悪意の遺棄による離婚
1 悪意の遺棄とは
民法770条1項2号は、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」は離婚できる旨定めています。
悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに、民法752条に定める「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という義務を行わないことです。
この悪意の遺棄が成立するためには、相手が勝手に出て行ったというだけでは足りず、社会的・倫理的に非難されるような事情が必要です。
具体的には、相手に障害があるなどで一人では生活が困難な状態であるのに、何の手当もせずに家を出たような場合です。
他にも、浮気をして家を出て行ったり、生活費を全く渡さなかったりというような場合は、理論的には悪意の遺棄にあたります。
しかし、このような場合は、不貞行為による離婚(民法770条1項1号)や婚姻を継続し難い重大な事由による離婚(民法770条1項5号)が可能で、悪意の遺棄を主張する法的意味はほとんどありません。
実際に、近年では悪意の遺棄を理由として離婚を認める判決は少なくなっています。
2 悪意の遺棄を主張した方が良い場合
上記の通り、悪意の遺棄にあたるような場合には、他の離婚理由に該当する場合が多いので、悪意の遺棄を主張する意味は少ないように思いますが、悪意の遺棄を主張する意味が2点あるといわれています。
① 再婚禁止期間の短縮
悪意の遺棄を主張するメリットの一つは、再婚禁止期間の短縮です。
女性は、離婚をしてから100日を経過するまで再婚ができません(民法733条)。
しかし、実際の戸籍の運用では、離婚裁判の判決理由の中で、100日を超えて継続して別居していると認定されている場合には、再婚禁止期間内でも婚姻届を受け付けています。
そこで、判決理由に100日を超えて別居していたと書いてもらうために、たとえば直接的な原因が相手の浮気であっても、浮気だけでなく悪意の遺棄を主張することがあります。
② 外国人との離婚裁判を日本でしたい場合
もう一つのメリットは、外国人と離婚する場合に、裁判管轄が日本にあるかどうかの判断材料になる点です。
この点に関しては、申し訳ありませんが、私は外国人との離婚問題に詳しくないため省略させていただきます。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。