合意書を公正証書にする意味と作り方
1 合意書を公正証書にする意味
相手方と和解した場合、証拠として残すために合意書を作るべきですが、公正証書にした方がよいかというご相談があります。
相手からお金を受け取る場合で、分割払いの場合や、後日払いの場合は公正証書を作った方が良いでしょう。
お金の支払がある場合でも、その場で一括払いという場合は公正証書は必要ありません。
なぜなら、公正証書と私的な合意書との決定的な違いは、裁判を経ずに強制執行できるかどうかだからです。
公正証書は、公証人という公的な立場にある人間が両者の意思を確認して作成されるため、その文書に表示される意思に間違いがないと強く推定されます。
その結果、強制執行受諾文言(お金を払わなければ財産を差し押さえてもかまいませんという文言)が入った公正証書があれば、裁判をしなくても、給料や預貯金を差し押さえることができます。
他方、私的な合意書は、その合意書が真意に基づくものか、偽造されたものでないか、などの疑いが生じるため、裁判をしてその文書通りの合意があったという判決をもらって初めて相手の財産の差し押さえができます。
このような違いから、将来、相手の財産の差し押さえが必要になるかもしれないという場合には、公正証書を作っておいた方がよいということになります。
公正証書は、弁護士を通じて予約をして作成をすることもできますが、弁護士に依頼することなく作ることもできます。
2 公正証書の作り方
① 予約する
公正証書を作ることに決めたら、公正証書を作ってもらう公証役場を決めましょう。
公正証書は、どこの公証役場でも作ることができますから、自宅近くでも職場近くでもかまいません。
公証役場の場所は、全国公証役場一覧のページから探すことができます。
公正証書を作る公証役場を決めたら、作る日を予約しましょう。
予約日は、公証人の方との打ち合わせを考えると2週間くらい先の方が良いと思います。
② 打ち合わせ
予約をすると、公証人の方から、どのような書面を作りたいか問い合わせがあります。
そこで、事前に作っておいた合意書があり、その内容で「強制執行受諾文言」を加えたものを作りたいと伝えます。
そうすると、公証人の方から、合意書に基づいて作られた公正証書案が送られてきます。
問題がある場合や不明確な点がある場合には、その点の指摘があるので、どのような趣旨のものを作りたいか伝えて、適宜修正します。
具体的な合意内容のほかに、合意書に登場する人物や不動産などの特定資料(戸籍謄本や免許証、登記簿謄本など)、公正証書作成費用を確定するための資料(固定資産評価証明書など)も、この段階でやりとりします。
これらのやりとりは、メールや電話で行い、公証役場に行く必要はありません。
③ 当日
上記の打ち合わせで合意内容や確認書類に問題がなければ、予約した日に公証役場に行きます。
持ち物は、本人確認書類(免許証など)、印鑑、公正証書作成費用です。
必須ではありませんが、確認のために、事前の打ち合わせの際にもらった公正証書案も持っていったほうがいいでしょう。
また、遺言など、証人の立会が必要な文書もあるので、事前に確認しておきましょう。
事前に打ち合わせをしておけば、基本的には上記で足りるはずですが、公証人の方から持ってくるように指示されたものがあれば持っていってください。
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。