子供との交流が長く途絶えていた場合は短時間の面会交流から始める?
東京高等裁判所が、子供達と5年5か月会えなかった父親が求めた面会交流について、子供達と父親が長期間会っていなかったことを理由に最初の面会は短時間とし、徐々に時間を延ばしていくのが相当であるとの審判をしました。
以下、もう少し詳しく紹介します。
1 裁判所の認定した事実の概要
父親と母親は、平成15年に結婚しました。
2人の間には、平成16年生まれの長女と、平成19年生まれの次女がいます。
平成21年に父親が脳腫瘍で入院したのをきっかけに、母親が子供達とともに実家へ帰り生活するようになりました。
平成22年には、父親は職場復帰できる程度の回復しましたが、別居状態が継続し続けました。
父親は平成21年に別居して以降子供達に会えなかったことから、平成25年に面会交流調停を申立てました。
しかし、面会交流について合意ができず平成26年に審判となり、東京家庭裁判所が月1回、1回当り6時間の面会交流を認める審判をしました。
この東京家庭裁判所の結論が不当だとして、母親が東京高等裁判所に抗告という手続きをしたのが本件です。
2 東京高等裁判所の審判の概要
上記のような事情で、東京高等裁判所平成28年4月26日審判は、父親と子供達の面会交流を認めること自体に子供達の福祉を害する事情は認められないとしながら、父子交流が長らく途絶えていたことによる父子間の心理的距離は、面会交流を重ねていくことによって解消できるものであるとしました。
そして、面会交流を月1度、1回目から3回目までは2時間、4回目から7回目までは4時間、8回目以降は6時間と段階的に延ばしていくこととしました。
また、1回目と2回目は母親の立ち会いを認めるのが相当であるとしました。
3 個人的意見
長女は5歳の時に、次女は2歳の時に別居しており、それ以降会っていないわけですから、子供達にとっては父親といわれても、感覚的には「よそのおじさん」といったものではないかと思います。
そうすると、子供のためを思えば、今回の審判のように、短い時間から始めて、徐々に長くしていくというのもやむを得ないでしょう。
他方で、「じゃあ、面会を拒否し続ければ、裁判所も長時間の面会が認められないという判断をしてくれるので、面会を拒否した方が得をするという結果になるじゃないか」という意見もあるでしょう。
しかし、親の都合で別居・離婚となるのですから、親の都合よりは子供の都合を優先すべきであり、身勝手な行為をした方の親は何らかの形でペナルティを科すという形で解決するしかないのではないかと思います。
なごみ法律事務所
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弁護士 本 田 幸 則
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。