弁護士費用や探偵費用を請求できるか?
1 損害賠償として請求できる範囲
離婚の際によく問題になるのは弁護士費用や探偵費用を損害賠償として請求できるかどうかです。
これらの費用が認められるかどうかは、それらの費用発生が相手の行為と相当因果関係にあるかで判断されます(民法416条類推適用)。
相当因果関係とは、社会生活上の経験に照らして、相手の行為から、その結果が発生するのが相当だとえいる関係をいいます。
要するに、「そういう費用がかかることは、普通は予想できるでしょ」といえれば損害賠償として認められます。
では、弁護士費用と探偵費用について、もう少し詳しく説明します。
2 弁護士費用を請求できるか?
弁護士費用については、不法行為に基づく損害賠償(離婚慰謝料や不貞慰謝料)については、相当因果関係の範囲として認められます。
違法な行為によって損害を受けたときに、弁護士を雇って損害賠償請求をすることは普通は予測できるでしょ、という訳です。
これに対し、不法行為以外の請求(財産分与や養育費など)では弁護士費用の請求は認められません。
なぜなら、不法行為と異なり、自分の意思で相手と接触してトラブルになったんでしょ、そんなときに弁護士を雇うのは必ずしも普通とはいえませんよ、というわけです。
では、弁護士費用が認められる場合、全額が損害として認められるかというと、そうではありません。
裁判では、本体である損害賠償額(慰謝料額)の1割とされるのが通例となっています。
なぜ1割かは分かりません。
よほど高額な損害賠償が認められない限り、かつて日本弁護士連合会が公表していた報酬基準よりも低い金額となってしまいますが、裁判所は1割しか認めてくれません。
弁護士の方も、最初からあきらめて、1割しか請求しないのが慣習になっています。
3 探偵費用について
相手の浮気(不貞行為)が疑われる場合、探偵(興信所)を雇うことも多いですが、この探偵費用について、裁判例は、損害として認められたもの、認められないとしたもの、慰謝料算定の事情として考慮するものがあります。
探偵費用を損害として認めている裁判例では、認められるかどうかの基準は、「不貞行為を証明するために探偵を雇うのがやむを得なかったといえるか」どうかだとしています(東京地方裁判所平成22年7月28日判決、東京地方裁判所平成20年12月26日判決)。
また、探偵費用が損害として認められる場合でも、必ずしも全額認められるわけではなく、不貞行為を証明するのに相当と認められる範囲に限られます。
上記裁判例では、一方は全額、もう一方は費用の8割について損害として認めています。
これらと異なり、探偵費用そのものを認めるのではなく、慰謝料を算定する際の一つの要素として考慮するとしているのが、東京地方裁判所平成21年3月25日判決です。
なお、変わった裁判例として、夫から浮気した妻に対する損害賠償請求の事案で、「原告が不信を抱いてから被告らの尾行調査を探偵社に依頼するのみで、何ら婚姻関係の維持回復に努力をしていない」として、探偵を雇ったことを慰謝料減額理由としたとも思える裁判例があります(東京地方裁判所平成22年10月1日判決)。
ただ、この事案は、夫に暴力があった事案ですから、裁判官が、一応妻に不貞があるため損害賠償を認めざるを得ないけれど、それを減額したいためにひねり出した理由と思われます。
一般的には探偵を雇ったからといって、慰謝料額が減額されることはないでしょう。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。