過払金請求の流れ
過払金請求を弁護士に依頼した場合の流れについて説明します。
司法書士に依頼した場合も基本的には同じですが、過払金が140万円を超えた場合、司法書士は本人を代理して裁判をすることができないため、弁護士に相談することをお勧めします。
1 過払金とは?
金融機関からお金を借りる場合の利息について、利息制限法という法律で次のように利率が決められています。
1~10万円 年20%
10万1円~100万円 年18%
100万1円~ 年15%
ところが、利息制限法には罰則が定められていなかったため、ほとんどの消費者金融やクレジットカード会社、一部の銀行が、上記利率を超える金額を設定していました。
しかし、平成18年に最高裁判所が、上記利率を超えて支払った部分については違法に利息を取っていたのだから、元本に充当しなさい、そして、元本がゼロになってもさらに支払っていた場合には、それに5%の利息をつけて返しなさいと判決しました。
例えば、平成10年1月に、消費者金融から100万円を利率28%で借りたとします。
平成10年末に契約上の利息28万円を返したとします。
消費者金融の借入金残高は100万円となっているはずです。
しかし、法律上利率は18%までしか認められていないので、10%、つまり10万円は払いすぎです。
この払いすぎていた分は、元本に組み入れられるので、本当の借入金残高は90万円となります。
平成11年末に、また28万円を払うと、本当の借入金残高は80万円となり(正確には少し違いますが)、毎年利息のみを払っているつもりでも、平成19年末にはゼロ円となります。
そして、平成20年末には、-28万円、つまり、払いすぎとなります。
この払いすぎ分は、支払ってから10年以内なら「返せ、返すときには年5%の利息をつけろ」ということができます。
これが過払金です。
説明のために簡略化しましたが、実際には、借りたり、返したりを繰り返しているでしょうから、具体的な過払金を知るには、過去の取引を調べて計算し直す必要があります。
2 過払金請求の流れ
⑴ 相談
「もしかして、利息払いすぎかな」と思ったら、弁護士に相談することになります。
このとき、契約書や、領収証などがあると違法な利率かどうかの判断ができます。
平成18年より前の契約に基づく取引だと、ほとんどの場合が違法な利率となります。
違法な利率で5~6年くらい取引をしていると、多くの方が過払いになります。
⑵ 契約
違法な利率である場合、正式に契約し、過払金の調査及び回収を行います。
その際、着手金が必要になる事務所があります。
また、過払金を回収した場合には、回収した金額の何パーセントかが成功報酬として支払う必要があります。
弁護士に依頼する際には、着手金と成功報酬について、きちんと説明を受けましょう。
費用については、このページの最後で詳しく説明します。
なお、司法書士の方が安いということはありませんし(とんでもない報酬を取っているところがあるので気をつけてください)、司法書士の場合、140万円を超える過払金を扱うことが出来ないので、弁護士に相談することをお勧めします。
⑶ 取引履歴の開示
正式に契約すると、弁護士から消費者金融に「受任通知」というものを送付します。
「受任通知」とは、借金問題について依頼を受けたので、以降は本人に連絡をしないでください、また、これまでの取引履歴を全て開示してくださいということを書いた書面です。
ほとんどの消費者金融は、「受任通知」の送付から1か月程度で取引履歴を開示してくれますが、まれに、開示を拒否する消費者金融もあります。
その場合は、過払金を推定して請求するなどのことを行います。
なお、20年以上前から取引しているなどの場合、消費者金融も記録を保存していないことがあります。
その場合は、他の証拠から推定をするか、何の証拠もない場合は、あきらめて途中からの計算をせざるを得ない場合があります。
⑷ 再計算
取引履歴の開示を受けると、本来認められている利率で計算し直します。
計算をし直す際の計算ソフトは、「名古屋消費者信用問題研究会」という消費者問題に取り組む弁護士有志が作っているサイトからダウンロードできます。
この再計算は、事務所内で行う法律事務所と外部のデータ入力業者に依頼している事務所があります(なごみ法律事務所では事務所内で再計算しております)。
再計算にかかる時間は、受任件数の多さや事務所の体制にもよるため、事務所ごとにまちまちです。
履歴の開示から1か月経っても再計算が終わらない場合には、問い合わせた方が良いでしょう。
