1回だけの不貞行為(不倫・浮気)でも離婚理由になります
「不貞行為(不倫・浮気)をしたのは一回だけだから離婚が認められるはずがない」
そんな主張が通るでしょうか?
結論としては、たとえ不貞行為が1回だけでも、裁判をすれば離婚も慰謝料も認められます。
慰謝料も不貞による離婚慰謝料の相場から下がることはありません。
なぜなら、離婚理由については、民法770条1項に規定がありますが、その1号に「配偶者に不貞な行為があったとき」と書かれているからです。
なお、不貞行為について、最高裁判所は、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをい」うとしています。
ところが、ネット上では、「1回の不貞で離婚を認めた裁判例はない」と書かれていたり、離婚理由となる不貞行為は、「継続的に」あるいは、「反復して」なされたものでなければならないと解説しているものが散見されます(弁護士ですらそう書いている方がいます)。
このような間違った情報が流布しているのは、おそらく東京地裁昭和30年5月6日判決や千葉地裁昭和40年2月20日判決といった古い判決で、不貞行為を認定しつつ、離婚は認めないとした裁判例があるからではないかと思います。
たしかに、民法770条2項には、「裁判所は、前項第一号から四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる」と記載されており、古い裁判例では少数ながらこの条項を適用しているものがあります。
しかし、近年の裁判例で、このような例外にあたるとした裁判例は見たことがありません。
古い裁判例でさえ、上記2例くらいで、他に見かけないので、現代では、まずこのような結論になることはないでしょう。
なお、1回の不貞で離婚を認めた裁判例はないという記載があるものもありますが、そんなことはありません。
正確には、1回の不貞で離婚を認めた裁判例で、判例集に掲載されたものはないというのが正しいです。
では、なぜ判例集に乗らないのか?
それは、法律から導かれる当然の結論だからです。
たとえば、次のような事例を考えてみてください。
AさんがBさんにお金を貸しました。
Bさんが返してくれないので、AさんはBさんを訴えました。
裁判では、AさんがBさんにお金を貸したのに、Bさんが返さないことが認められて、Aさんは裁判に勝ちました。
単に、「借りた金は返せ」という判決が出ただけです。
こんなことが判例集に載るでしょうか?
載るはずがありません。
判例集に乗るのは、それが珍しいとか、各地の地方裁判所の結論が別れている点について上級裁判所が判断したといった場合です。
つまり、不貞行為をしておきながら離婚を認めないという、変わった判決だから判例集に載るのです。
1回の不貞では離婚できないと思い、興信所に高額の費用を支払って調査を継続したり、離婚をあきらめたりという方がいらっしゃいますが、あきらめる必要はありません。
1回でも不貞行為の証拠があれば、十分離婚は認められます。
素人判断はやめて、ぜひ一度、離婚に詳しい弁護士にご相談ください。
なお、1回だけの不貞行為の場合、十分な証拠が集められなくて、証拠不十分で不貞行為自体が認められず、離婚が認められないということはあり得ます。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。