面会交流審判が未確定の段階での面会交流拒否に対する損害賠償請求は?
離婚して相手に親権がある場合に、面会交流を求めたが相手が応じない。
調停、審判となったけれど、結論が出るのを待っていられない。
そんな段階でも面会交流権の侵害を理由に損害賠償を請求することができるでしょうか?
この点について、東京地方裁判所立川支部平成28年2月5日判決は、損害賠償請求は認められないとしました。
〈裁判所が損害賠償請求を否定する理由〉
裁判所は、子の福祉の観点から、監護親は、非監護親と子供とを適切に面会できるようにする義務があるし、非監護親には子供に面会する権利があるとします。
しかし、調停や審判などで具体的な方法が決まるまでは、監護親の面会交流をさせる義務や、非監護親の面会交流権は抽象的な権利にとどまるとします。
そして、結論として、抽象的な権利にとどまるから、これに反したからといって、即「監護親の法的保護に値する権利が侵害されたとまではいえない」としています。
〈コメント〉
結論としては、法律的な観点からは普通だと思います。
面会交流について、当事者間で話し合いができるのが望ましいのですが、どうしても合意ができない場合は調停となってしまいます。
そうすると、調停は、1か月~1か月半に1度くらいしかなく、年末年始やお盆の期間は2か月くらい間が空いてしまうこともあることから、最終的な結論が出るのが1年以上先ということもよくあります。
大人にとっては1年程度は大したことがないかもしれませんが、子供、とくに乳幼児は1年も会わないと全然変わってきます。
最後に会ったときは何もできなかった赤ちゃんが、次に会ったときは歩き回って、言葉を発します。
そして、こどもは非監護親のことを覚えていません。
子供に忘れられるのが怖い、子供の成長の過程を見たい、そんな風に思うのは当然だと思います。
そのためには、調停・審判の結論を待っていられないというのも当然でしょう。
かといって損害賠償請求をしてしまったら、ただでさえ面会に拒否的な相手が、余計に面会を嫌がるでしょう。
現行制度では、こういう問題を解決するのに限界があると思います。
面会交流に関しては、もっと集中的に短期間で解決できる制度を作っていただきたいものです。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。