裁判を起こすこと自体が違法になる場合
「相手に訴えられたけれど、全く身に覚えがない。裁判で勝ったけれど、それだけでは納得いかない」そんな方もいらっしゃると思います。
多くの場合は、たとえ裁判で負けても、負けた側が違法に裁判をしたと言われることはありませんが、悪質な場合には、裁判をすること自体が違法とされることがあります。
このことについて判断したものとして、最高裁判所昭和63年1月26日判決というものがあるので照会します。
【最高裁判所第三小法廷昭和63年1月26日判決】
民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。 けだし、訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである。
*「けだし」は、理由を述べるときに使う接続詞。≒「なぜなら」
【コメント】
上記の通り、全く根拠なく、かつ、訴える側も根拠がないと知っているか容易に知り得た場合のみ、裁判を起こすことが違法となります。
ここで、根拠がないとは、「証拠がない」という意味ではなく、「そんな事実はなかった」という意味です。
ですから、普通は、「自分には権利がある」と思って裁判を起こすので、裁判を起こすこと自体が違法となることはありません。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。