3年以上の生死不明を理由とする離婚

2015-07-31

1 3年以上の生死不明とは?

民法770条1項3号は、配偶者が3年以上生死不明の場合には離婚を認めています。

 

生死不明とは、文字通り、「生きているか死んでいるか分からない状態」をいい、おそらく死んでいるだろうということを証明する必要はありません。
逆に、生きていることは確実だけれども、居場所が分からないという場合は、生死不明にはあたりません。

 

2 離婚手続

相手が生死不明なのですから、離婚裁判で離婚するしか方法はありません。
通常、離婚裁判をする前に調停をしなければならないのですが(調停前置主義といいます)、3年以上の生死不明を理由に離婚をする場合は調停をする必要はありません(家事事件手続法257条2項ただし書き)。
また、裁判では、訴状を相手に送る必要があります(送達といいます)が、3年以上の生死不明の場合、公示送達という方法で相手に届いたとみなします。
公示送達とは、裁判所の掲示板に掲示するなどの方法をいいます。

 

通常の民事裁判では、相手があなたの主張を争わなければ、あなたの主張通りとなりますが、離婚裁判では相手が争ってこない場合でも、あなたは離婚理由があることを証明する必要があります。
3年以上の生死不明を証明する場合には、警察に捜索願等を出しているでしょうから、その警察から「捜索願受理証明」というものを発行してもらって提出します。
また、あなたや親族が、生死不明になるまでのいきさつを書いた書面(陳述書)も証拠として提出します。
日記やメールなどで事情が推認できるようなものがあれば、そのようなものも提出した方が良いでしょう。

 

3 失踪宣告とどちらを選ぶか

離婚とは異なりますが、失踪宣告をすると相手は亡くなったものとされるので、事実上離婚と同じ効果があります。
失踪宣告は、生死不明になってから7年(災害などによる生死不明の場合は1年)経過したときに、家庭裁判所に申立てることで死亡したとみなされる制度です(民法30条)。

 

相手が生死不明になってから7年以上経過しているときは、離婚裁判をしても失踪宣告の申立をしても、どちらでも婚姻関係は解消されますが、2点違いがあります。

 

① 相続の発生の有無
生死不明を理由とする離婚の場合、単なる離婚ですから、相続は発生しません。
離婚手続き後に相手の死亡が確認されても、道義的にはともかく、法律上は他人ですから、何の権利も義務も発生しません。
失踪宣告の場合には、死亡したものとみなされるので、婚姻関係の解消だけでなく、相続も発生し、配偶者として相続権も有します。
ですから、後記②との兼ね合いもありますが、相手が何らかの財産を残して行方不明になった場合には、生死不明による離婚ではなく、失踪宣告の方が良いでしょう。

 

② 死亡していなかった場合の効果
生死不明による離婚も、失踪宣告も「生きているか死んでいるか分からない」ということですから、「実は生きていました」ということもあり得ます。
その場合、生死不明による離婚では、離婚が成立しているので、相手が生きていることが分かっても他人のままです。
ところが、失踪宣告の場合は、生きていることが分かったら、失踪宣告が取り消され、元の状態に戻ります。
つまり、相手との結婚が復活します。
その結果、失踪宣告後に再婚し、その後生きていることが分かると、重婚(2人と結婚している)という、面倒な問題が生じます。
重婚状態となると、後婚は取消し事由にあたりますが、遡って結婚していなかったのではなく、取消しの時点で後婚が解消されます。
要するに、後婚は強制的に離婚させられたのと同じ状態になります。
もちろん、その後、前婚を相手の悪意の遺棄などを理由に離婚し、後婚の相手と結婚することは可能です。
ですから、相手が生きて戻ってくる可能性があり、かつ、再婚の予定があるのであれば、失踪宣告によって離婚状態をつくり出すのは危険でしょう。

 

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