不貞慰謝料請求後の離婚慰謝料請求
相手が不貞行為(浮気)をしたので慰謝料を請求したいけれど、離婚については、まだ決心がついてない場合、離婚をせずに慰謝料請求をすることができます(不貞慰謝料請求)。
では、その慰謝料をもらった後、やっぱり離婚しようと考えた場合、不貞慰謝料とは別に離婚慰謝料を請求できるのでしょうか?
この点につて判断した裁判例は少ないですが、広島高等裁判所平成19年4月17日判決というものがあります。
この裁判は、浮気した夫および夫の浮気相手に対し、過去に不貞慰謝料を請求したことがある妻が、離婚に際し、もう一度夫および浮気相手に対し、離婚慰謝料を請求した事案です。
裁判所は、まず、不貞慰謝料は、相手に浮気されたことによる精神的苦痛で、離婚慰謝料は、離婚しなければならないことによる精神的苦痛だから、違うものであるとしました。
しかし、不貞慰謝料請求のときに、既に夫婦関係が破綻しており、不貞慰謝料請求の際にもそのことが考慮されたという場合は、不貞慰謝料請求時点で実質的には離婚状態であり、かつ、その賠償を受けており、離婚届けを出すのは形式的な手続に過ぎないから、離婚届を出すという形式的行為によって、新たな損害は発生しないとしました。
そして、結論として、今回の場合は、前回の不貞慰謝料請求時点で婚姻関係が破綻していると認定され、そのことを前提に不貞慰謝料額が算定されているのであるから、離婚慰謝料は発生しないと判断しました。
結局、ケースバイケースということになりますが、具体的に前回の不貞慰謝料請求の内容にまで踏み込んで、離婚慰謝料まで含まれた判決になっているという場合には請求できないけれど、前回は純粋に不貞慰謝料のみの判決だったといえる場合には、別途離婚慰謝料が請求できるということになります。
ただ、東京家裁に不貞慰謝料訴訟を請求し、離婚していないが実質的には婚姻関係が破綻したと主張したケースで、裁判官から、「でも離婚していないんでしょ」と言われたことがありますので、基本的には不貞慰謝料請求は不貞そのものについてのみの判断であると認定され、別途離婚慰謝料を請求できるケースが多いのではないかと思います。
なお、不貞後に何年も同居した後に離婚するような場合には、そもそも不貞行為が離婚理由といえるのかという点で争いになる可能性があります。
【関連コラム】
監修弁護士紹介
弁護士 本 田 幸 則(登録番号36255)
・2005年 旧司法試験合格
・2007年 弁護士登録
弁護士になってすぐのころは、所属事務所にて、一般的な民事事件はもちろん、行政訴訟や刑事事件、企業法務まで担当しました。
独立後は、身近な問題を取り扱いたいと思い、離婚や相続などに注力しています。
ご相談においては、長期的な視野から依頼者にとって何がベストなのかを考え、交渉から裁判まであらゆる手段を視野に入れてアドバイスいたします。
弁護士 鈴 木 淳(登録番号47284)
・2006年 早稲田大学法学部卒業
・2006年 法務省入省(国家Ⅰ種法律職)
・2011年 明治大学法科大学院修了
・2011年 新司法試験合格
・2012年 弁護士登録
一般民事事件や中小企業法務を中心として、交渉から裁判まで、様々な分野の案件を担当してきました。
この度、なごみ法律事務所の理念に共感し、市民の方の生活に密着した問題や、経営者の日常的に接する問題を重点的に扱いたいと考え、執務することとなりました。
ご依頼者と同じ目線に立ちながら、最善の解決策を共に考えてゆきたいと思います。