離婚に強い弁護士の探し方、選び方は?
離婚で弁護士に依頼するとき、少しでも離婚に強い弁護士に依頼したいですよね?
では、離婚に強い弁護士とはどんな弁護士でしょうか?
この「離婚に強い弁護士」について、弁護士から見た基準と一般の方が考える基準が違うように思います。
そこで、まず、弁護士の立場からみて離婚に強い弁護士とは、いったいどんな弁護士なのかご理解いただいたうえで、依頼をするかどうか決断する際にどんな点に注目すれば良いか考えてみましょう。
ところで、たまに「離婚専門ですか?」と聞かれることがありますが、弁護士会の指針で専門と名乗ってはいけないことになっています。
それにもかかわらず「離婚専門です」と答える弁護士には用心しましょう。
1 離婚に強い弁護士とは?
離婚に強い弁護士と聞いて、どんな弁護士をイメージしますか?
・相手をねじ伏せて、あなたの思い通りにしてくれる弁護士?
・相場より高い慰謝料をとってくれる弁護士?
・裁判で絶対に勝てる弁護士?
残念ながら、そんな弁護士はいません。
まあ、相手が気の弱い人だったりすると、不利な要求にも応じるかもしれませんが、その場合、そもそも弁護士でなくても解決できたのではないかと思います。
では、弁護士の立場からみて、「もし自分がトラブルに巻き込まれたら、こんな人に依頼したいな」と思う弁護士とはどんな人でしょうか?
私が出会った中で、「こんな人に依頼したい」と思う弁護士の共通点は以下の6点です。
① 知識・経験がある
② コミュニケーションがとりやすい
③ 戦術的ではなく、戦略的に考えられる
④ 不利なことも教えてくれる
⑤ 証拠分析力がある
⑥ 攻撃的でない
順にもう少し詳しく説明しましょう。
① 知識・経験がある程度ある
ア なぜ知識・経験が必要なのか?
法律上の問題は本を調べれば分かります。
最近だとネット検索すれば、知りたいことを弁護士が解説してたりします。
それでも、やっぱり知識・経験は必須だと考えます。
なぜなら、全く知識がないと、そもそもその点について争う余地があるかどうかに気付けません。
気付かないものは調べようがありません。
気づいたとしても、ある程度あたりがつけられないと、調べるのにものすごく手間がかかる=解決が長引くということになりかねません。
もう一つ重要なのは、経験がないと現場の裁判官の感覚が分からないということです。
本に書いてあることと、裁判所で裁判官に言われることは、必ずしも一致しません。
また、微妙な判断の際に、「今の東京家裁の傾向だと○○だろうな」という感覚も重要になってきます。
ですから、あなたが相談したいことについて、その弁護士に知識・経験があることは必須になります。
これらは弁護士としての視点ですが、相談者側からの視点で見ても、その弁護士に知識・経験があるかは非常に重要です。
あなたは、弁護士に相談するときに、おおよその見通しを知りたいと思いますが、これも知識・経験がないと分からないことです。
さすがに「どうなるか分かりませんが、調べますからご依頼ください」と言われて依頼する方はいないでしょうが。
イ 相談時に気をつけるべきポイント
一般の方が弁護士に知識・経験があるかを確認するのは難しいでしょうが、たとえば、何人かの弁護士に相談してみて、他の弁護士は即答できたのに、その弁護士は即答できないという場合は知識・経験があまりないと推定できるでしょう。
それ以外では、たとえば、以下のような離婚問題を扱う弁護士ならすぐに回答できる質問に回答できるかを確認してもいいかもしれません。
ただし、弁護士も試されるのは気持ちのいいものではないので、相談内容の中で自然に質問してください。
・相手の不貞の証拠が1回分しかないんですが、離婚できますか?→YES
・自宅購入時に頭金を一方の親の援助で、残りをローンで購入した場合の財産分与の計算方法は?
