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元々夫婦で住んでた家に別居後に相手の承諾なく入った場合、住居侵入罪(刑法130条)が成立するというのが裁判例です。
これは、その家が誰の名義になっているかや、賃貸の場合に借り主が誰の名義かと関係ありません。
もっとも、夫婦喧嘩で家を飛び出したけれども、すぐに戻ってきたというような場合は、住居侵入罪となることはありません。
「元々夫婦で住んでいた家なのに、なぜ住居侵入罪が成立するの?」と思うかもしれませんが、これを理解するには、刑法において住居侵入罪がどのように考えられているかを知る必要があります。
刑法の住居侵入罪は、いったい何を守ろうとしているのかですが、大別して2つの説があります。
一つは、(新)住居権説、もう一つは、住居の平穏説です。
住居権説は、おおざっぱにいうと、そこに住んでいる人が誰を家に入れるか決める権利があるため、その権利を守るために、その人に意思に反する進入を罰しようという考え方です。
この考え方からは、別居をしてしばらく経てば、もう住人ではないので、住人である相手の意思に反する住居への立ち入りは違法となります。
では、どれくらい別居すれば住人ではないと判断されるかですが、これは具体的事情に応じて判断されるため明確に別居後●日とはいえません。
ただ、別居から1か月以上経って、相手と連絡も取っていないような場合には、勝手に入らないようにした方が安全でしょう。
住居の平穏説は、文字通り、守られるべきは住居の平穏であって、住んでいる人以外が勝手に入ることは住居の平穏を害する行為にあたるため罰しようという考え方です。
この考え方からは、別居してしばらく経ったら、出て行った方がいないという住居の状態が形成されているため、家に残っている方の承諾なく勝手に家に入ると住居の平穏が害されたということになります。
こちらも上記の住居権説と同様に、どれくらい別居が続いたら違法になるのかは具体的な事情によるので、実質的には住居権説と違いはありません。
何度も拒否しているのに家をたずねてくるような場合にはストーカー規正法が適用される場合もあるので、同法の成立がないかも警察や弁護士に相談してみてください。
理論的には別居からある程度時間が経っている場合には住居侵入罪が成立するのですが、実際に警察に相談しても、相手が包丁を持って押し入ってきたような事情でもない限り、「夫婦の問題でしょ」で終わりとなるケースが多いと思います。
実際に相談者の方から、警察に被害届を出したいと言ったけれども違法でないと言われたという相談もあります。
ただ、警察に通報するだけでも相手への牽制になりますし、記録に残るため、離婚の際には相手の非常識な行動を裏付ける事情の一つとしては使えるでしょう。
なお、どうしても許せない場合は、告訴をしてください。
告訴と被害届、相談の違いですが、相談は文字通り単なる相談で、一般的には警察署内部で相談記録として記録が残されるだけです。
相談記録も、被害届や告訴と比較して早く処分されてしまいます。
具体的な記録の処分までの期間は、各都道府県警によって違うようですが、1年程度で処分する警察もあるようです。
被害届は、警察に犯罪被害を受けたことを届け出るもので、法律上は規定がなく、警察内部で捜査のきっかけとするためのものです。
もっとも、被害届を出すと、各警察署の事件認知件数としてカウントされるので、その事件を解決しないとその警察署の事件解決率が下がり、、、後は察してください。
告訴は、刑事罰を与えてほしいということを求める意思表示で、告訴をした場合には、警察は、告訴があったこと、それに基づいて捜査をした結果を検察に報告する義務があります。
上記のとおり、告訴をするとその警察署の事件認知件数は上がりますし、一定期間内に捜査結果を検察に報告しないといけないので、、、というわけで、警察の対応はお察しください。
なお、警察には助けてもらうことも多く、反感を持っているわけではありません。
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