浮気相手に対する慰謝料請求

2015-08-21

1 浮気相手に対する慰謝料請求が認められる場合

夫(妻)が浮気をした場合、夫(妻)だけでなく、浮気相手に対する慰謝料請求が認められる場合があります。

 

この慰謝料は、民法709条の不法行為責任とされます。

 

民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

 

このことから、浮気相手に慰謝料請求をするには「故意または過失」が必要です。
浮気の場合における「故意または過失」とは、浮気相手が、あなたの夫(妻)が既婚者だと知っていたか、容易に知り得たといえることをいいます。
この、浮気相手が、あなたの夫(妻)が既婚者だと知っていたかどうかは、あなたが証明する必要があります。

 

また、「他人の権利又は法律上保護される利益」を侵害することが必要です。
このことから、浮気以前から夫婦関係が完全に壊れていた(「破綻(はたん)」といいます)ような場合には、その夫婦関係は、形式的なものにすぎず、法律上保護するような利益はないと考えられ、損害賠償請求は認められません。
この夫婦関係が破綻していたかどうかは、裁判所が様々な事情から総合して判断することになりますが、少なくとも別居もしていないような状況では、婚姻関係が破綻していると認められることは滅多にありません。
実際の裁判では、浮気相手や浮気した夫(妻)が「夫婦関係は破綻していました」と主張することが多いですが、認められることはあまりありません。

 

さらに、浮気相手による権利の「侵害」行為が必要です。
浮気の中でも不貞行為(性的関係がある浮気)が侵害行為にあたることは問題ありません。
では、不貞行為に至らない異性関係でも侵害行為といえるかどうかですが、不貞行為と同視できるほど親密な関係であれば侵害行為があったと判断される場合があります。

 

なお、浮気相手への慰謝料請求は、原則として浮気の事実と浮気相手を知ってから3年で時効消滅します。

 

2 浮気相手に対する慰謝料の相場

浮気相手に対する慰謝料は、結婚していた期間、浮気をした期間・頻度、浮気が原因で離婚したかどうか(離婚手続き中を含む)などの事情を総合考慮して決められます。
とくに、浮気が原因で離婚したかどうかは重要な考慮要素です。

 

では、具体的にいくらになるかですが、判例集などに載っているのは100~300万円のものが多くなっています。
ただ、この種の裁判は珍しいものではないため、判例集に載らないものも多く、実際には、離婚に至らなかった場合で50~100万円、離婚になった場合で200~300万円くらいが多いのではないかと思います。

 

3 浮気相手に対する慰謝料請求と浮気した夫(妻)に対する慰謝料請求の関係

浮気相手に慰謝料が請求できそうだとしても、浮気した夫(妻)との関係でどうするか考える必要があります。

 

この場合、浮気相手と浮気した夫(妻)は、2人で協力して浮気という違法な行為をしたのですから、共同不法行為(民法719条1項)となります。
そして、民法719条1項は「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。これを不真性連帯債務(ふしんせいれんたいさむ)といいます。
どういうことかというと、2人で協力して浮気をして、あなたに損害を与えたわけですが、損害自体は1つです。
ですから、1つの損害を浮気相手と浮気した夫(妻)が連帯して支払なさいということになります。連帯保証人をイメージしていただくと近いと思います。
連帯して支払う義務を負うと、あなたは、どちらにいくら請求してもよいことになりますが、損害は1つですから、その損害額を超えることはできません。

 

たとえば、あなたの損害が300万円だとして、浮気相手に300万円、浮気した夫(妻)に対して300万円請求することができますが、どちらかが300万円を支払った場合には、もう一方に300万円を請求することはできません。
また、最初から浮気相手には200万円、浮気した夫(妻)に対して100万円というように、金額を分けて請求してもかまいません。

 

支払う側は、半分しか支払わないということはできませんし、逆に、もう一方が300万円支払っていた場合には、すでに全額支払われているとして支払を拒否することもできます。
そして、一方が全額を支払った場合には、他方に責任の割合に応じた負担を求めることができます(「求償(きゅうしょう)」といいます)。
この負担割合は、浮気にいたった事情を総合考慮して決められますが、基本的には半分と思っておいていいでしょう。

 

では、両方からお金を別々に貰うことはできないのかというと、当事者が納得すればできます。
ですから、示談や調停、裁判などで和解する際に、浮気相手と浮気した夫(妻)両方との間で、もう一方の支払とは関係なく別に支払うとの内容の和解をする必要があります。

 

上記の方な関係になるので、夫(妻)に離婚慰謝料を請求するケースでは、上記のような和解ができないような場合には、浮気相手を訴えるメリットはあまりないということになります。
たとえば、浮気した夫(妻)にお金がないので慰謝料の支払が期待できない場合や、経済的にはプラスはなくても、事実関係をはっきりさせておきたいといった場合に限られるでしょう。

 

4 慰謝料請求の手続き

浮気相手との間で示談交渉をして和解ができれば良いですが、そうでない場合は裁判を起こす必要があります。
その場合、浮気相手のみ訴えるという方法と、離婚裁判と一緒に訴えるという方法があります。

 

⑴ 浮気相手のみ訴える

 

浮気をした夫(妻)への慰謝料請求とは別に、浮気相手を被告として、相手またはあなたの住所地を管轄する地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することができます。

 

この場合、夫(妻)への慰謝料請求とは無関係に判断されることになります。
ですから、総額として300万円が相当なのに、夫(妻)との離婚裁判で離婚慰謝料300万円を支払えという判決がでて、浮気相手との関係で慰謝料300万円を支払えという判決が出る可能性があります。
そういった判決が出ると、両方に、それぞれの判決の金額を請求でき、差押えもできることになります。
ただ、本来両方には請求できるはずのないお金ですから、あとで支払いすぎたので返せと主張される可能性があります。

 

このような複雑な結果を避けるため、浮気相手のみを訴えるのは、夫(妻)の浮気が発覚したけれど離婚はせず、夫(妻)には損害賠償請求をしない場合や、離婚問題が長期化している場合に限定した方が良いでしょう。

 

⑵ 離婚裁判と一緒に訴える

 

浮気した夫(妻)と離婚裁判をする場合、浮気相手への損害賠償請求を離婚裁判に併合する(一緒に裁判する)ことができます。

 

この手続によれば、同じ裁判官が同じ手続内で判断することになるので、別々に訴えた場合のような不都合はなく、総額としていくらで、いくら分を連帯して支払えば良いかが判断されます。

 

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