・相手の浮気が原因で別居になっているのに、相手から婚姻費用を請求された場合、支払いに応じなければならないのですか?→NO
・年金分割って、年金が出たら相手からもらえるんですか?→NO
・協議離婚の合意書だけで年金分割できますか?→NO
なお、たまに弁護士何年目かや、離婚事件を何件やったかを聞かれることがありますが、意味がありません。
弁護士になって何年目かとあなたが相談したい分野の知識・経験は比例するものではありません。
また、受任した件数が多いと何件受任したかなんて覚えていないので、質問されても「たくさん」としか答えられません。
大切なのは、あなたが相談したい分野についてどれくらい経験があるかと、そこからどれくらい学んだかです。
これらは、残念ながら具体的な相談の中で見極めていくしかありません。
② コミュニケーションがとりやすい
ア なぜコミュニケーションがとりやすいことが大事なのか?
弁護士は、あなたの代理人です。
ですから、あなたと適切にコミュニケーションをとり、あなたの希望にそうように活動する必要があります。
あなたの話しを聞いてくれない、あなたが話しにくいと感じるような弁護士に依頼するべきではありません。
また、相手弁護士、裁判官などとの関係でもコミュニケーション能力は重要となります。
交渉や裁判は、法的知識を使って相手弁護士や裁判官を説得する作業です。
たとえ素晴らしい法律知識があったとしても、それを上手く相手に伝えられないのでは意味がありません。
間違っていただきたくないのは、コミュニケーション能力があるということは、口が上手いということではありません。
大切なのは、きちんと相手の話しを聞いている。筋道だてて論理的に話せるということです。
そんなこと、弁護士なら当然できる?
いえ、意外とそうでもないのです。
イ 相談時に気をつけるべきポイント
コミュニケーション能力については、実際に相談を受けてみれば、だいたい分かると思います。
きちんとあなたの話を聞いてくれるか、疑問に答えてくれるか、あなたが分からないと言ったら分かるように説明し直してくれるか、そういった点に気をつけながら相談を受けてみてください。
③ 戦術的ではなく、戦略的に考えられる
ア 戦術的ではなく戦略的とはどういうことか?
戦術とは、その場の争いを勝つ方法です。
戦略とは、総合的な勝利を得る方法です。
弁護士のなかには、とにかく相手に反論することばかり考えて、総合的な損得勘定や最終目的を見失っているのではないかという方がいます。
この戦略的に考えることがとくに重要になるのは、子供の親権・面会交流で争っている案件と、相手からの離婚請求を拒否したいという案件です。
これらの案件で、あまり些末な点で相手を責めすぎると、相手に、「こんなやつと面会させたくない」とか、「こんなやつとは絶対離婚してやる」と思われて、本来の目的が達成できないことがあります。
他にも、慰謝料の金額で数万円にこだわって解決が長引き、結果的に慰謝料より多くの婚姻費用を支払うことになるというケースもあります。
また、浮気が離婚原因の場合で、相手が恥ずかしい写真を持っているような場合は、慰謝料の金額にこだわるより、写真などのデータを確実に消去してもらう方を優先するのかどうかなどといった判断も必要になります。
イ 相談時に気をつけるべきポイント
この戦略的に考えられるかどうかを相談時に判断するのは難しいでしょう。
ただ、あまりにも攻撃的な方針の弁護士は気をつけた方がいいかもしれません。
また、「法律はこうなってます」だけで説明を終わる弁護士も不安です。
あなたから積極的に、こんな主張をして不利にならないかを質問して、納得できる回答をくれる弁護士を選びましょう。
④ 不利なことも教えてくれる
ア なぜ不利なことも教えてくれる弁護士がいいのか?
いくら相談した弁護士が調子のいいことを言っても、相手がいることですから、思い通りに進むなどということは滅多にありません。
あなたに不利な結論になることもあるのです。
そうなった場合にどうするかも事前に考えられるように、きちんと不利な結論になる可能性も教えてくれる弁護士に相談したいところです。
もちろん、その不利な問題への対処法がないかも質問しましょう。
イ 相談時に気を付けるポイント
相談のときは、その弁護士さんが、「あなたの主張にはこんな問題がありますよ」とか、「その事実が認められればいいですが、証拠がないのでどうなるか分かりません」などと、あなたの思い通りにならない可能性があることをきちんと伝えてくれるかどうかに気をつけておきましょう。
もっとも、ごくまれに負けようがないような案件もありますが・・・
⑤ 証拠分析力が高い
ア なぜ証拠分析力が大事なのか?
