円満調停に対して離婚調停を申立てるべき?その逆は?
1 円満調停に対して離婚調停を申立てるべき?
「相手から円満調停を起こされたんですが、離婚したいんです」という相談を受けることがあります。
そのような円満調停を起こされた場合に、こちらからも離婚調停を申立てるべきでしょうか?
結論から言うと、法的には離婚調停を申立てる意味はありませんが、申立てた方がよいと考えます。
理由は2つあります。
1つは、離婚調停を起こすことで、調停委員と相手方に離婚意思を明確に示すとともに、離婚条件を伝えることで、調停1回目から離婚について具体的な話ができる可能性があるからです。
もっとも、円満調停に対して、書面で明確に離婚意思を示す答弁書を提出し、離婚条件について記載しても同様の効果が狙えます。
もう一つは、相手が円満調停を取り下げると困るからです。
日本の法律では、いきなり離婚訴訟はできず、まずは調停を申立てて、それが不成立となった場合に訴訟ができることになっています(調停前置主義)。
この調停は、円満調停の不成立でもいいのですが、こちらが離婚意思を示した途端、相手が円満調停を取り下げると、その調停はなかったことになるので、また一から調停のやり直しとなります。
このようなことに対応するために、念のために離婚調停を申立てておいた方がよいでしょう。
なお、既に円満調停を3回、4回と続けているのであれば、わざわざ離婚調停を申立てる必要はないと考えます。
なぜなら、調停前置の要件は、必ずしも不成立となる必要はなく、裁判所で話し合ったけれども合意に至らなかったといえればよいからです。
ですから、調停が3回も4回もあったんだといえれば、調停前置の要件は満たして離婚訴訟ができるからです。
2 離婚調停に対して円満調停を申立てた方がよいか?
上記とは逆に、「相手に離婚調停を起こされたんですが、離婚したくありません」というご相談もあります。
この場合は、円満調停を申立てることとお勧めします。
なぜなら、近年、裁判例の離婚理由として、「被告は離婚したくない旨主張するが、原告との関係修復のために行動した形跡がない」とか、「被告が離婚したくない理由は、もっぱら経済的理由である」といった趣旨のものが散見されるため、夫婦関係修復に向けて行動していることをアピールしたいからです。
個人的には、人の本心なんて裁判所で少し話しただけでは分からないし、弁護士が介入すれば、むしろ当事者同士で直接やり取りはできないのに、関係修復の努力が見られないとか、離婚したくないのはお金のためだとかいう判決自体がどうかと思いますが、少数とはいえ、このような裁判例がある以上、本気で離婚したくないならば、安全策として円満調停を申立てた方がよいと考えます。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。