離婚と相手の死亡(慰謝料・財産分与・養育費)
とりあえず離婚届けを出したけれど、慰謝料や財産分与、養育費について取り決めをする前に相手が死亡した場合、これらについてはどのように処理されるのでしょうか?
なお、離婚交渉中に相手が亡くなった場合は、単に夫婦の一方が死亡しただけですから、夫(妻)として相続等が生じます。
1 支払をする側の死亡
⑴ 慰謝料について
慰謝料の支払義務は相続人に相続されるため、相続人に対して慰謝料を請求することになります。
⑵ 財産分与について
財産分与義務についても相続人に相続されるので、相続人に対し財産分与を請求することになります。
⑶ 養育費について
養育費は、その子供の親という身分に基づいて支払う義務を負うものですから、養育費支払義務を相続することはなく、支払義務者が死亡した場合は、それ以降は請求できません。
ただし、死亡時点で未払分がある場合には、その分は単なる金銭債務になっているので、相続人が相続することになるため、相続人に請求することが可能です。
もっとも、養育費の支払義務者が死亡すると、原則として相続人は子供になるため、養育費の相続が問題になることは、ほとんどないでしょう。
「では、何か対策ができないか?」となりますが、ひとつの方法としては、相手に子供を受取人とする生命保険に入ってもらうということが考えられます。
ただし、契約者は相手ですから、離婚成立後に解約したり、受取人を変えたりされる可能性は残ります。
もう一つ考えられるのは、遺族年金を請求するという方法です。
ただし、相手の生前、相手に扶養されていたことが必要ですから、継続的に養育費を受け取ることなどが必要となります。
なお、養育費の支払いについて保証人をつけても、この問題は解決しません。
なぜなら、保証債務は、主債務の存在を前提にしているところ、相手の相手の死亡により養育費支払い義務(主債務)が消滅した以上、保証債務だけが残るということはないからです(保証債務の附従性)。
2 請求する側の死亡
⑴ 慰謝料について
慰謝料請求権は相続されるため、相続人が相手に請求することが可能です。
⑵ 財産分与について
財産分与請求権についても相続されるため、相続人が相手に請求することが可能です。
⑶ 養育費について
養育費は、子供の生活費ですから、相続人ではなく、子供を実際に引き取って育てている方が、相手に請求することができます。
また、子供自身が扶養請求をすることも可能です。
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監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。