離婚時に決めた結婚時の姓を旧姓に戻したい

2015-12-25

離婚する時に、子供の学校のことなどを考えて、夫(妻)の姓(氏、名字、苗字)を名乗ることにしたけれども、やっぱり旧姓に戻したい。
そんなことが認められるでしょうか?

 

そのような場合、一定の条件を満たせば、家庭裁判所で「氏の変更許可申立」をし、旧姓に戻すことができます。
なお、法律上は、姓・苗字・名字・氏は、いずれも「氏」といい、結婚時の氏を婚氏というので、以後はそのように書きます。

 

1 旧姓に戻すことができる判断基準

一般的には、氏を変更するには、氏を変更するについて「やむを得ない事由」が必要とされます(戸籍法107条1項)。

 

しかし、離婚時に婚氏を離婚後も続けて使うことを選択した者が旧姓に戻る場合には、「やむを得ない事由」を緩やかに解釈するのが多くの裁判例です。

 

では、緩やかに解釈するとは、具体的にはどのように判断するのかですが、裁判例によって若干言い回しは違いますが、以下の3つの要件を満たす場合には変更が認められています。

 

① 婚氏を使用している期間が短く、社会的に定着していないこと
② 申立が恣意的なものでないこと
③ 氏を変更することで、第三者に損害を与えるなど、社会的弊害がないこと

 

①の期間の点は、離婚から15年後の変更を認めているものがあるかと思えば、数年で認めない裁判例もあります。
変更が認められている事例では、子供が学校を卒業したり、成人したのをきっかけとして申立をしているので、氏の変更を求めるのが遅くなった事情を合理的に説明できれば多少長くても認められるのではないかと思われます。

 

②の申立が恣意的なものでないことというのは、申立人の気分でコロコロと氏を変えることを認めるわけにはいかないので、氏の変更をしたい合理的な理由があることを主張する必要があるということです。
上記の通り、これは、①と相関関係がある可能性があります。

 

③の要件は、たとえば借金を踏み倒すために氏を変えたりするなどの行為は認めませんということです。

 

2 手続

氏の変更許可申立についての具体的な手続は、裁判所の「氏の変更許可」のページで詳しく説明されているので、そちらに説明を譲ります。

 

3 裁判例

上記の比較的緩やかな判断基準で氏の変更を認めたものとして以下のような裁判例があります。
以下の裁判例が高等裁判所となっていることから分かるとおり、地方裁判所では氏の変更が認められず不服申立(即時抗告)をして、やっと変更が認められているので、離婚時にどちらの氏を名乗るかは慎重に行ってください。

 

〈東京高等裁判所昭和58年11月1日決定〉
昭和57年6月25日に離婚したが、共有となっていたマンションの売却の便宜のため婚氏を名乗ることとし、昭和57年6月にマンションの売却ができたことから、昭和58年3月に氏の変更許可申立をした事案。
裁判所は、婚氏を名乗ったのは、長期的な展望に立った判断を誤った軽率な判断であり、恣意的な変更ではなく、実家で父親と生活するうえでも氏が異なると不便であることなどを理由に氏の変更を認めた。

 

〈東京高等裁判所平成2年4月4日決定〉
平成元年1月9日離婚、市役所職員から戸籍法77条の2の手続をすれば旧姓を名乗れると説明を受け、本来は離婚後3か月以内に旧姓を名乗る手続をしなければならないのに、その後でも簡単に旧姓に戻れると考え婚氏を使用することにした。
平成2年4月から、弟が家を出て、一人になってしまった母親と一緒に生活するようになった。
平成2年10月に氏の変更許可申立を行った。
裁判所は、婚氏を使い続けたのは軽率な判断で行ったもので恣意的なものではなく、母親と同居するうえで氏が違うと不便であるという理由で氏の変更を認めた。

 

〈東京高等裁判所平成15年8月8日決定〉
平成9年1月20日離婚、子供が小学生であり、学校生活などを考慮して婚氏を名乗ることにした。
平成9年2月14日に、元夫と再婚した。
平成9年10月8日に、再度離婚した。
平成15年に男性と交際していることを元夫に知られ暴力を受けるとともに、婚氏(元夫の氏)を名乗るなと脅される。
氏の変更の申立日は不明だが決定日から平成15年と思われる。
上記事案で、裁判所は氏の変更を認めた。

 

〈福岡高等裁判所平成15年10月21日決定〉
昭和62年1月27日離婚、子供の学校関係などを考慮し婚氏を名乗ることにする。
平成5年から職場で旧姓を通称名として使用。
その後、実家の跡継ぎがいないことから、祭祀を承継した。
氏の変更申立美は不明であるが、決定日から平成15年と思われる。
上記事案で裁判所は氏の変更を認めた。

 

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