なお、消費者金融によっては再計算をしたかのような書面が開示されることがありますが、消費者金融による再計算書は、過払い利率をゼロにしている場合が多いため、その場合でも念のために再計算をします。
再計算の結果、過払いとならなかった場合には、残額を分割払いとする交渉を行います。
そのような場合、依頼者の方に毎月一定額を積み立てていただくことがあります。
⑸ 請求
再計算が終わり、過払金額が確定すると、消費者金融に対し、過払金を請求します。
消費者金融によっては、履歴の開示後間もなく、和解の提案をしてくるところもあります。
この段階で、過払金全額を支払ってくる業者は少ないため、最初から裁判をする法律事務所もあります。
逆に、減額した金額で早々と和解してしまう法律事務所もあります。
なごみ法律事務所では、依頼者の方のご希望により、減額してでも早く回収したいという方の場合、この段階で和解し、時間がかかっても全額または全額に近い金額の回収を希望される場合には裁判をします。
⑹ 裁判
消費者金融との間で和解ができなかった場合、裁判をすることになります。
裁判を起こしてから、判決までは平均1年程度かかりますが、裁判の途中で過払金全額に近い形で和解をすることもあります。
裁判は、基本的には弁護士のみが裁判所に行きますが、取引の分断(しばらく取引の間が空いている)があるときは、取引の分断の事情を説明するために、尋問に出ていただいたりすることがあります。
⑺ 判決
上記の通り、裁判を起こしてから判決まで1年程度かかります。
これまでの裁判例と比較・検討して、判決内容に不服がある場合には、控訴したり、逆に消費者金融から控訴されることもあります。
なお、単なる時間稼ぎとして控訴する消費者金融もあります。
⑻ 消費者金融からの支払
ほとんどの消費者金融は、判決が出ると速やかに支払ってきます。
しかし、中には支払をしない業者や、判決後にさらに和解を打診してくる業者もあります。
その場合、消費者金融の取引口座を差し押さえたりしますが、そのような悪質な業者は、口座残高ゼロということもあり、回収できないこともあります。
⑼ 精算
消費者金融からの支払は、通常弁護士の口座になされるため、弁護士報酬と実費を差引いた金額を依頼者にお返しします。
精算にかかる時間も法律事務所によりまちまちですが、1週間程度のことが多いのではないかと思います。
また、過払金とともに他の業者に対し残高が残る取引がある場合には、過払金を他の業者の支払に充てることもあります。
3 費用
過払金請求にかかる費用の主なものは、①消費者金融との連絡用の切手代、②裁判を起こす際に必要な収入印紙代と切手代、③弁護士費用になります。
①消費者金融との連絡用の切手代
「受任通知」は、FAXでいいという消費者金融もありますが、郵送を求める消費者金融もあるため、その場合は切手代がかかります。
また、和解で解決する場合は、和解契約書のやりとりのための切手代も必要になります。
②裁判を起こす際に必要な収入印紙代と切手代
収入印紙代は、過払金の金額によって金額が法律で決まっています。
100万円までは、10万円ごとに1000円、100万円を超えると500万円までは、20万円ごとに1000円、500万円から1000万円までは、50万円ごとに2000円となっています。
具体的には、
100万円請求の場合1万円
200万円請求の場合1万5000円
300万円請求の場合2万円
400万円請求の場合2万5000円
500万円請求の場合3万円
となります。
切手代は、裁判所によって異なりますが、東京地方裁判所の場合、1社につき6000円となり、他社も同時に訴える場合は、1社増えるごとに2144円が追加となります。
③弁護士報酬
弁護士報酬は自由化されているため、法律事務所によって異なります。
以前は、着手金2万円、成功報酬は回収した額の20%とするところが多かったように思いますが、現在では、もっと安いところが増えているようです。
ただ、着手金ゼロをうたっているところは、成功報酬で事実上着手金を上乗せするよう料金形態になっているところもあるので注意してください。
なごみ法律事務所の弁護士報酬は、以下のとおりです。
着手金 | 過払い金報酬 | 減額報酬 | |
完済している方 | 0円 | 回収した金額の14%+2万円 | |
債務が残っている方 | 2万円 | 回収した金額の14% | 減額した金額の10% |
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。