面会交流の間接強制が認められなかった事例(子が15歳のケース)

2018-05-01

1 事案の概要

大阪高等裁判所平成29年4月28日決定

 

父親から、子の親権者である母親に対して面会交流を求め、平成24年(子は10歳)について月1回の面会を認める審判がなされた。

その後、平成25年(子は11歳)に2か月に1回の面会を認める控訴審決定がなされて確定した。
しかし、面会交流が実現しなかったため、父親が間接強制を申し立てたところ、面会交流不履行1回につき10万円の支払を命じる決定がされ、母親からの執行抗告が棄却されたため、間接強制を認める決定が確定した。
さらに、母親が面会交流禁止を求める申し立てをしたが却下され、それに対してさらに即時抗告し、平成27年(子は13歳)に月2回の面会交流を認める決定がなされた(ただし、先の審判ほど詳細は決められなかった)。
これに対し、父親が後の方の審判に基づいて平成29年(子は15歳)に間接強制を求めたが、大阪高等裁判所はこれを認めなかった。

 

大阪高裁が間接強制を認めなかった理由は、長いので要約すると、要するに15歳の子が嫌がっていて、母親には15歳にもなる子を無理に面会させることはできないというものである。

 

2 間接強制を認めない理由の詳細

興味がある方のためにもう少し詳しく引用すると以下のとおりである。

 

平成29年に調査官調査が行われたが、その際の子の意思について「相手方との面会交流を拒否する意思を明確にし、その拒否の程度も強固である。そして、そのような意思は未成年者自身の体験に基づいて形成されたもので、素直な心情の吐露と認められるから、その意思は尊重すべきである(なお、相手方は、未成年者の意思は、かたくなに面会交流を拒否する抗告人らの影響を受けており、本心とは評価できないと主張する。しかし、仮に未成年者が面会交流に消極的な抗告人らの意向を聞いているとしても、上記意向調査の結果によれば、未成年者はそれをも踏まえて自らの意思で面会交流を拒否していると認められるから、未成年者の意思を本心でないとか、抗告人らの影響を受けたものとしてこれを軽視することは相当ではない。)。
また、間接強制をするためには、債務者の意思のみによって債務を履行することができる場合であることが必要であるが、幼児のような場合であれば、子を面会交流場所に連れて行き非監護親に引き渡すことは監護親の意思のみでできるが、未成年者のような年齢の場合は子の協力が不可欠である上、未成年者は相手方との面会交流を拒否する意思を強固に形成しているところ、未成年者は平成29年×月より高等学校に進学しており、その精神的成熟度を考慮すれば、抗告人らにおいて未成年者に相手方との面会交流を強いることは未成年者の判断能力ひいてはその人格を否定することになり、却って未成年者の福祉に反するということができる。したがって、本件債務は債務者らの意思のみによって履行することはできず履行不能というべきである。
加えて、前記認定のとおり、抗告人らは相手方と未成年者の面会交流の拒否を求めて調停申立てをしているところ、その帰趨を待つ余裕がないほど喫緊に面会交流を実施しなければ未成年者の福祉に反するような事情があるとも認められない。」

 

3 私見

15歳の子が面会を拒否している状況では、やむを得ない判断だと考える。

 

どうも最近気軽に間接強制を勧める弁護士が多い気がする。
そして、面会を拒否する方にあからさまに圧力をかける裁判官もいる。
けれども、乳幼児ならともかく、小学校高学年くらいになってくれば、本人が嫌がっているのに会わせるのは困難である。
仮に本人を無理やり会わせたとしても、「自分の意思に反して無理やり従わされた」と思うだろう。

ましてや、本件の父親側の主張のように、15歳の子が嫌がっているのに「本心は違うはず」といったところで、かえって「お前になんで本心が分かるんだよ」と反発を受けるだけだろう。
しかも、母親が子供の意思を尊重すれば、間接強制によって子供の家庭は貧困に陥ることになる。
こうなれば、子供は父親をうらむだろう。

 

法律は万能ではない。

 

たとえば、離婚時に子供が父親と一緒がいいと言っているにもかかわらず、裁判所が母親を親権者とし、父親が子供が嫌がっていることを理由に引き渡しを拒否したところ、母親が強制執行した事案で、執行官が父親のもとから連れて行こうとしたら、子供が逃げ回ったため執行不能となったケースもある。

 

国家権力による不利益を避けるために、表面上は裁判所の判断に従う人もいるだろうが、決して本心から納得しているわけではないので、かえって強硬手段をとったことについて怒りが高まることもある。

そうなると、成人して裁判所の判断に従わなくてよくなった子供は、徹底的に相手を恨むだろう。

 

納得できないかもしれないが、本当に子供と長期的に良好な関係を築こうと考えるなら、圧力をかけるのではなく、とりあえず手紙やメールのやり取りから始めるなど、ゆっくりと気持ちを解きほぐしていく方が得策だと考える。

 

間接強制の申立ては、子供が乳幼児の場合や、子供が親権者に気を使っているのが明らかな場合に限るべきだと考える。

 

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弁護士 本 田 幸 則
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