弁護士として相手弁護士に感心するのは、「よくこんな細かいところまで見ているな」とか、「なるほど、この証拠をこう解釈すれば、こっちともつながるし、全体的な整合性もとれるな」など、証拠を上手く使える弁護士です。
裁判では、事実を法律に当てはめて結論を導きますが、法律を知っているかどうかや、法律の解釈で結論が変わることはそれほど多くありません。
しかも、法律的な知識は、調べれば本に書いてあります。
実際の裁判では、法律の問題ではなく、自分が主張している事実の方が真実なのか、相手が主張する事実の方が真実なのかという争いの方が圧倒的に多いのです。
つまり、きちんと自分に有利な証拠を出せるか、出した証拠が自分に有利なものであると誰もが納得するような説明ができるか、相手の提出する証拠に対して的確に批判できるかが重要になります。
ですから、手間を惜しまずに証拠を確認し、証拠をしっかり分析できるというのは弁護士として非常に重要な能力なのです。
イ 相談時に気をつけるべきポイント
証拠をきちんと見ているかは、その弁護士が、相談時に「証拠になりそうなものがあれば持ってきてください」というか、実際に持っていったときに見てくれるかで判断しましょう。
初回の相談でじっくり証拠を検討することまでは難しいですが、全く証拠を確認しない、証拠があるかどうか確認すらしない弁護士には、私は依頼したくありません。
ましてや、電話相談で済ませてしまうというのは考えられません。
⑥ 攻撃的でない
ア なぜ、攻撃的な弁護士は避けた方がいいのか?
弁護士から、「あなたのために戦います!」「相手を叩きのめしてやりましょう!」と言われたら心強いかもしれません。
ですが、その攻撃性が、あなたの利益を損なうかもしれません。
アメリカの弁護士を対象とした調査によれば、協調的な交渉スタイルの弁護士は65%、主張型(攻撃型)の交渉スタイルの弁護士は24%だそうです。
そして、交渉の有効性について評価した結果、有効とされる交渉をしている弁護士のうち、75%が協調型で、主張型は12%だったとのことです。
また、別の調査では、協調型の交渉の方が、平均して、得られた利益が40%程度高かったというものもあります。
つまり、攻撃的な弁護士に依頼すると心強いかもしれませんが、損をする可能性が高いのです。
あなた自身も振り返ってみてください。
「妥協してもいいかな?」と思っていたけれど、相手の高圧的な態度に「絶対譲らない」と気持ちを変えたことはありませんか?
イ 離婚に強い弁護士を選ぶときに気をつけるべきポイント
相談のときに、あまりにも威勢のいい言葉をつかう弁護士は気を付けた方が良いでしょう。
2 どうやって離婚に強い弁護士を探せばいい?
さて、離婚に強そうかどうか、ある程度見分けかたが分かったとして、どうやって探せばいいのでしょうか?
① まずは、インターネットであたりをつけましょう。
このサイトをご覧になっているということは、インターネットで検索されたのでしょうから、同じように「離婚 弁護士 東京」などと入れてもいいかもしれません。
でも、この検索結果で引っかかるのは、ホームページ作成に力を入れている弁護士、ポータルサイト(宣伝用のサイト)にお金を払っている弁護士だけです。
もちろん、自分で離婚問題について宣伝しているわけですから、ある程度自信があるのでしょうが、必ずしも離婚に強い弁護士とは限りません。
まずは、ここから相談する弁護士を絞らないといけませんが、正直なところ、ネット上の情報だけでは本当に離婚に詳しいのかどうか分かりません。
ですから、最初は自宅や勤務先に近いとか、なんとなくよさそうレベルで絞ってください。
② 口コミはあてにならない。
ネット検索すると、その事務所の口コミが出てくることがありますが、弁護士の口コミほどあてにならないものはありません。
なぜなら、もし優秀な弁護士で、あなたに有利な解決をした場合、それは相手方にとっては不利な解決です。
当然、相手方にとっては、嫌な弁護士でしょう。
また、ご相談にいらっしゃる方の中には、失礼ながら、あまりにも非常識な請求をして欲しいという方もいらっしゃいます。
そういう方に限って、「無理ですよ」というと怒り出します。
いい口コミが書かれるはずがないですよね?
