財産分与の裁判で建物の所有者の決定をこえて明渡しまで命じることができるか?

2020-11-01

離婚裁判になるケースでは、通常は、夫婦が別居しています。

夫が家を出て、妻が子供達と自宅に残り、離婚時に自宅をローンを含めて夫のものとすることはよくあります。

協議や調停で解決するような場合は問題になることが少ないですが、判決にまで至るケースでは、妻が家を明け渡さないというケースがあります。

そのような場合にそなえて、離婚裁判や財産分与審判で自宅をどちらのものにするかという判断を超えて、自宅を明け渡せとまで命じることができるのかが争われました。

結論としては、最高裁は、自宅の明け渡し命令までできると判断しました。

 

なお、財産分与は、離婚成立後2年間は請求可能です。

離婚と同時解決する場合には、離婚裁判で判決という形で解決することになり、財産分与単独の場合は、審判という形で解決することになります。

 

以下、最高裁判判例について、詳しく説明します。

 

【事案の概要】

平成12年 結婚

平成29年 離婚

夫婦共有財産として、抗告人名義の自宅建物があったが、相手方が居住していた。

この建物について財産分与の取り決めをしないまま離婚をしたため、離婚後に、抗告人が、家庭裁判所に財産分与調停を申立て。

調停で合意に至らなかったため、家庭裁判所で審判。

審判に不服があるとして、高等裁判所に即時抗告。

高等裁判所の決定に不服があるとして最高裁に不服申し立て。

令和2年8月9日、最高裁判所第一小法廷が、高裁決定を破棄して本決定を行う。

 

【最高裁判所令和2年8月6日第一小法廷決定の内容】

原審である高等裁判所は、自宅建物は抗告人のものとし、代償金として抗告人が相手方に209万9341円を支払うよう命じ、明け渡しまでは命じることができないとしました。

その理由として、建物の明け渡しは、所有権に基づく明け渡し請求を地方裁判所でするのが本来の形であるからだとしています。

 

これに対して、最高裁判所は、次のとおり判示しました。

「財産分与審判において、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めることとされている(民法768条3項)。もっとも、財産分与の審判がこれらの事項を定めるものにとどまるとすると、当事者は、財産分与の審判の内容に沿った権利関係を実現するため、審判後に改めて給付を求める訴えを提起する等の手続きをとらなければならないことになる。そこで、家事事件手続法154条2項4号は、このような迂遠な手続きを避け、財産分与の審判を実効的なものとする趣旨から、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者に対し、上記権利関係を実現するために必要な給付を命ずることができることとしたものと解される。そして、同号は、財産分与の審判の内容と当該審判において命ずることができる給付との関係について特段の限定をしていないところ、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の財産につき、他方当事者に分与する場合はもとより、分与しないものと判断した場合であっても、その判断に沿った権利関係を実現するため、必要な給付を命ずることができると解することが上記の趣旨にかなうというべきである。
そうすると、家庭裁判所は、財産分与の審判において、当事者双方がその協力によって得た一方当事者の所有名義の不動産であって他方当事者が占有するものにつき、当該他方当事者に分与しないものと判断した場合、その判断に沿った権利関係を実現するため必要と認めるときは、家事事件手続法154条2項4号に基づき、当該他方当事者に対し、当該一方当事者にこれを明け渡すよう命ずることができると解するのが相当である。

 

【参考法律】

家事事件手続法154条

2項 家庭裁判所は、次に掲げる審判において、当事者(第二号の審判にあっては、夫又は妻)に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
四号 財産の分与に関する処分の審判

 

【コメント】

最高裁決定がいう通り、いくら建物が抗告人のものだといったところで、相手方が出て行ってくれなければ、別途明け渡し裁判をしないといけなくなるので、財産分与審判の中で明け渡しまで命じることができるとするのが現実的でしょう。

法律の条文解釈上も、無理のない解釈だと思います。

相手方にとっても、特段不利益はないので、極めて妥当な判例です。

 

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