メールやLINEでの贈与は撤回できるか?
1 贈与契約の基礎知識
あなたが、誰かに「●●あげるよ」と言って、相手が「じゃあ、もらうよ」と答えた場合、贈与契約が成立します(民法549条)。
契約が成立すると守らないといけないのが原則ですが、贈与契約に関しては、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる」と定められており、実際に約束したものを相手に渡すまでは「やっぱりやめた」ということがてきます(民法550条)。
このように書面での贈与契約でなければ撤回できるとした趣旨は、2つあると解釈されています。
一つは、「贈与者に軽率な贈与をさせないようにすること」といわれています。
しかし、撤回できるとはいえ、口頭でも一応贈与契約は成立するのですから、軽率な贈与をさせないというより、「その場のノリで言ってしまったような軽率な贈与まで裁判所は保護しません」というのが正しいのではないかと思います。
もう一つは、「贈与者の意思を明確にして、後日の紛争を避けるため」といわれています。
口頭の贈与を撤回できないとすると、裁判では、言った言わないのみの争いになって困るので、自由に撤回できることにして、未然に裁判になるのを防ごうとするものです。
この「書面」について、裁判例では、贈与契約書という正式なものでなくても、贈与の意思があると解釈できれば良いし、第三者に対して贈与したことを報告する書面を交付した場合でも良いとしたものがあり、かなり幅広く解釈しています。
2 メールやLINEでのやりとりが「書面」による贈与といえるか
上記の通り、「書面」について争われた裁判例は意外と多いのですが、メールなどの電磁的記録に関して争われたものは、公の刊行物にはないようです。
ですが、結論としては、「書面」には当たらず、贈与を撤回できる可能性が高いと思います。
理由としては、
・民法550条は、「書面」とのみ記載し、民法446条のように、電磁的記録は書面とみなす旨の規定がないこと
・メールは、現代においては会話のような気軽なもので、口頭による軽率な贈与は撤回できるとした趣旨からは、「書面」に当たらないと解すべきである
・法務省は、平成16年の民法改正の際に、「書面」には電磁的記録を含まないと整理している(法務省「民法の改正に関する論点」参照)
などが挙げられます。
上記の通り、メールなどは「書面」に当たらない可能性が高いですが、だからといって気軽にメールで贈与の約束をするとトラブルの元ですから、十分に気をつけてください。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。