さすがに、その弁護士に書類をなくされたとか、お金を横領されたとかいう前歴がある場合は相談候補から外した方がいいですが、そうでない場合は、口コミ頼って選ぶのはやめた方がいいでしょう。
③ とりあえず会って見ましょう。
インターネットなどである程度絞ったあとは、上記1で書いた点に気を付けて相談してみてください。
また、ホームページを持っていないから駄目な弁護士というわけでもありません。
友人知人の紹介で探すという方法もあります。
ただし、その知人の方には相性がよくても、あなたには相性が悪いかもしれません。
友人、知人などの紹介による弁護士でも、上記1で書いた点の点に気を付けて相談してみてください。
もっとも、「紹介されたから断りづらい」という方は、最初からインターネット検索に頼った方がいいでしょう。
3 弁護士を選ぶときによくある勘違い
弁護士である私が考える離婚に強い弁護士は上記のとおりですが、どうも一般の方が誤解しているのではないかと思うのが以下の点です。
Q1 連絡をするといつでも連絡が付き、すぐに対応してくれるのが良い弁護士?
A2 間違いです。
たしかに、依頼者にとって、連絡するといつでも連絡がつき、すぐにあなたのために動いてくれる弁護士がいれば、「頼もしい」と思うかもしれません。
しかし、「いつ電話しても弁護士が対応してくれて、すぐに動いてくれる」というのは、依頼がない不人気な弁護士以外には考えられないのではないかと思います。
一般の方にはイメージしにくいかもしれませんが、弁護士が平均何件くらい依頼を抱えているかご存じですか?
厳密な調査はありませんが、30~40件くらいの依頼を抱えているといわれています。
債務整理に熱心な事務所の弁護士だと、一人で100件以上抱えていたりします。
依頼に至らない相談だけの案件も加えると、毎日何件もの予定が入っているのが普通です。
そうすると、なるべく依頼者のために早期に活動はしますが、今すぐに対応できるかといわれると、限界があるのは想像できるのではないでしょうか。
もちろん、たまたま予定が空いているときや、「なぜか今週は余裕があるなぁ」というときはありますが、一般的には、いつでも連絡が取れて、いつでも相談に乗ってくれる弁護士には、私なら依頼はしません。
Q2 相手の弁護士は、離婚に詳しくない方がいい?
A2 間違いです。
私は、相手の弁護士に離婚の知識がなくて得をしたというケースは1例しか知りません。
むしろ、相手がもう少し離婚に詳しいと良かったのにと思うことの方が多くあります。
当たり前と思うかもしれませんが、弁護士は、何とか依頼者に有利に解決しようとします。
つまり、弁護士が、「離婚は詳しくないから、相手の弁護士に従おう」などと思うことは決してないのです。
そうすると、離婚の知識がない弁護士が相手だと、「え!!そこで争うの?」といったことや、「そんな主張、通るはずないでしょ」と思うような無駄な争いが生じます。
そして、交渉では解決せず、調停、裁判へと移行することになり、しかも、調停や裁判がダラダラと続くことも多くあります。
これに対して、相手の弁護士も離婚に詳しい場合、最初は自分の依頼者に有利な主張をしますが、お互いの主張を見て「裁判をするとこれくらいかな」という共通の認識ができます。
そうすると、交渉で微調整をして解決ということも多くなります。
なお、明らかにこちらが勝ち(相手が負け)の案件で、反論らしい反論がないまま終わる案件はありましたが、それは、相手弁護士に知識がないというより、引き受けたはいいものの勝てる見込みがないため手抜きをしているのではないかという印象です。
また、相手が弁護士を付けずに、こちらの条件をそのまま受け入れるというケースはあります。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。