W不倫の法律関係
W不倫、つまり双方既婚者の不倫関係(不貞行為)の場合、損害賠償等の法律関係はどうなるのでしょうか?
分かりやすいように、A夫婦(A男、A子)とB夫婦(B男、B子)がいて、A男とB子が不倫したとしましょう。
この場合、A子はA男とB子に損害賠償請求が出来ます。
A男とB子の損害賠償支払い義務は、不真性連帯債務、つまり、2人で1つの責任を負うことになります。
同じように、B男もB子とA男に損害賠償請求をすることができます。
A夫婦、B夫婦ともに離婚した場合は、それほど複雑にはなりません。
A子がA男とB子に損害賠償請求をし、B男がA男とB子に損害賠償請求をすればいいだけです。
ところが、離婚せずにやり直すことになったら、ちょっと不公平ではないかと思うような結果となります。
たとえばA夫婦のみ離婚し、B夫婦が離婚しなかった場合を考えてみましょう。
同じ不倫を原因とする損害賠償請求ですが、損害額の算定において、不倫の結果離婚したかどうかが大きく変わります。
具体的には、離婚した場合は200万円くらいになることが多く、離婚しない場合には50~100万円程度となります(具体的な事情によって、この範囲外になることもあります)。
そうすると、上記のようにA夫婦のみ離婚した場合、A子は、A男とB子に合計200万円程度請求出来るということになります。
他方、B男は、A男とB子に100万円程度しか請求出来ないということになります。
しかも、B男はB子とやり直すのですから、実質的にはB子が負担する損害賠償を夫婦2人で負担することになります。
上記は、双方とも配偶者にばれたことを想定していますが、片方のみばれて、もう片方はばれておらず、かつ、ばれたくないという場合は、非常に弱い立場になりますから、裁判をした場合に想定される以上の金額で示談しなければならないこともあるでしょう。
さらに、不倫相手の子供を妊娠したことも想定してみましょう。
たとえば、B子がA男の子供を妊娠したとします。
この場合、法律上は、子供はB男の子供とされます。
すぐに気づけば、嫡出否認や親子関係不存在確認請求などの手続で、B男の子供ではないとされます。
B男の子供でなくなると、父親がいなくなるので、Aが認知することも出来ます。
そうすると、B男を筆頭者とする戸籍に妻であるB子が載り、B子の子供も乗るけれども、父親欄にはA男と記載されることになります。
すぐに気づかなかった場合は、もっと大きな問題となります。
嫡出否認は、法律上の父とされるものが、子供の出生を知ってから1年以内にしなければなりません(2023年から法改正により、母又は子からも嫡出否認が可能となり、かつ期間が3年となりました)。
そうすると、親子関係不存在確認請求しか手段がありませんが、親子関係不存在確認請求は、客観的、外形的に見て父子関係がないことが明らかである必要があります。
つまり、長い間自分の子だと思っていたケースでは使えません。
そうなると、法律上は、B男が子供の父親であり続けるということになります。
つまり、B男は、子供の養育義務を負い、子供はB男の相続人となるということになります。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。