相手の病気などを理由とする離婚

2015-08-05

相手が精神病や人格障害のために夫婦生活を続けるのが困難だという場合は、民法770条1項4号「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にあたると主張するか、民法770条1項5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたると主張する必要があります。
民法770条4号は、同5号の代表的なものを例示したと考えられているので、まずは、回復の見込みがない強度の精神病にあたるかを考え、あたらない場合は、婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるかを考えていきます。

 

1 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

⑴ 強度の精神病とは

強度の精神病とは、その精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務、ことに他方の配偶者の精神的生活に対する協力義務を十分に果たし得ない程度に達しているか否かによって決するとした裁判例がありますが、実はその境界線は明確ではありません。

 

具体的には、統合失調症、双極性障害(いわゆる躁鬱病)、早期性痴呆、麻痺性痴呆などが強度の精神病にあたり得るものですが、その程度によってはあたらない場合もあります。

 

アルコール中毒や、薬物中毒、ヒステリー、神経衰弱証、認知症などは強度の精神病の対象とならないとされています。

 

ただし、強度の精神病にあたらないとされた場合でも、後述する、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があると判断されることがあります。
ですから、あまり強度の精神病の定義にこだわる必要はありません。

 

⑵ 回復の見込みがないときとは

「回復の見込みがないとき」とは、文字通り、治らないであろうと思われるときですが、医学的に厳密な判断を必要とするものではなく、精神科医の判断を前提に裁判所が判断することになります。
相当長期にわたって治療を継続していても回復が見られないときは、「回復の見込みがない」という判断になるでしょう。

 

⑶ 民法770条2項によって離婚が認められない場合

民法770条2項とは、民法770条1項1号~5号の離婚理由に該当する場合でも、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができると定めた規定です。

 

他の離婚理由の場合には、この規定によって離婚が認められないことは滅多にありませんが、回復の見込みのない強度の精神病を理由とする場合には、この規定によって離婚が認められないケースが多くあります。

 

具体的には、最高裁判所昭和33年7月25日判決は、
「諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に方途の見込みのついたうえでなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当」
と判示しています。

 

つまり、強度の精神病である相手は、今後一人では生きていけないことが予想されるのだから、離婚したいのであれば、それなりの手当をしてからにしなさいということです。

 

この、相手の今後の生活、具体的には病気療養の受け入れ先や費用、離婚したあとに保護者となるものがいること等は、離婚を求める側が十分な手当がされていることを証明する責任を負います。
また、このような手当が実行される可能性があるかの判断にあたっては、これまでの介護の状況なども考慮されます。

 

2 回復の見込みのない強度の精神病とはいえないとき

最初に述べたとおり、相手の病気が、回復の見込みのない強度の精神病にあたるといえない場合でも、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたれば、離婚が認められます。

 

この場合、医学的診断がどのような病名となっているかよりも、相手に具体的にどういう行為が見られ(または行為がなく)、それによってどのような不利益が生じているかが重要になります。

 

こちらの規定によって離婚理由があるとされる場合には、強度の精神病の場合のように、相手の今後の生活への配慮等を判断基準とした裁判例は見当たりません。

 

しかし、中には、相手の病気を原因とする行動により夫婦関係が破綻しているのではないかと思える案件で、「夫婦関係は破綻していない」と強引とも思える認定をしているものもあり、実質的には、ある程度、今後の相手の生活への配慮を求めているのではないかと思います。
また、相手に重大な病気がある場合でも、離婚を求めた側のこれまでの不誠実な態度を理由に離婚を認めていないものもあります。
学説では、明確に、相手の今後の生活への配慮を離婚を認める要件とするべきという主張もあるので、裁判の際には、今後の相手の生活への配慮は主張しておいた方が良いでしょう。

 

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