弁護士が役に立ったと思う交渉術④ー論理的に説得する?ー

2018-07-01

交渉術の中でも、一般の方に過大評価されているのではないかと思うのが、論理的に説得するという方法です。

 

論理的に説得するというのは、相手によっては絶大な効果を発揮します。

しかし、過半数の人にとっては、それほど強力な説得方法とはなりません。

また、一部の人には逆効果となります。

 

では、詳しく説明します。

 

1 論理的に説得することが効果的な人・状況

 

⑴ 自分が論理的だと思っている人

自分が論理的だと思っている人は、相手に反論され、それに上手く再反論できない場合に「自分の方が間違っている」とか、「反論できないのだから従わなければならない」と思いがちです。

「何か理不尽だ」という感情より、論理が優先するのです。

 

しかも、こちらが相手以上に論理的である必要はありません。

相手の論理を破綻させればいいのです。

相手は、反論できない=自分が譲らなければならないと思ってくれます。

 

⑵ 会話が受け身な人・状況

人は、小さなイエスを積み重ねていって、最後の結論について質問されるとイエスと言いがちです(一貫性の原則)。

よく例に出されるのは、以下のようなやり取りです。

販売員「環境破壊が大きな問題になっていますね」

消費者「そうですね」

販売員「プラスチックなどの自然に帰らないゴミなどが捨てられたりすると大変ですよね」

消費者「そうですね」

販売員「この商品はですね、生分解性プラスチックでできていて、自然に帰るんですよ。だから自然に優しいんです。買っていただけませんか?」

消費者「えぇ・・・、分かりました」

 

実際は、こんな単純な会話ではありませんが、前提となっている事実にイエスといってしまったので、結論にもイエスと言ってしまいます。

これが成立するのは、相手が話を聞いてくれるからです。

ですから、あなたが主導権を取って話を進められる場合には、小さなステップを踏んでいけば、論理的説得が有効となります。

 

2 論理的に説得することが効果があることもある人

 

多くの人はこのタイプだと思いますが、たいていの人は、論理と感情とがせめぎあって結論を出します(感情も言語化されていないだけで、脳内では論理的処理がされているのでしょうが)。

 

この場合は、臨機応変にとしか言いようがありません。

相手が冷静で、こちらの話を聞いてくれる場合には、論理的な説得を試みましょう。

 

3 論理的に話し過ぎると失敗する相手

 

論理的に話し過ぎると失敗する相手とは、非論理的、感情的な人です。

 

こういう人でも、ある程度理由をつけて説明した方がいいのですが、あまりに論理的すぎると、このタイプの人は「訳の分からないことを言ってごまかそうとしている」とか、「馬鹿にしている」などと思い込み、感情的に反発してきます。

 

このタイプの人には、論理性より損得勘定を前面に出した方がいいでしょう。

 

ただし、相手より社会的立場が上の場合には、非論理的なタイプの人にも論理的説得が効果的な場合があります。

なぜなら、相手は、その人のことを上の立場の人間=正しいことをいう人と思っているからです。

その場合は、簡単なロジックを説明するだけでも「さすが●●さんだな」と簡単に思ってくれます。

 

そうだとすれば、交渉には、相手より立場が上で、あなたに賛同してくれる人に同席してもらえるように考えてみましょう。

 

 

4 全ての相手に共通して言えること

 

論理的な説得は、交渉術の一手段にすぎず、過度に評価すべきではありませんが、非常に有効な場合もあること、

なにより、相手に質問されたときに、しどろもどろになったのでは、説得できる相手も説得できなくなるので、自分の意見の論理性は検討しておく必要があります。

 

ただし、それを前面に出してよい状況か、どの程度説明するか、は考えなければなりません。

また、実際に話しをする際には、相手がどこまで納得しているかを確認しながら話を進める必要があります。

 

なぜなら、相手を論理的に説得するためには、相手がこちらの主張に納得する必要がありますが、そもそも相手がこちらの話を聞いてくれるなければ納得も何もありません。

たとえば、たとえ普段は論理的なタイプでも興奮しているときにこちらの話を聞いてくれることはないでしょう。

また、感情的なタイプは、敵対関係にあるというだけで全く話を聞こうとしませんから、まずは、相手に「最低限は信用してもよさそうだな」と思われるまで時間をかける必要があります。

 

また、話を聞いてくれるとして、どの程度話せば理解してくれるのかも考えなければなりません。

あまり論理性がない相手に途中を省略して説明してはならず、一つずつ同意を得ながら、時に相手が自分で結論に達するように誘導しながら話を進めないといけません。

逆に、論理的で知性も高い相手に、あまり細かく説明すると、相手はいら立ち、場合によっては「馬鹿にしているのか?」と思われかねません。

相手のレベルに合わせて、どの程度詳しく説明するか調整しましょう。

 

さらに、一つ一つ順を追って説明していく過程で、相手が理解しているかを観察し、時には明確に口に出して確認しなければなりません。

相手が最初の段階でつまずいているのに、話を次に進めても意味がありません。

また、一つ一つYESを積み重ねることで、一貫性の原則からNOと言いにくくもなります。

 

5 ところで・・・

 

最初は、論理的説得などというコラムを書くつもりはなかったのですが、Google検索をすると論理的に説得することが効果的かのように書いてらっしゃる方が多かったため書きました。

そのように書いておられる方は、弁護士が多いようです。

しかも、元裁判官、元検察官という肩書きの方。

どうも彼らは、国家権力という後ろ盾があったから相手が従っていたということを分かっていない気がします。

弁護士という職業でさえ、一般の方は、「逆らったら訴えられるかも」と思っていることも多く、対等な関係での交渉と言えないことが多いです。

そのような後ろ盾をもたない一般の方向けの交渉術としての、論理的説得は、交渉術の一方法ではありますが、過大な期待をしないほうがいいでしょう。

 

また、こと裁判官に関して言うならば、裁判官の和解案とその説明に「おお、なるほど」と思うことは、たまにしかありません。

だいたいが、想定の範囲内です。

弁護士は、依頼者の主張を法的に構成して代弁する代理人です。

ですから、ちょっと無理かなと思いつつも、依頼者の意見が通るように書面を書きます(あまりに無茶なのは弁護士段階で止めますが)が、内心では、「落としどころは、この辺かな?」と思っています。

裁判官の和解案は、その「落としどころは、この辺かな?」に収まることが多いのです。

だから、弁護士は、裁判官に同意してて、依頼者にも「裁判官はこう言っているので和解してはどうですか」と勧めるのであって、裁判官の論理的説得に、「なるほど、さすが裁判官」と思っているわけではありません。

もちろん、たまには双方の弁護士が思いもつかなかった解決案を提示していただき、「おお、なるほど」と思うこともあります。

 

 

 

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弁護士 本 田 幸 則
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