養育費・婚姻費用の増減額はいつから認められる?
養育費や婚姻費用(離婚が成立するまでの生活費)は、取り決めをした後に事情の変更があった場合には増額または減額の請求が認められます(民法880条参照)。
では、実際に増額または減額が認めれられるのはどのタイミングでしょうか?
①増減額の事情が生じたとき?
②増減額を主張したとき?
③裁判所が審判を下したとき?
実は、この点については具体的な事情によって裁判例はまちまちです。
以下、場合分けをして、おおよその傾向を説明します。
1 婚姻費用の減額が生じるのはいつから?
婚姻費用の減額がいつから生じるかについては、請求時(通常は調停・審判申し立て時)とするものが、やや多いですが、審判時を基準とするものもあり、少数ですが減額事由発生時とするものもあります。
婚姻費用は、日々の生活費であることから、支払を受けたお金については生活費として使っていることも多く、減額事由が生じたあとに「もらいすぎていたのだから返せ」というのは酷だという面と、そうは言っても請求を受けた後は減額されることは予想できたし、現に減額事由はあるのだから、権利者に酷という事情もないでしょう。
という理屈のようです。
2 婚姻費用の増額が生じるのはいつから?
婚姻費用の増額については、ほぼすべての裁判例が請求時(通常は調停・審判申し立て時)を基準に増額を認めています。
これは、権利者側に増額した婚姻費用をもらう権利があることと、「決まった金額を払っていればよい」と思っていた義務者側の認識とのバランスを図ったもののようです。
3 養育費の減額が生じるのはいつから?
養育費の減額の効果が生じる時期も、婚姻費用の場合と同様に請求時(通常は調停・審判申し立て時)とするものが多いですが、審判時を基準とするものもあり、少数ながら減額事由発生時とするものもあるという状況です。
最近のものでは、東京高等裁判所平成28年12月6日決定が、養育費の減額は、請求時からであるとしています。
ただ、同じ東京高裁が、審判時を基準とする決定をしているものもあります。
後者の裁判例では、請求時とすると、一度支払った養育費の一部を返すことになり、母子が困窮することになりかねないとしていますが、前者は、妻が再婚したことにともない養育費をゼロとする請求であったことから、このような配慮をする必要がないからかもしれません。
4 養育費の増額が生じるのはいつから?
養育費の増額が生じる時期については、審判結果だけを見ると、増額事由発生時とするものと請求時(通常は調停・審判申し立て時)とするものが多いですが、その審判内容をみると増額事由発生時としているものは、請求後に増額事由が生じていることから、請求時を基準としているといってよいでしょう。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。