推定相続人の廃除(相続件を失う手続②)

2016-03-18

1 推定相続人の廃除とは?

推定相続人の排除とは、本来であれば相続人になれるはずの相続人(推定相続人)のうち遺留分を有する者(配偶者、子、直系尊属)に問題行動がある場合に、亡くなった方の意思に基づいて、推定相続人から相続資格を剥奪(ハクダツ)する制度です(民法892条、893条)。
単に「相続人の廃除」ともいいます。

 

推定相続人のうち遺留分を有する者に限定した理由は、遺留分のない推定相続人については、その人物に財産が渡らないような遺言書を書いておけばよいのに対し、遺留分のある推定相続人は、たとえどのような遺言があっても遺留分のある推定相続人が要求すれば一定割合の相続が認められるからです。

 

2 どんなときに排除できるか?

推定相続人を廃除できる場合は、民法892条に記載されており、
①被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき
②著しい非行があったとき
のいずれかに該当する場合です。

 

これらにあたるかどうかは、裁判官が諸々の事情を総合考慮して判断することになりますが、推定相続人が犯罪行為を行っただけでは排除事由にあたらず、被相続人や家族に対する直接的な侵害行為がなければならないとされています。

 

裁判所が、推定相続人の廃除を認めた例としては次のようなものがあります。
・息子が、多額の商品代金の支払や会社の使い込みの弁償を父にさせ、父母が意見をしようとすると暴力を振るい、その後家出をした事例
・父親が経営する会社の役員であった息子が、父親の財産をギャンブルにつぎ込み、父親が自宅を売却せざるを得ないような事態に追い込み、さらに、会社役員を解任された腹いせに、契約書を偽造して民事紛争を引き起こした事例
・小学生のころから問題行動を繰り返し、その後、少年院送致の処分を受け、さらに風俗産業につとめて、元暴力団員と結婚することになり、親の名前を勝手に使って招待状を出すなどの行為をした事例

 

3 排除の手続きは?

推定相続人の排除の方法は、被相続人(亡くなった方)が生きている間にする方法と、遺言でする方法があります。

 

⑴ 被相続人が生きている間に排除する方法

 

被相続人が生きている間に排除するには、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所で推定相続人の廃除の審判を申立てます(民法892条、家事事件手続法39条、188条1項、同別表第1の86)。
排除が相当かどうかは、裁判官が排除申立の対象となっている推定相続人の主張も聞いた上で判断することになります(家事事件手続法188条3項)。
裁判所が推定相続人の廃除が相当と考える場合には、その旨の審判あり、2週間の不服申立期間経過後に審判が確定します。
不服申立がなされると、高等裁判所で争うことができます。
高等裁判所の判断にも不服がある場合には、最高裁判所に不服申立ができますが、ほとんどの場合は上告理由なしとして高等裁判所の判断が最終判断となります。

 

なお、その後に推定相続人が改心したなどの事情で、排除を取り消すこともできます(民法894条)。
この場合も、被相続人が、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に排除の取消の審判申立をします(家事事件手続法188条1項)。

 

⑵ 遺言による排除

 

生きている間に、家庭裁判所に相手を排除して欲しいというのは、心理的になかなか抵抗があるでしょう。
そのような場合のために、民法は遺言によって推定相続人を廃除できるようにしました。
この場合、被相続人は、すでに亡くなっているので、遺言執行者が相続開始地(亡くなった方の最後の住所)を管轄する裁判所に推定相続人廃除の審判を申立てます(民法893条、家事事件手続法188条1項)。
排除が相当かどうかについては、生前排除と同じように、排除申立の対象となっている推定相続人の意見も聞いた上で裁判所が判断します。
不服申立などについては、上記⑴の生きている間にする場合と同様です。

 

3 排除されるとどうなるか?

審判が確定すると、推定相続人は、その被相続人との関係では最初から相続人ではなかったことになります。
排除者に子供がいるような場合には、その子供が排除者に代わって相続することができます(代襲相続)。

 

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