離婚と破産の関係
1 支払をする側の破産
⑴ 財産分与について
多くの場合は、破産申立をしなければならないほど経済状態が悪化していれば、財産分与もないと思います。
しかし、離婚後に急激に経済状態が悪化したような場合は、破産申立段階で未払となっている財産分与請求権があるかもしれません。
そのような場合、未払財産分与請求権は、破産手続が行われている裁判所に届け出て、他の借金などの負債と同様に配当を受けることになります。
配当が財産分与請求権全額に満たない場合でも、破産裁判所が免責許可決定を出すと、未払分は請求できなくなります。
例外的に、名目上「財産分与」となっているけれども、実質的には慰謝料や扶養の趣旨である場合は、その部分については慰謝料や扶養の取扱いと同じになります。
⑵ 慰謝料について
未払の慰謝料がある場合も、破産裁判所に未払慰謝料がある旨を届け出て、他の借金などの債権と同等の立場で配当を受けることになります。
そして、原則として破産裁判所が免責許可決定を出すと、未払分があっても請求できなくなります。
ただし、慰謝料の内容が、
①破産者が悪意(積極的に相手に損害を与える意思)で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)である場合
②破産者が、請求者に対し、故意または重大な過失によって生命・身体を害するような行為をしたことによるものである場合(破産法253条1項3号)
には、免責許可決定によっても、未払分の請求権は失われません。
なお、不貞行為を原因とする離婚慰謝料が上記の①に該当するのか争われることがありますが、通常は、不貞行為は配偶者に損害を与えようとして行われることはないので、①に該当しないとされます。
⑶ 養育費について
養育費は子供の生活費ですから、離婚時に取り決めは行いますが、具体的な権利は日々発生するものです。
ですから、破産開始決定後に発生する養育費については、破産手続による影響はありません。
破産開始決定前に既に発生していた養育費の未払分については、破産裁判所に養育費の未払があることを届け出て、他の借金などの負債と同様に破産手続の中で配当を受けます。
ただし、養育費の未払分については、他の債権と異なり、破産裁判所が免責許可決定を出しても請求権がなくなることはなく、請求し続けることができます。
2 請求する側の破産
⑴ 財産分与について
既に財産分与について請求している場合は、破産管財人が請求権を引き継ぎ、回収のうえ各債権者に配当します(破産法34条3項2号)。
離婚はしたので抽象的には財産分与請求権があるけれど、財産分与を請求していない場合の取扱いについては明確な定めがないため、裁判所が破産管財人に回収を命じるかどうかは、各裁判官によって判断が変わる可能性があります。
⑵ 慰謝料について
慰謝料については、既に合意や判決などで金額が確定している場合は、破産管財人が回収し、各債権者に配当します(破産法34条3項2号ただし書き)。
慰謝料について、金額が確定していない場合には、破産手続の中では取り扱われません(破産法34条3項2号)。
これは、慰謝料が、被害者の精神的苦痛に対する補償なので、被害者のみが請求でき、他の者が請求することはできないと考えられているからです。
⑶ 養育費について
養育費については、上記1⑶でも説明したとおり、日々発生するものですから、破産開始決定後に発生した分については、破産手続の中で処理されることはなく、別途請求が可能です。
破産開始決定前に発生済みの未払養育費については、現在のところ明確な取扱いの定めはないため、破産を担当する裁判官によって取扱いが異なる可能性があります。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。