浮気した方からの離婚請求
離婚が認められる3つの要件
浮気したなど、離婚原因を作った者を「有責配偶者」といいます。
離婚問題において、夫婦の一方だけが悪いということは少ないので、一方に多少の有責性があっても、もう一方にも有責性がある場合には離婚が認められます。
しかし、離婚原因のほとんどが一方にある場合には、その有責配偶者からの離婚請求は簡単には認められず、通常の離婚原因のほかに、以下の3つの要件を考慮して離婚が相当かどうか決定されます。
① 別居期間が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
② 未成熟の子が存在しないこと
③ 相手方が、離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと
では、各要件について詳しく説明します。
1 別居期間が長期間に及ぶこと
まず、別居期間が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶことが必要ですが、裁判例では、10年が一応の目安となっています。
10年より短期間の別居期間で離婚を認めている裁判例は少数です。離婚を認めている裁判例は、いずれも、相手にもある程度落ち度がある場合です。
10年前後の場合、同居期間などと対比のうえ長期間がどうか判断されています。では、同居期間と比べて別居がどれくらいになればよいかですが、裁判例は様々です。私の意見としては、同居期間と別居期間が同程度であれば認められるのではないかと考えます。
10年を大幅に超える場合には、長期間の別居があったと判断されています。
2 未成熟子が存在しないこと
未成熟子とは、経済的に自立していない状態の子供をいい、未成年とは異なります。
ところが、養育費の判断では20歳を超えても大学生などは未成熟子とされますが、離婚の要件としては18歳程度が一応の目安となっています。
おそらく18歳くらいになれば事情が理解できるという判断でしょう。
もっとも、18歳を超え、成人していても、子供が障害を持っているなど、介護が必要な状況であれば、多くの場合未成熟子またはそれに準ずる状態とされています。
また、極めて少数ですが、十分な経済的支援をしているような場合には、子供が小さくても離婚を認めている場合があります。
3 特段の事情がないこと
相手方が、離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないかどうかは、事案によって細かく認定されていますが、概ね経済的に十分な配慮があるかが重視されています。
たとえば、別居期間中十分な婚姻費用が支払われていたかや、離婚に際して十分な慰謝料や財産分与がなされるか、などが考慮されています。
とくに、子供に障害があるような場合には、離婚後の生活が維持できるかが重視されています。
現実的な対応
上記の通り、浮気をした方などの有責配偶者からの離婚請求が認められるようになるには、相当な期間の経過と金銭的な支出が必要になります。
ですから、どうしても早期に離婚を希望する場合には、上記の事情が満たされるようになるまでに支出される金額を概算し、解決金として相手に提示するなどの方法で協議離婚や調停離婚を目指すのが得策でしょう。
もちろん、財産分与は別途支払う必要があります。
他方で、離婚を請求された側は、本心から関係修復を目指したい場合は別ですが、そうでなければ上記の事情を考慮して十分な金額の提示があった場合には、協議離婚や調停離婚に応じ、早めに新しいスタートを切った方が良いかもしれません。
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