのが相当である。抗告人は、いわゆる面会交流原則実施論を論難するが、抗告人の主張の趣旨とするところは、上述した考え方と必ずしも矛盾するものではない。」としました。

 

そして具体的当てはめとして、

・父親の行為について、「躾の程度を越えた暴力や虐待を行ったと認めるに足りる資料は見いだせない。」

・長男は、母親の労働に関して夫婦で争いとなった際に、父親が母親に対して暴力を振るい、怒鳴った状況を目撃し、父親を制止しようとしたが、父親が直ちには上記行動をやめなかったことがあり、このときの経験が長男に一定の精神的ダメージを与えたことは否定しがたい。

しかし、試行的面会交流の状況に照らすと、長男が上記経験によって根深い精神的ダメージを受け、現在もその状況から回復していないとか、父親と接触すること自体で長男が再び精神的ダメージを受けるおそれがあるとかいった状態までは認めらない。

・父親は、長男が生後一ヶ月にもかかわらず、母親の反対を押し切ってマラソン大会に連れ出すなど、新生児に対する配慮を欠く行為が見られるが、暴力行為にあたるとまではいえない。

・その他の行為などから、父親には独善的・自己中止心的で他者への配慮に欠けるところがないとはいえない。

以上から、直接的な面会交流を禁止まではするべきではないが、1年6か月の間は第三者機関を通じて短時間から始めるべきであるとしました(詳細な実施要領が示されていますが省略します)

 

3 当職の意見

原審である前橋家庭裁判所平成29年8月4日決定は、「非監護親とことの面会交流を実施することは一般的には、子の福祉の観点から有用であり、子が精神的な健康を保ち、心理的・社会的な対応をするために重要な意義がある。もっとも、面会交流を実施することがかえって子の福祉を害するといえる特段の事情があるときは、面会交流は、禁止・制限されなければならない。」として、近年多い、原則として面会交流を実施するんだ、面会が子に不利益だという場合は、そう主張する方が不利益を証明しろというものでした。

 

これに対して、冒頭でも書いたとおり原則面会交流実施で反対する側が反論しろというのではなく、子供のためにゼロベースで考えようとするもので、考え方としては望ましいものと思われます。

 

ただ、具体的当てはめ部分を見ると、かなり自分勝手な父親のように認定しながらも直接の面会交流自体は認めていることから、結論的には従来と大差ないようにも思います。

 

実際に離婚問題を扱っていると、この父親(母親)と会わせるのはかえって悪影響ではないだろうかと思える事案がありますが(逆に不当に面会交流を拒否しているとしか思えないものもありますが)、従来の原則実施論ですと、なかなか面会交流を制限が認められることありませんでした。

この判決のように子の福祉の観点から総合考慮する判決が主流となり、柔軟に対応する判決が増えることを望みます。

 

 

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弁護士 本 田 幸 則
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