セックスレスを理由とする離婚
セックスレスや性交渉の不能を理由に離婚が認められるでしょうか?
この点、最高裁判所は、性交渉も婚姻生活における重要な構成要素であるとしています。
もっとも、性交渉がなければ、即離婚となるわけではなく、病気や老齢、性関係を重視しない当事者間の合意があるなど、セックスレスが愛情の喪失とはいえないような事情がある場合には、離婚は認められません。
病気を原因とするセックスレスは、即離婚とはならないと書きましたが、それは、結婚後に病気になりセックスレスとなった場合であって、結婚前から性交渉が不能であったのに、これを隠して結婚したような場合には離婚理由となります。
理論上は上記のとおりですが、実際の離婚裁判では、セックスレスを理由とする離婚は極めて困難です。
なぜなら、セックスレスだと主張しても、相手から、「いえ、性交渉はありました」と主張されると、セックスレスを証明することが難しいからです。
ですから、もしセックスレスでの離婚を主張するなら、弁護士が介入する前、できれば離婚の話をする前に、性交渉がないことが不満だとか、セックスレスについて話し合いたいなどと相手に話題を振って、相手が警戒する前にセックスレスであることを認めさせるようにしましょう。
その場合の相手とのやり取りは、録音して証拠として残してもかまいませんが、できればメールやLINEでやり取りをしておくと証拠化するのが楽になります。
【裁判例】
〈福岡高等裁判所平成5年3月18日判決〉
夫がアダルトビデオなどを見ながら自慰行為はするのに、妻との性交渉を拒否した事案で離婚を認めた。
〈岡山地方裁判所津山支部平成3年3月29日判決〉
結婚当初から妻が性交渉を嫌がり、離婚するまでの1年間1度も性交渉がなく、協議離婚をしたあと、夫から妻へ損害賠償請求をした事案について、婚姻関係の破綻原因は妻にあるとして慰謝料150万円を認めた。
〈最高裁判所昭和37年2月6日判決〉
夫は、妻と交際期間中に病気により睾丸を切除した。妻は、医師が生殖能力はないが性交渉は可能と述べていたのを信じ結婚したが、結婚後1年半の間1度も性交渉ができなかったという事案で、妻からの離婚請求を認めた。
【関連コラム】
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。