再婚相手の子を養子にした場合の養育費に関する裁判例

2020-01-01

養育費の支払義務者である元夫が再婚し、再婚相手の子を養子にしたことを理由に養育費減額請求をした場合の裁判例として、札幌高等裁判所平成30年1月30日決定をご紹介します。

なお、この決定は、養育費算定表が改定される前のものですが、改定養育費算定表も基本的な考え方は旧養育費算定表と同じため、この裁判例を応用すれば計算することは可能です。

 

【事案の概要】

・子供が1人いた夫婦が、離婚時に養育費を月額4万円と決めた。
・元夫が再婚し、再婚相手の子2人を養子にしたことを理由に、月額6616円にするように調停を申立てた。

 

【裁判所の決定内容】

裁判所は、離婚時の養育費が標準算定式(養育費算定表の元になっている計算式)で算出される結果より高額であることを考慮して、再婚後の事情を考慮して算出した養育費(9254円)よりも高額な2万円と決定した。

 

【考え方】

前提として、標準算定式の知識が必要となるので、簡単に説明します。

標準算定式は、まず各自の基礎収入を算出します。

基礎収入は、年収にその収入を得るために必要な経費や税金などを考慮して算出したもので、金額に応じて一定の割合をかけます(新旧算定表で乗じる率が違う)。

算出した支払義務者の収入のうち、いくらを子供に振り分けるかを生活費指数を用いて算出する。

子供に振り分けられる金額=義務者の基礎収入×子供の生活費指数/(子供の生活費指数+義務者の生活費指数)

生活費指数とは、大人を100とした場合の子供の生活費、14歳までは55、15歳以上は90(新算定表では、62と85)

 

以上を前提に、本裁判例は以下の計算方法で養育費を算出しました。

 

1 離婚時の標準算定式により算出される養育費は、月額1万5282円
2 現在の状況を標準算定式に当てはめて養育費を計算
① 元夫の基礎収入
年収240万円×39%=93万6000円
② 元妻の基礎収入
年収237万5275円×39%=92万6357円
③ 再婚相手の基礎収入
年収93万6000円×39%=37万4400円
④ 養子の養育費のうち元夫が負担すべき生活費指数
基礎となる生活費指数55
元夫と再婚相手の収入の比率から元夫の負担割合を算出
55×①/(①+③)
≒39
⑤ 元夫の収入のうち、元妻との子に割り振られるべき金額
①×55/(100+55+39×2)≒22万0944円
⑥ ⑤のうち元夫が負担すべき金額
⑤×①/(①+②)≒11万1044円
月額=11万1044円/12
≒9254円

 

2 従前の養育費の合意の趣旨による修正
計算上1万5282円となるが、4万円で合意している。
これは、一般的な金額より2万4718円多く払うという趣旨と理解できる。
この金額についても、新たに養子になった子らにも割り振るべきであるから、元妻との子に割り振られるのは、次の金額となる。
2万4718円×55/(55+39×2)≒1万0222円
上記金額を標準算定式で算出した金額⑥9254円に加算する。
9254円+1万0222円=1万9426円
その他一切の事情を考慮し月額2万円とする。

 

【コメント】

上記は、義務者が再婚して再婚相手との子を養子にした場合の計算式としては、一般的なものです。

改定養育費算定表でも応用することが可能です。

 

従前の養育費の考慮方法については、上記のように、離婚時の一般的な金額と合意金額の差額を加算するという方法と、一般的な金額と合意金額との比率を新しく算出された計算結果に加算するという方法があります。

どちらも裁判例があるため、どちらの方法が採用されるかはやってみないと分かりません。

ただ、今回のように、子供が増えたから減額を求めるというケースでは、もともと差額分を払う意思も能力もあったのですから、あとは各子供たちで振り分ければよいということで、差額を加算というするという方法になじみやすいと思います。

そうではなく、収入が大幅に減少したから減らして欲しいというケースでは、単純に差額を加算したのでは支払えないという状況が出てくるため、比率で考える方法がなじみやすいでしょう。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
なごみ法律事務所
http://nagomilaw.com/
住所:〒104-0032 東京都中央区
八丁堀4-12-7サニービル5階A
TEL:03-5542-5210
弁護士 本 田 幸 則
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Copyright(c) なごみ法律事務所 All Rights Reserved.